zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 vs神竜
「あ、あんた達、誰っ!?チビはあんた達なんか知らないっ!!
……違う、もう、チビはチビじゃないんだ、……我は聖竜なりっ!
此処から立ち去れよ、人間共っ!!」
「チビ……、どうしたんだい……?迎えに来たんだよ、皆で……、
帰ろう、一緒に……」
「チビちゃあーん、本当にどうしたのさあ……、此処まで来るの
本当に大変だったんだよお、でも、……チビちゃんに会いたいから……、
それでも頑張って……、オイラ達、やっと此処まで辿り着いたんだ
よおお……」
チビは、ボロボロで傷だらけの4人の姿をじっと見つめ、
目を潤ませる……。
「チビちゃん、……淋しい思いさせちゃって、本当にごめんね……、
ちゃんと話し合いましょ……?私、チビちゃんと、きちんとお話が
したくて、故郷に帰るのをやめて戻って来たのよ……」
「……きゅぴ、アル、ダウ、アイシャ……、……で、でも、駄目っ!
嫌っ、帰らないっ!!」
「チビ……、いい加減にしろ……!俺ら皆がどれだけお前の事心配したと
思ってんだよ!……急に何も言わずいなくなりやがって……、ファラも
アリアハンの町の皆も、揃ってお前の事、心配してんだぞっ!!一体何が
不満なんだよっ、ちゃんと言わねえと分かんねえだろっ!!」
「……不満なんかないよお、……でも、チビはもう……、
皆の所には戻れないよ……、だって、チビがいれば……」
ジャミル達に聞こえない様、チビが小さく声を出す……。
「待ってろっ、今、其処まで行……」
「きゅぴ!?ジャミルっ!だ、駄目っ!!来ちゃ駄目だよお!」
「……そのドラゴンに近寄るな……」
「!?うわーーっ!!」
神竜とチビのいる祭壇まで近づこうとしたジャミルを神竜が
波動で吹き飛ばした。
「あてて、くそっ……」
「ジャミルっ、大丈夫かい!?」
「ああ、俺は大丈夫、回復は平気だ……、けど、チビ……、何で、
……何で何だよ……、本当に俺らの事嫌になったのか?理由を
聞かせてくれよ……、じゃないと……、折角此処までお前を
連れ戻しに来たんだ……、悔しくて帰るに帰れねえだろ……」
「……違う、違うよお……、ジャミル……、チビは……、チビは……」
「そうだ、このドラゴンは聖なる力を秘めたドラゴンだ……、
聖竜は我の後継者となる為、この塔に我が導いたのだ……」
……言葉を詰まらせ、ちゃんと説明出来ないチビに代わり、
神竜がしゃしゃり出てて4人に説明する……。
「……何だと?チビが……お前の後継者に……?」
「うそお、チビちゃんが……、神竜の後を継ぐのお……?」
「チビ……、ちゃん……」
「チビ……」
「お前達人間とは次元が違うのだ、……こやつももう覚悟を決めた、
それを理解し、自ら進んで我の声に耳を傾け、此処に来たのだ」
「きゅぴ……」
「チビ、お前……、本当にそうなのか……?」
神竜からの衝撃の言葉に……ジャミル達はそれ以上、言葉が
出なくなってしまう……。
「ぴ……、皆もうお願い……、帰って……、これ以上皆と一緒にいたら……、
チビ、本当に……、……ぴいいーーーっ!!」
「!?」
「チビちゃんっ!!」
「チビ、……もうグレるよお、ぎゅぴ……」
チビは頭にグラサンとリーゼントで……、80年代、ツッパリ暴走族の
格好に身を変えた。額には、〔特攻〕……、のマークの鉢巻が……。
「チビ、もう今日から不良ドラゴンなの!……だから絶対、
皆の所には帰らないよっ!特攻隊に入るぎゅぴ!!」
「……チーービーーぃぃぃ……、お前なああ……!!」
「ぎゅっぴ!ぎゅっぴ!」
「ジャミル、怒らないで……、チビ、おいで……、ちゃんと話そう?
……僕達に悪い処があれば治すよ……、ちゃんと言ってごらん?」
「ぎゅ、ぎゅぴ……」
アルベルトの言葉に……、再びチビの心が揺らぐ……。
「チビちゃあーん!!オイラとも話し合いしようよおー!
……だから、こっち来てええーー!」
ダウドもメガホンでチビに必死に訴え、呼び掛ける……。
皆はどうしてもチビに帰って来て欲しいと願っている。
そんな4人の姿に、チビは尚も心を痛め続ける。
「……ダウう~……」
「チビちゃん、……お願い……」
「アイシャ……、きゅっ、きゅぴっ……、皆……、嫌いだよおおー!!
どうしてこんなにチビにまだ優しくするの!?チビ、不良に
なったんだよおー!!」
「……だったら、尚更お前を更生させねえとな、……死んでも
帰らねえよ、お前は俺達が卵から孵したんだ、……俺らはお前の
親なんだぞっ!!」
(孵した……だと……?ただの人間のこやつらが……?今まで
このドラゴンを育ててきたと言うのか……?まさか……)
「……ジャミルはすぐ怒るし、おならは臭いし……、アイシャは
野菜食べないと怖いし……、アルは本ばっか読んでて遊んでくれない
時があるし……、ダウはすぐいじけるし……、でも、でも……」
「でも、……何だ?」
「やっぱり、……皆……、大好きだよおお……、チビの大好きな……、
パパと、ママだもん……」
チビはそう言うと……、いつもの格好に姿を戻す……。
「……一緒にいたいよ……」
「チビ……、来いよっ!!」
「きゅ……、ぴ……」
堪えていたチビが遂に本音を漏らし……、皆の元に飛んで行こうと
した、その瞬間……。
「お前はもう決心が揺らいだのか……?……その人間達の未来が
どうなってもいい、構わないと言うのだな……?」
「……きゅぴいいいーーっ!!!」
「チビっ……!!」
神竜がチビを捕え、透明な石の塊を作ると、その中にチビを
閉じ込めてしまう……。
「お前がこれ以上、人間達と係れば、お前と係った全ての人間が
不幸になるのだぞ!」
「ぴ、ぴいい~、チビ、チビ……」
「……やっぱり……、チビに変な事吹き込んだのは、てめえ
だったのか……、チビ、安心しろよ!こいつの言う事なんか
気にすんなよ!分ったか!?」
「ジャミルううう……、みんな……、ごめんなさい……」
石に閉じ込められたまま……、チビが4人を見つめ、悲しそうな
顔をする……。
「でも、もうこれで……、遠慮なくチビを連れて行けるね……!」
「そうよ、……私達のチビちゃんに……、酷い嘘教えて
悲しませて……!あなたの本当の目的なんか知りたくないけど
絶対許さないわ!!」
「やっぱり……、大事な物は戦わないと……取り戻せないんだね……!」
「そう言うこった、……覚悟しとけよ、糞アホンダラ!何が何でも
お前からチビを取り戻すからな!!」
「フム……、やはり……、お前と係った所為でこの人間達の
不幸はもう始まっておるのだぞ、……可哀想にな……」
VS 神竜
ジャミル達4人と神竜はチビを巡って、互いに睨み合う……。
「我に本気で勝てると思っているのか……?愚かな……」
「最初から負けるなんて思ってたら何も出来やしねーんだよっ!
おい、皆、ちょっと……、作戦会議だ……、よう神竜、少し
時間を貰うぞ……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 vs神竜 作家名:流れ者