zokuダチ。セッション1 新生活暴走編
早くしないと……、俺のあれが……使い物にならなくなっちまうよ……」
「今度は急に蹲ったが……、本当にあいつは見てて面白い奴だ……、
飽きんな……」
「グレイったら!……ジャミル、こっちに来て、ほら……、一緒に
おいなりさん食べましょう、ね?」
「あうううう~……」
「卵焼きと、のり巻もあるから……」
「何か……、幼稚園児と保母さんみたいだあ……」
「ダウド、君も黙って聞いてると、意外と口が悪い処……、
あるよね……」
「だって、オイラ、ジャミルの親友だもの……」
ダウドが顔を赤くしながら笑った……。号泣しているジャミルの横で
ジャミルが履いている靴下の片っぽを、おでこに縞模様のある変なネコが、
引っ張って銜えて持って行ってしまい、卵焼きを一つ、シャムネコが
銜えて盗んで逃げて行く。……ついでに黒猫も来て、ジャミルにマーキングを
するとさっさと何処かへ歩いて行った。
「そう言えば、……そうだったね、あはは……」
「そう!えへへ~」
そして、その日の夜、暫らくぶりでジャミルの部屋にインターホンが
鳴った。寝ていたジャミルは慌てて飛び起きる。
「……今度こそ、もしかしてアイシャか……?そうだよな、流れから
して絶対そうだよな!?これはきてる、絶対きてるぞおー……!!
あああ!アイシャちゃーーん!!」
独り言を言いながら、慌ててドアを開く。……しかし、残念ながら、
入り口に立っていたのは……。
「……オウっ!?」
「よお、ジャミル!来てやったよ!!」
「あうう……?」
アルベルトを連れた、逞しい元蛮族の雪国バルハラント出身の美女お姉さま、
おっかねえシフであった……。
「今度からあたしも此処のマンションに住むからさ!坊や共々、
アンタもびしびし鍛えてやっからな、だらだらしてんじゃないよ、
覚悟しなっ!!」
シフは持っていた竹刀でびしっと地面を叩き、ジャミルを一括する。
格好はジャージで、その姿はまるで鬼体育女教師の様でもあった……。
「ははは、そう……、言う事……だよ……」
シフに小脇に抱えられ、アルベルトが苦笑いした……。
「……何でこうなるんだよおおーー!……いい加減にしろーーっ!!」
課金ゲーで狙っていた大当たりを逃した様な……、そんなジャミルの
魂の叫びであった……。
寿司屋へ行こう
この島に、期間限定の格安回転寿司屋が建つと聞き、ダウドは
早速ジャミルを誘うのであった。
「……あんまり……、気が進まねえ……」
「行こうよお、ねえ、一皿100円ならどうにでもなるじゃない、
……500円ずつ出し合ってさあ……、行こうよお!」
「500円つー事は、5皿ずつか?やだよ、足りねーよ!
……せめて、20皿はいかねーと!」
「……欲張りだなあ、ンモー!オイラ達、お金無いんだから
しょうがないじゃん!」
「金……、そうだ!いいカモがおりましたよ、ひっひひっひ!」
「……?」
ジャミルは廊下に出てアルベルトの部屋まで走って行った。
「絶対、お断わりっ、……帰れ!しっしっ!」
「ケチだなあ!……寿司ぐらいおごってくれたっていいだろ!」
ごんっ!!
「……っつう~……」
「何やってんだい、このボンクラ!坊やの修行の時間なんだよ!」
ジャミルの後ろに……、竹刀を肩に担いだシフが現れる……。
「出たな……!大女め……!!」
ジャミルは一歩、後ろに下がって警戒し、スペシウム光線の構えをとった。
「……で、このアホから何を要求されたんだい?」
「寿司を……おごってくれって……」
「バカだねえ……、たくっ!食う事ばっか考えてんじゃないよ!
ついでにあんたの思考回路も叩き直してやるっ!!オラオラオラオラっ!!」
「やだよーっ!冗談じゃねえやいっ、とりあえず逃走ーっ!!」
シフが竹刀をびゅんびゅん振り回すが、すばしっこさはジャミルの方が
ワンランクずば抜けて上の為、ひょいひょいと飛んで避け、そのまま
逃げていった……。
「逃げられたか……、はあ、やれやれ、……あたしもまだまだだねえ……」
「シフ……」
アルベルトがシフのジャージの裾をくいくい引っ張る。
「何だい?」
「……寿司ってなに?」
「坊やには……そういう世の中の教養も必要か……」
「?」
仕方がないので、ジャミルとダウドの有り金500円ずつ足し、
合計1000円で寿司を食べに行ってみる事にした。
「このお店の名前、面白いね、きゃっぱ寿司だって」
「名前なんかどうでもいいよ、早く寿司食いに行こうぜ……」
店に入ると……、独特の酢臭い臭いが充満する……。
「お客さん……、全然いないね……」
「……何か嫌な予感しかしなくなってきた……」
「いらっしゃいだぎゃ!」
「らっしゃい!席はどれもガラ空きだよ!客はいねーから適当に座んな!!」
店の奥を覗くと……、青いバンダナを巻いた無精髭の親父が
厨房からぬっと姿を現し、トカゲが店内をせっせと掃除していた……。
「……ホーク、何やってんだよ……、あんた海賊やめて寿司屋に
転職したのか……?」
「ちょっと又状況がやばくなってな、……俺も移住してきたのさ……、
近いうちにこの島に出来たマンションに引っ越そうとおもってな、
暫くは又、新しいレイディラック号が買えるまで資金稼ぎだ」
「そう……、なのか……」
(かっぱのお寿司……、カッパが握る……、かっぱ寿司……)
「お客さん、早く席に座ってくださいぎゃ!」
相棒のトカゲが二人を急かす。ジャミルは逃げようかと思いもしたが、
ダウドがむんずとジャミルのパーカーの裾を掴んで放さない。
「ハア、仕方ねえ……」
席に座って寿司が流れてくるのを待つ……。
「でも、こういうのって、すぐ食べられるからいーよねっ!」
「そうだな……」
(……あーあ、何で此処にアイシャがいねーんだよ……)
「あ、流れてきたよ!」
一発目に流れてきたのは……、かっぱ巻きであった……。
「……次のを待つか、折角だから……、トロ一個ぐらい
腹に入れねーと……」
「そうだねえ……」
しかし、次に流れて来たのは塩のおにぎりであった……。しかも
コンビニで買ってきたらしきブツをまんま流している………。
「おい……!この糞親父っ……!!」
ジャミルが等々ブチキレ、立ち上がり、テーブルをバンと叩いた。
「何だ!?」
厨房の奥からホークがのそのそと出てきた……。
「ふざけんなよ!真面目にブツ流す気があんのかよ、あんたっ!
トロはよっ!」
「あーん?贅沢言ってんじゃねえぞ!マグロなんか流せる資金が
ウチにあると思ってんのかあ!?第一、店の看板見ただろう!ウチの
メインはかっぱ巻きなんだっ!理解しろっ、このワル糞ガキめ!!
仕方ねえ、サービスで特別に今日はトロは特別だっ!」
ホークはブスブス怒りながら、再び厨房の奥に引っ込む。
作品名:zokuダチ。セッション1 新生活暴走編 作家名:流れ者