zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 チビ、いなくなる
「あ、ジャミル……、皆……、えへへ、お騒がせして、
ごめんなさい……」
腰を摩りながらアイシャがジャミル達の方を見た……。
「話はこっちでしようや、とにかく、お前もリビングへ来いよ……」
「うん……」
ジャミルはアイシャをリビングへ連れて行き、彼女が墜落して来た
事情を聴いた……。
「えーと……、ね、あの後……、村に戻ろうとしたのはいいけど……、
やっぱりチビちゃんと、きちんとお別れ出来てなかったし……、私も
このままじゃ心残りで……、気になって途中で引き返して来ちゃったの……」
「……んで、ルーラを使ってみて……、又失敗した訳か……」
「うん……、で、でも……、ちゃんとアリアハンには
来れた訳だし……、ね?」
上目づかいで申し訳なさそうに、時折アイシャが皆の顔を覗う。
「けど、……見事に家の屋根にでかい穴あけてくれたね……、
どうすんのさ、あれ……」
「ファラ……、ふぇぇ……、ごめんなさい……、私……、
どうしよう……」
一度、ジパングで弥生の家の屋根を破壊した事のある前科犯の
ジャミルとダウドは何も言えず、隅の方で小さくなり、二人して
困って黙っていた……。
「はあ、いいよいいよ、近所のおっちゃん達に手伝って貰って
直すからさ、それよりも……」
「うん、これで全員集合だね……、取りあえず、良かったかも
知れない……」
「え?アル……?どういう事……?何か又有ったの……?それに、
チビちゃんは……?」
「……その、チビなんだけどな……」
「えっ……」
ジャミルはアイシャに向かって事件の起こりを話し始めるのだった……。
新たな場所へ
「うそうそうそ……、チビちゃんが……、黙っていなくなっちゃうなんて……、
そんなの嘘よ……、チビちゃん……、ごめんね……、淋しかったのね……」
アイシャは悲しみと衝撃でどうにもならず……、自身のスカートの裾を
ぎゅっと掴んだ……。
「……此処で項垂れててもどうにもなんねえ、……行こう、もう一度
女王の城に……、もしも城にチビがいなかったとしても……、世界中
巡って見つけてみせるさ……、必ず……」
「ジャミル……、うん、行こう……!」
「そうだよお!」
「アル、ダウド……、よしっ!」
「わ、私も行くわよっ!もちろん!!帰るのなんかいつだって
いいんだから!!」
「決まりだな!!丁度ラーミアもアルが又連れて来てくれた事だしな!!」
「……はあ、本当にあんたら落ち着かないんだから……、
ま、仕方ないか……、必ずチビちゃんを探して、又此処に
連れて来てね、……お願いね!!」
ファラはジャミル達の方を見て、またチビを絶対に連れ戻して
くれる事を4人に強く願う……。
「任せとけ!ファラ、……本当に、いつもいつも悪いな……」
「ううん、……チビちゃんが帰ってきたら、町の皆も呼んでさ、
又どんちゃん騒ぎやろうよ!ねっ!!だから……、あたい信じて
待ってるよ、いつまでも……」
「……ジャミルちゃーんっ!!」
「あ……?お、おばさん……」
又……、近所の騒がしいおばさんがドタドタと家に駆け込んで来る……。
「……悪いねえ、ちょっと皆に喋っちゃったんだよ……、そしたらさ……」
「おいおい……」
チビが行方不明になったと言う話は瞬く間に町中に広まり、
チビを心配した町中の民が……ジャミルの家に押し掛けて
来たのであった……。
「……絶対チビちゃんを探してきておくれね、あたしゃ
もう心配だよ……、もうあの子は、子も孫も同然なんだよ……、
いないなんて耐えられないよ……」
「今度も一緒に野菜の収穫を手伝って欲しいんだよ……、頼むよ……」
「チビちゃんは皆の天使だよ……、本当に早く探して来てあげておくれ……」
「また、チビちゃんとあそびたいよー!!」
チビの無事を願い、必死に訴える皆の姿を見て、4人は心から
嬉しくなるのであった……。
「皆……、有難う……、チビは本当にこんなに皆に愛されてんだな……、
なのに……、チビの奴め、こんなに心配掛けやがって、……見つけたら
少し叱ってやんねーと……」
決意新たに、ジャミルの言葉に仲間達も強く頷いた。
「よしっ、……行くぞ!!」
ファラとアリアハンの皆に見送られながら、4人は新たな冒険へと
出発するのであった。
……そして、ラーミアの力を借り、再び竜の女王の城へ向かう……。
「はあ、……やっぱり完全にもう廃墟だな……、誰もいねえや……」
「まだ、僕らの知らない場所が有るかも知れない、調べてみよう……」
「……チビ……、ちゃん……?」
「アイシャ、どうかしたか?」
「チビちゃんが……、今、歩いてたのよ!」
「な、何っ!?」
「……チビちゃん!!」
「おいっ、アイシャ、待てよっ!!」
アイシャは急に、城内の北の方角を目指して走って行ってしまい、
その後をジャミル達も慌てて追った。
「……此処だわ……」
「何だよ、行き止まりじゃねえか……」
辿り着いた場所は、行き止まりの場所、しかし、……不思議な光が
其処から溢れている……。
「……チビちゃんだあ!」
「ええっ!?」
ダウドの声に正面を見ると……、光の中に入って行くチビの
後ろ姿が一瞬映し出され、そして消えた……。
「チビは……、この先に入って行ったのかな……?」
「やっぱり、チビが城に来たのは間違い無かったんだな……」
「う、ううう~……、何か嫌だなあ~……」
光を見つめ……、ダウドがごくっと生唾を飲み込む……。
「よしっ、俺らも行こう!!」
「あうーっ!ちょ、ちょっと待って!!」
「うわ、何だよ!!」
ダウドがジャミルの身体に急にしがみ付く。どうやらヘタレ病、
久々に再発の様である。
「何かあると行けないから……、準備運動……、ね?」
「……」
「お前、此処でずっと体操してていいぞ、何なら帰ってもいいよ……」
ジャミルが呆れながらダウドの方を見る……。
「うそうそ、行くよ、行くよお~!……チビちゃんの為だもんね……」
ダウドも漸く決意を固め、4人は改めて光の空間を見つめた。
「絶対にチビを連れて帰ろう……、例え、この先に何が
待ち構えていようとも……」
「行きましょっ!」
ジャミル達は覚悟を決め、光の中にダイブした……。
「……?此処って……」
「確か、ネクロゴンドの……洞窟……、だよね……?」
アルベルトが確認の為、辺りを見回す……。
「どう見てもそうよ……、けど、どうしてかしら……?」
「こ、此処を抜けたら……、又バラモス城付近へ出ちゃうんじゃないの!?
……あああっ!」
「ダウド、落ち着けって、取りあえず……」
……ズシン、ズシン、ズシン……
「地響き……?うわっ!!」
「モンスターだっ!!」
ジャミル達が後ろを振り向くと、何処かで見た事のある、
モンスターの群れが固まっていた……。
「ジャミル、どうする……!?」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 チビ、いなくなる 作家名:流れ者