zokuダチ。セッション1 新生活暴走編
ダウドがそう言うと、おむすび頭の少年は凄い勢いで
廊下を走って行った。
「……」
「……」
「何なんだよ、このマンション……」
「さあ…?これから先も……、誰が越してくるか……、
楽しみだね……」
「俺としちゃ、やっぱり、どうせなら可愛い女の子の方が……、
何でもねえ……」
そして、その日の夕方、雨もやんだので食料品店に足を運ぶと、
本日は店内には黒子ではなく、中学生ぐらいのツインテールの
可愛いキュートな女の子が……。
「初めまして、こんにちは!宇佐美いちかですっ!今日、一日だけ
バイトで派遣されて来ました!皆さんに笑顔と元気をお届けしますっ!
ちなみに今、中学2年生です!」
「へえ……、どうでもいいけど、……中学生働かせんなよ……」
「はい、本日のお品書きでーすっ!」
……渡されたお品書きを見ると。
「うわ、今日は今日でスイーツばっかりだな……」
「如何ですか!?如何ですか!?」
いちかという少女は目をキラキラ輝かせ、ジャミルを見ている。
「んじゃ、今日の奴、全部……」
「ありがとうございまーすっ!あ、私、故郷で友達とスイーツショップの
お手伝いをしてるんですよ、お店の名前はキラキラパティスリーって
言うんですよっ、もし、立ち寄る事があったら宜しくお願いしまーすっ!」
「へえ……」
ジャミルは買った袋をぶら下げ、食料品店を後にする。
「おい、そこのあんた……、その袋からキラキラルの美味そうな
匂いがするね、よこしなっ!!……早くよこすんだよっ!」
ジャミルの前に……、角が2本生えた筋肉ムキムキの変な怪物が現れた。
「今回はバトル要素はねえんだよっ!って、聞いてたけどなあ……、
とにかく、これは俺の夕飯だぞっ!渡さねえぞ!」
「やるよっ!抵抗すんじゃないよ、さっさとよこしなっ!!」
「待ちなさーいっ!笑顔と!元気を!レッツ・ラ・まぜまぜっ!
キュアホイップ、只今参上っ!出来上がりっ!」
ウサ耳を付けた謎の魔法少女ヒロインも現れた。
「……うわ、可愛いけど……、何か……モミアゲすげえなあ……」
「みんなの笑顔を奪う敵は許さないっ!えいっ!」
キュアホイップと名乗る、突如現れたヒロインは持っていたパクトから
何やら取り出し、クリームの様な物を敵にぶっかけようとしたが……。
「おい……」
「えっ?……ええええっ!?」
間違って……、ジャミルをクリームで拘束してしまったのであった。
「きゃあーーっ!ご、ごめんなさーいっ!!」
「覚えておいでっ!……今日の所はひいて……、やるよ!?」
「……まだ何もしてねーだろうが!!」
角の生えた怪物はあっという間に撤退し、ホイップもきゃーきゃーと
何処かへ逃げていった。
「はあ、やれやれ、……アイシャ並みのドジっ娘だったなあ、
……それにしても、服がクリームだらけでベトベトだ……、
何だったんだ……?」
ブツブツ言いながら、帰路を急いだのであった……。
ヤキモチと嫉妬と風邪
引っ越して来て数日、大分この変な島の暮らしにもジャミルは慣れたのか
調子に乗ってきた様であった。
「♪ふんふーん、ふふんふーん」
風呂に入りながら歌をうたい、ご機嫌。
「さーて、風呂から出て、一杯やっかな!」
冷蔵庫に向かい、早速、キンキンに冷えたビールをごきゅごきゅ飲む。
「ぷはーっ!……俺はこの一杯の為に生きているといっても
過言ではないっ!」
「ジャミルー、いるー!オイラだよお!」
「ダウドか?待ってろ、今行く!」
急いで、玄関のドアを開けて、ダウドを迎えると……、ダウドの横に
見知らぬ巨体の少年が立っていた。
「だ、誰だい……?又、随分と……」
「紹介するよ、今日、彼も引っ越して来たんだよ、近藤茂一君、
友達になったんだよお」
「ワイ、近藤いいまんねん、よろしゅうたのんまーす!」
……その巨体の少年は、カモメ眉毛で変な顔で何故か歯が殆ど
欠けていて他には歯が二本しか見当たらなかった。
「お前、趣味わりいなあ……、友達は選べよ……」
「なんだよお!人間、外見じゃないよお!近藤君、行こう、あ、
……ジャミル、さっきお風呂で歌うたってたの、聴こえてたよお……、
音程外れてたよ……」
ダウドが口に手を当て、ジャミルの方を見、ニヤニヤ笑う……。
「ダウドはんのお友達さんって、面白い人やねー!なーんか、
外見は全然ちゃうし、こっちの方がイケメンさんやけど……、
何でやろな?誰かさんを思い出すわ……」
「面白いけど、たまに頑固で気が短いからさー、困っちゃうんだよおー!」
(何だ何だ、……この異様で異常なありえねえ光景はよ……、見てて
むかつくんだけど……、もしかして、俺?妬いてんのか……?!!!
んにゃ、んーな馬鹿な事はありませんよっ!ぜーったい、ぜーったい!!)
それでも何故か無性にカッカカッカきているのが分るので、
頭を冷やそうともう一度、水風呂を作り直し、頭からザバっと
水風呂に潜った……。
次の日。
「風邪……、ひいた……」
冷たいビールの後に又水風呂に入れば当り前である。
「はあ、こんな時……、何でアイシャ来ねえんだよ……、うう、
アイシャあ~……、会いたいよ~、……っくしんっ!!」
「ジャミル、いる?……いるね、勝手に入るよ、……あーあ……、
馬鹿だねえ、……時期も考えなよ、今、一体何月だと思ってんのさあ……」
「……んだよ、3月だよ……、っくしっ!お前、今日はあの歯掛けは
どうしたんだ?一緒じゃねえの?……親友になったんだろ?」
「オイラの親友は、ジャミルだけだよお~、当たり前でしょ、
全く、何言ってんの……」
ダウドはそう言って、ずれたジャミルの毛布を掛け直してやった。
「フン、大きなお世話じゃ……」
「何か食べたいのある?オイラの買える範囲でなら買ってくるけど……」
「……アイス、〇ーゲ〇ダッツか、レ〇ィボー〇ン……」
「だから……、買える範囲でって言ってるでしょ、種類については
贅沢言わないんだよお、とにかく買ってくるね、あったら50円
アイスでいいよね!」
「……あてっ!」
ダウドはジャミルにぴんぴんぴんぴんデコピンし、ついでに頭部に
チョップすると外に買い物に出て行った。
「今は今はアルがいないからねえ、オイラがこの役は承りますっ!」
「……あの野郎、人が動けないと思ってからに……、後で覚えてろ……」
赤くなったおでこを押さえてジャミルが呻いた……。
それから暫くして、ダウドが出て行った後、又インターホンが
鳴る音が部屋の外から聞こえてきた……。
「……俺、今出られねーんだよ、後にしてくれや!」
「大丈夫だよ!勝手に入るからー!おほほー!ご挨拶だよ!」
「おほほ?う……、げえええっ!!」
寝ているジャミルの顔を誰かが覗き込んでいた。それは真っ赤な
頭アフロのピエロであった……。
「元気ー?僕はドナルド・マクドナルド、ハンバーガーの
作品名:zokuダチ。セッション1 新生活暴走編 作家名:流れ者