zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 vs神竜
「ジャミル……、大丈夫!?しっかりして!ほら、祈りの指輪と
オレンジジュースよ!!」
まるで顔が汚れて力が出ない状態のジャミル。、アイシャが必死で
どうか指輪が壊れない様に祈りながら、MPを回復させ、献血後の如く、
ジュースをジャミルに飲ませる……。
「ふにゃ~……、やっぱ連発きついわ~……、これでも真面に
倒せねーんだからな……、神竜戦なんかどうなるんだよ……、
はあ……」
「でも……、頑張らなくちゃ……、チビの為にも、僕らは……」
「……チビ、そうだ……、チビ……、うっ……」
疲れて荒呼吸していたジャミルが立ち上がった……。
「行こう、こんなとこでモタモタしてらんねえ……、早く家出アホ
ドラゴンを捕まえにいかねえとな……」
「……ジャミル、大丈夫なの……?」
「ああ……」
アイシャの言葉に頷き、ジャミルが立ち上がり、再び先頭を歩き出す……。
が、その後も……、数歩歩いて、凶悪モンスターが出現する為……、
最悪の状況と化し、その都度、4人は危機に扮する……。
「んだよ!このエンカウントの高さはよっ!動けねーじゃねーかっ!!」
「あああー!やっぱり……、無理だよおお~、うう~……」
「でも……、新・〇太〇伝説よりはマシだと思うんだ……、
あれは酷かったよ……、一歩動く事に……、ブツブツ……」
急にしゃがみ込み、膝を顔に埋め、何かが乗り移った様にアルベルトが
モソモソと喋りはじめた。
「ジャミル、アルが何だかおかしいわ!!」
「……疲れて壊れたかな……、おい、アル!!」
「ん?な、何……?」
「はあ……」
上手く突破口を開けないまま、4人が疲れて座っていると……。
「……?誰か歩いてくるよ!!」
「はあ?俺達以外に……?こんなとこへ……?誰が……!?」
「……あー、まずい、まずいなあ、このコーヒー……」
此方へ歩いて来たのは……、丈が足元まである、やたらと
長いコートを羽織った変なおっさんだった……。
「おい、あんた!一般人がこんな所で何してんだよ!危ねえな!!」
ジャミルがおっさんに声を掛けると、おっさんはきょとんとした顔で
ジャミル達を見た。
「おじさんはコーヒーが大好きでね、美味しいコーヒーが飲みたくて、
神竜の所まで行ってコーヒーを貰って来たんだよ」
「……はあああ!?」
訳が解らない展開に……、4人は揃って声を張り上げる……。
「だけどね、折角、神竜にコーヒーを貰ったのに……、これが
とてつもなくまずかったんだよ……、とほほ~、神竜に頼んでも
駄目なんて……、究極の美味しいコーヒーは一体何処にあるんだろう……」
「……」
おっさんはとぼとぼと、ジャミル達の横を通り過ぎようとする……。
「おい、あんた……、ちょっと突っ込みたい事がありありなんだけどよ……」
「何だい?」
「どうやって、神竜のとこまで行ったんだよ……、第一……、
戦わないと願いを叶えてくんねんじゃねえの……?道中のモンスター
とか、平気だったのか?」
「別に?おじさんは大丈夫だったよ、神竜さんもすぐにコーヒーをくれたよ、
……でも、美味しくなかったよ、残念だよ……」
「……」
他にも突っ込みたい事が山程だったのだが……、ジャミル達はそれ以上
何も言えず……、おっさんの後ろ姿をただ黙って見送った……。
「要するに……、神竜は僕らだけを徹底的に排除したいんだね……、
そう思う事にしよう……」
「何だか納得いかないわ……」
「何か腹立ってきた……、よーし、神竜の野郎……、そっちが
その気なら……、こっちも徹底的にやってやらあ、……ふざけやがって、
んなろ……」
疲れ気味のジャミルに、再び闘志が燃えてきた様であった……。
チビ、今度はツッパリになる……
4人は何とか強敵の目を掻い潜り、等々、塔の4階まで来たが……。
「あーっ!もうやだやだやだーっ!!これで神竜に負けたら俺ら
もうお終いだーっ!!」
疲れてもう嫌になってしまったのか、ジャミルが子供の様に
駄々を捏ねる。
「……ジャミル、静かにしなよ、折角此処まで来たんだから、
もう少しじゃないか……」
「何も戦わなくたっていいじゃない、……何とか神竜さんと
話し合いをして……、チビちゃんだけでも返して貰えれば……、ね?」
「チビを返して貰うのに、戦わなきゃならなかったらどうすんだよ、
相手は神竜だぞ、そんな話し合いに応じる奴じゃねえだろ……」
「でも、それは……」
「アイシャもジャミルも落ちつこ?ほら、宝箱があったよお」
ダウドが宝箱を見つけて持って来る。
「宝箱だと……?」
「何かしら!」
「何だろう……?」
少しでも気分を変えようと、4人は宝箱を覗く。
「……何だこら?て、鉄球……?」
「武器だね、凄いね……、これは物凄く攻撃力が高そうだね……」
「よし、アル!これはお前が装備しろ!」
「はあ?な、何で僕が……、こんな重いの僕には無理だよ!」
「いーや、誤魔化すな!これはお前用だ、しらばっくれても
駄目だぞ!俺にはわかんだよ!話の都合とはいえ、いい加減もう
草薙の剣じゃしんどいだろ!早く装備し……、プ、ププ……、
ぎゃはははは!」
……何か想像したのか、ジャミルがゲラゲラ笑いだす。
「ジャミル……、何考えてんの……?んー?僕と鉄球魔人
重ね合わせて変な想像しただろ……?それに、僕は出来れば
やっぱり、武器より魔法中心で戦いたいから……、お構いなく……」
アルベルトがジャミルの頭を拳でぐりぐりする……。
「いてて!いてててて!やめろこの、シスコンっ!腹黒っ!!」
「……こんな所でっ、二人ともやめなさいっ!!」
「そ、そうだ、アイシャ……、君が使えばいいよ、ジャミルと
喧嘩した時にでも……」
皺寄せがアイシャにも回ってくる……。
「ひ、ひっどーい!……アルったら!!私をそんな目で見てたのっ!?
私を女子プロレスラーか何かと勘違いしてない!?あんまりだわっ!
きーーっ!!」
「い、いや、その……、あの……」
「その通りだろ……」
「何ですってえーっ!……ジャミルっ、もう一回言ってみなさいよっ!!」
喧嘩にアイシャも乱入し、ダウドはレフリーと化し、辺りは大騒ぎになる……。
結局、この破壊の鉄球は武器の中でもほぼ最強の部類に入るのだが、
……喧嘩の火種になった為、4人はそのまま破壊の鉄球を放置し、
先へと進んだ。
そして、……ついにジャミル達は神竜とチビのいる最上階へ……。
「……いよいよ侵入者が来たか……、やれやれ、我が排除するのか……」
「きゅぴ……?」
「……神竜っ!!出て来い、コラ!!ウチのチビを返して貰うかんな!!」
「きゅ、きゅぴっ……!ジャミル、……皆……!!」
「チビ……」
最上階まで現れた相手を見てチビは仰天するが……。
「……だ、駄目っ!!」
いつもの様に……、皆にすぐ、飛びつきたいのを堪え、……チビは
態度を一身させる。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 vs神竜 作家名:流れ者