zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 チビ、いなくなる
(まーた、朝っぱらから……、ダウドの野郎、もうちゃっかり来てやがる……)
「ええ、……暫く皆に会えなくて、私も淋しくなっちゃうけど……、
又きっと戻って来るから……」
「いっといでよ、アイシャ……、この馬鹿はちゃんと教育して
おくからさ……」
「……何の教育だよっ!たくっ!!」
「うふふ、ファラってば、相変わらず姉御さんねえ……」
「きゅぴ、アイシャ……」
「……チビちゃん……」
お互いに、複雑そうな表情で……アイシャとチビが見つめ合うが、
すぐにチビは笑顔を取戻し、アイシャに向けて微笑んだ。
「行ってらっしゃい、チビ、ちゃんといい子で待ってるよお!」
「有難う……、本当に大人になったね、チビちゃん……、
絶対戻ってくるわ、……少しの間のさよならね……」
「きゅっぴ!」
尻尾を振ってチビがアイシャにスリスリし、アイシャも愛おしそうに
チビを抱きしめた。
「大好きよ、……チビちゃん、ずっと……」
「……りゅ~、この際だからリトルもお前らにいっておきたい事が
ありゅ……」
突然、ぬっと小悪魔が現れる……。
「あんだよ、暫く出番なかったな、……影薄くなってるぞ、
何処行ってたんだ?」
「うるせーりゅ!バカ猿!……リトルもそろそろ、又、奴を探しに
そろそろ動くりゅ……」
「……きゅぴ……」
「!!りゅっ」
また泣かれて飛びつかれるのかと思いきや……、チビは小悪魔にも
笑顔を見せた。
「リトルも行ってらっしゃい……、お友達、見つかるといいね、
頑張ってね……」
「バカドラゴン……、フン、安易に言うんじゃねえりゅ……、
……」
「でも……、もう下の世界には……、行けないんだよね……」
ダウドが聞くと、小悪魔はダウドの方を見た。
「とりあえず、なら上の世界を徹底的に探してみりゅ、何百年
掛かろうと……、リトルとお前らとは果てしなく寿命が違うりゅからね、
その内、下の世界にも又いけりゅ様になるだろりゅ……、……そう
信じたいりゅ……」
人間は短命だ……、必ずお前より先に別れの時が訪れるのだ……
「……ぴ、ぴきゅ……」
「チビ、どうかしたか?」
「な、何でもないよお……」
「あのさ、一つだけ……、聞きてんだけど……」
ジャミルも小悪魔の大きい顔をじっと見つめた。
「……なんりゅ?」
「お前、……海竜の洞窟で何であんなに海竜にもムキになって
突っかかってったんだ?少なくとも、海竜はお前のダチの
生まれ変わりじゃねえって事ぐらい、分かってたんだろ……?」
「俺より強い奴に……、会いに行く……、りゅ……」
「……はあ?」
「いーんだりゅっ!もう終わった事りゅっ!」
小悪魔はムキになり、話をはぐらかそうとする。
「……んー、何か納得いかねえ……」
「じゃあ、今夜はアイシャとリトルのお別れパーティしようか!
あたい、御馳走沢山作るよっ!」
「……有難う、ファラ……、何だか照れ臭いわ……」
「フン、余計なお世話……、りゅりゅりゅ!!」
「もー、あんたって本当に意地っ張り!素直になんなさいよね!!
……こうしてみると……、意外と顔でかいね……」
「余計なお世話っていってりゅ!……だから、化粧くせーんだりゅ!!」
「この騒がしいのも……、あともう少しか……」
何となく……、複雑な思いでジャミルが小悪魔にじゃれる
ファラの姿を見つめた。
「そうだねえ……、でも、大丈夫だよお……」
「ん?」
「本家騒動屋のジャミルがいるんだから……」
「そうだな……、って、どう言う意味だコラ!」
「あははっ!さーて、オイラも一旦家に帰ろうーっと!
チビちゃん、又夕方ねーっ!」
ダウドは一目散で逃げて行った。
「たく……、ほら、チビももう支度しろよ、皆が迎えに来るぞ」
「うん、おやついっぱい持っていこうーっと!!♪きゅぴきゅぴ~!」
……皆の前で悲しい顔を見せない様、チビは明るく、懸命に振舞う。
しかし、その夜……、小悪魔はお別れパーティには参加せず、
皆への書置きを残して一足先に旅立ってしまったのだった……。
……バカ猿、今はいないけど、バカ金髪、バカ団子、バカヘタレ、
バカ厚化粧、そして……、バカドラゴンへ……、おめーらは皆揃って
お人好しのバカ集団りゅ、揃ってバカ過ぎて、リトルはもう何も
言えんりゅ、だから、もうリトルは行くりゅ、……今だから言うけど、
結構……、おめーらといた毎日も……、そんなに悪くなかった……、と、
今は少しだけ思ってやりゅ、……本当に少しだけ、ハナクソ程度りゅよ
……、もしもまたどっかで会ったら悪戯してやりゅから、覚悟しとけよ、
けーっけっけっ、……んじゃ、今度こそ……、あばよ、りゅ……、
……偉大なる魔界のプリンス、
リトル様より……
チビ、いなくなる……
そして、その夜……、チビは再び夢の中で何者かの声に導かれる……。
……小さき者よ……
「……また……、チビを呼ぶの……?本当に誰なの……?」
我は神竜……、遠き天空の地より……、下界を見守りし者……
「きゅぴ?……神様の……、ドラゴン……?」
お前の答えは……、まだ出ない様だな……
「……チビ、ジャミル達と……、ずっと……、一緒にいたい、
それだけだよお……」
だが……、このままでは……、お前を大切に思い、守ってくれている
人間達にも……いずれ不幸が訪れる事になるぞ……、無論、お前自身
にも……、だ……
「ぴっ!……皆が?チビの所為で……、……不幸になるの……?」
……そうだ……、特にお前は普通のドラゴンとは
格が違い過ぎるのだ……、それはお前自身も理解しておろう……
「ぴきゅ……、でも……、正直、チビは自分の力とか、
まだ良く分かんないよお……」
お前の力を悪用しようとする心無い悪人達は幾らでもいる……、
その為に、いつもお前を助けてくれ、守ってくれる人間達は常に
傷つく事になり兼ねないのだ……
「やだ……、嫌だよお……、チビの為に大好きな……皆がまた……、
傷つくの嫌だよ、怖いよお……」
……ならば考えを改めよ……、お前が本当に人間達の幸せを
望むのならば……、今の全てを捨てよ……
「きゅぴ……」
お前の本当の故郷、……竜の女王の城まで来るが良い……、聖なる力を
引継ぎし者よ……、我は待っておるぞ……
「……神竜……、さん……」
翌朝……。
「チービーちゃん、あーそぼっ!」
今朝も、町の子供達が揃ってチビを迎えに来るが……。
「ごめんねえ、チビちゃん、何だか今日は疲れちゃってる
みたいなの、……風邪ひいたのかも知れないからさ……、
お休みさせてあげて……?」
「そうなんだあ、ざんねんだね……」
「ファラおねえちゃん、明日はチビちゃん……、元気になる?遊べる?」
「うん、大丈夫だと思うよ……」
「わかった……、じゃあ又あしたねー!」
「バイバーイ!」
「あはは、又ね……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 チビ、いなくなる 作家名:流れ者