zokuダチ。セッション1 新生活暴走編
「誰かいます!?挨拶回りに来た者なんですけど!」
「へえへえ、……今行くよ……」
ジャミルが部屋の入口に行くと、今度来たのは、一回り背の小さい、
小柄で華奢なサル顔の少年であった。
「……はっきり言って、何で俺がこんな所、来なきゃなんないのか
意味不明なんスけど……、でも、谷口さんが此処に来るらしいので……、
…来たんス……」
サル顔の少年は上から目線でジャミルの顔を見た。
「そら、俺だって……、?谷口……、ああ、お前、谷口が言ってた
後輩か?」
「……はい、イガラシです……」
「お前の事、心配してたみたいだったぜ?早く部屋に行って
顔見せてやれよ!」
「そうですか!谷口さんが……!では、俺はこれで一旦失礼します、
又後で……」
むすっとしていたイガラシは、〔谷口〕、の言葉を聞いた途端に機嫌が
良くなった様であった。
「……何か、あんまり心配なさそうな気がするけどね……」
様子を覗っていたダウドが自室の部屋のドアを開け、顔を出した。
「だと、いいんだけどな……」
ところがどっこい、タダでは収まらないのが、この作者が
書く話である……。
さらに次の日。
「あーっ!何なのさ!あんの猿ガキいーーっ!!あーーっ!
悔しいーーっ!!」
「何だよ……、朝っぱらから……、うるせーな、もう……」
寝起きのジャミルがぼりぼり頭を掻いた……。
「ジャミルっ、大変だよ、バーバラと、昨日此処に来た、猿みたいな
顔の子が……」
ダウドが慌てて、ジャミルの部屋に駆け込んでくる。
「ああん…?」
ジャミルが寝起き状態のままでそのまま外に出ると……、バーバラが顔に
パック白塗り状態のまま、地面を蹴って暴れていた……。
「……うわ!妖怪白塗りお婆ーラ!!」
「誰が妖怪だっ!?ああん、言ってみな、この口か!この口か!」
バーバラはジャミルの口に手を掛け、うにょにょにょと横に引っ張る。
「あふぇふぇふぇふぇ!や、やめりょ!!こひょ、おふゃふゃ!!」
「……バーバラも、落ち着いてよお~、ジャミルも駄目だよお~!」
其処に……、今回の騒動の発端となったらしい、イガラシが現れる……。
「何なんです?俺は思ってる事を正直に言っただけですけど……、
香水の臭いがきつすぎて気持ち悪くなるって、それだけですが?
それだけでキレるとか……、ちょっと、大人げないんじゃないの?」
「大きなお世話だよっ、……大体、あんた子供の癖にちょい生意気
すぎんじゃないのっ!?」
「……イガラシっ、駄目じゃないかっ!」
「あ、谷口さん……」
「どうもすみません、本当に……、これからこのマンションの
人達には何かと色々お世話になる事もあるんだから……、ほら、
謝るんだ、……本当にどうも、大変失礼しました!」
谷口はイガラシに頭を下げさせると、自分も一緒に頭を下げ、
謝ったのであった……。
「……すみません……、でした……」
谷口には逆らえないのか、仕方なさそうにイガラシもバーバラに
頭を下げた。
「へえー、こっちのこの子は中々しっかりしてるね、
いい子、いい子!」
バーバラは谷口のゴマ塩頭をなでなでし、ほっぺに軽くキスをした。
「ハ、ハア……」
赤面症の谷口は顔が真っ赤になる……。
※原作の漫画本編であんまり女の子に縁がないからね、この子達は……。
「さーてとっ、……化粧が終わったら、エステとお買い物にでも
行ってこようかしらーん、んじゃ、ボーヤ達、まったねえーん!」
「……」
すっかり機嫌の良くなったバーバラは腰をフリフリ、自分の部屋へ
と戻って行った。
「では、僕らもこれで、また……」
「ん……」
「失礼します……」
谷口とイガラシも部屋に戻って行く。
「……けど、オイラ達もそうなんだけどさ、……一体何の目的で
あの子達はこのマンションに住むんだろうね……」
「知るかよ……、そういうゲーム内容なんだから仕方ねえだろ……」
そして、更に……、その日の夜……。
「……近藤っ!テメーばかやろーーっ!!」
「ひいいーっ!丸井はん、もう勘弁してーな!!」
「今度は何だ……」
又、一騒動起こったらしく、今度は丸井が近藤を蹴とばしていた。
「丸井っ、やめないか!暴力はよせっ!」
「た、谷口さああん、だって……、この馬鹿が悪いんスよ……」
「どんな理由があっても、手を出したら駄目だぞっ!」
「はあい……、すみません……」
近藤はざまあみろとばかりに谷口の後ろに隠れた……、
つもりでいたがでかすぎて全然隠れていないのだった……。
(調子に乗りやがって……、谷口さんがいない時は……、覚えてろ……)
「……はあ、やってらんないよ……」
頭に手を当てて、イガラシが通り過ぎて行った。
「でも、このマンションも大分賑やかになってきて楽しいね、ジャミル!
あはっ、皆知り合いだったんだあ!」
いつの間にか、ダウドも部屋から出て来てジャミルの隣にいた。
「そうか……?てか、ホント、お前も野次馬だな…」
「何さ、ジャミルだって部屋から出て来てるじゃん!」
「うるせーからだよ、……あんだけギャーギャー騒いだら、
普通気になるだろ……」
「でも……、他の皆は意外と冷静だよね……」
ジャミルとダウド以外に……、他の住人は今の処、誰も部屋から
出て来ていない。
「じゃあ、俺らは馬なのか……、馬か……」
「……競馬場で一緒に走ろうか……」
「……」
だが、自室に戻ろうとしたイガラシを見ていた男が一人、
グレイであった……。
「何すか……?」
「お前とは……、もしかしたらウマが合うかもな……」
「ハア……?」
「……ふっ」
グレイはそれだけ一言言うと部屋に引っ込んで行った……。
「???」
「ジャミル、……シフの実家から荷物が届いて、僕にもおすそ分け
してくれたんだけど……、多すぎるからおすそ分けに来たよ、ダウドにも
あげてくれるかい?」
段ボール箱を抱えたアルベルトがジャミルの部屋にやって来る。
「おお、気が利くな!てか、明日は雨かな……」
「……失礼な……、じゃあ、おやすみ!」
不機嫌そうな顔でアルベルトが部屋に戻って行く。
「ふーん、……んで、何くれたんだ……?」
段ボール箱を開けると……。
「……人参だああーーーーっ!!」
こんにちは、はーちゃんです。
此処に越してきて数日。少しは住人も増えて来た様であった。
……最近、毎朝謎の目つきの悪いカラスが窓ガラスからジャミルの
部屋を覗き込んでは一言、
『バカーー!!』
……、と、発し逃走していくのである。ジャミルは市役所に有害駆除を
頼もうと思ったが、ダウドの話によると、あれはMあっちいKスタジオから
飛んで来ているとの事なので、仕方なしに止めておいた。冗談はさておき……。
「こんにちはーっ!」
作品名:zokuダチ。セッション1 新生活暴走編 作家名:流れ者