サブエピソード集・続勇者、始めます。
漸く又この村の姿を見れた時は、どれだけ涙が出たか分らなかった
ですわ……、はあ、私も大分歳を取ってしまったわ」
「マーレ……」
(仕置きは……、じ、自分でやった癖に……、何つー女じゃ……)
「何ですの、其処のお猿さん、さっきからこそこそと……」
「何でもねーよっ!」
「でも、あなたにとって、一番の宝物は旦那様だったのね、
それが分ったんだから良かったじゃない!……これからも
大切にしてあげないとね、旦那様を……」
「……そんな事、あなたに言われなくても分かってますのよっ!
ああ、あなた、あなた……、愛してるわ!」
「え、えへへ~、マーレ……」
笑顔で笑うアイシャに、マーレは容赦ない言葉を返す。
(やってらんねーや、糞馬鹿夫婦……、ぜっ……、たいに、
結婚したくねえタイプの女だっ……!!)
「んじゃ、これで全部終わったな、……俺らはこれでっ、おい、
お前ら行くぞ!!」
「はあ、マーレさん、良かったねえ、でも、金輪際……、
旦那さんをお仕置きするなんて二度としない方がいいよお……」
ダウドはやはり、自分似のマーレの旦那が気になる様で、
ちらちらとそちらの方を見てばかりいるのであった。
「ええ、あなたには本当にお世話になりましたわ、どうぞ
これからもお元気で、私達、もうこの村を離れて、何処か
別の場所で平和を満喫致します、ね?あなた……」
「ああ、マーレ……、僕の愛しいマーレ……、愛してるよ……」
「ハア……」
……旦那に似ている所為か、マーレはダウドだけには
優しい態度を取るのであった。
「それでは、皆さまごきげんよう、アディオースっ!!」
「……二度と会いたくねーっての……」
ジャミル達に投げキスをし、夕日の彼方に消えて行った
変な夫婦をジャミル達は、何とも言えない……、むしゃくしゃ
した複雑な気分で見送った。
「はあ、世の中にはまだまだ色んな人がいるんだねえ、
……オイラ、勉強になったよ……」
「ダウド、お前も将来はああいう、変なのに集られない
ようにしろよ……」
「うん……、って、何だよお!失礼だなあ!!バカジャミルっ!!」
「あはははっ!!」
チビ、反抗期
これはチビが産まれて約一ヶ月が過ぎた頃のお話。
「あっ、チビちゃんたら……!またお野菜残して、
しょうがないなあ……」
腰に手を当て、アイシャがチビの皿に残されたキャベツの山を
見て呆れた。
「仕方ねえだろ?あいつも漸く歯が生えてきたんだから
大目に見てやれよ、ま、その内食える様になるさ」
「そうだけど、少しは怪獣並みに何でも食べるジャミルの
嫌らしさを見習って欲しいわ……」
「そうだなあ……、って、おい……」
「……はあ~……」
「きゅぴ、アル、あそんで!」
船室で本を読んでいたアルベルトの処にちょこちょことチビがやってくる。
今は船の舵も留めて休息中である。
「ん?チビかい?ちょっと待っててね、今、この本を読んじゃうからね……」
「きゅぴ……、うん……」
「……もう少し、後、数ページだから……」
と、アルベルトがそう言って数分が経過した。アルベルトは本を真剣に、
……ゆーっくりと丁寧に読んでいる為、時間は掛り、本から目を離す
気配を一向に見せないのであった……。
「ぎゅっぴ!!……アルきらいっ!!」
じっと大人しく待っていたチビは等々切れて甲板に上がって
行ってしまった。
「……チビ?あれ……」
「だれかあそんでくれるかなあ……?あっ、ジャミルいた……」
「……」
ジャミルは甲板で釣りをしていて、一行に釣れないので、
釣り糸を垂れたままそのまま不貞腐れ、眠ってしまって
いたのだった……。
「zzzzz」
「ジャミルー、あそんできゅぴ!ねえー!」
「ふんが!」
「……ぎゅぴーーっ!!」
ジャミルにも相手にされないチビは、今度はダウドの処へ行こうと、
再び甲板から下に下がって行った。無論、ジャミルにしっかりと
悪戯をして……。
「……ぷ、きゃはははは!」
「う、……なんら、?アイシャ……、か……」
アイシャの笑い声で漸く目を覚ましたジャミルが落書きだらけの
物凄い顔でケラケラ笑っているアイシャの方を見た……。
「ぼけっと居眠りなんかしてるから、悪戯されるのよう!
ホラ、鏡見てっ!」
笑いを堪えながらアイシャがジャミルに手鏡を渡し、ジャミルは
寝ぼけ眼で、自分に描かれた落書きだらけの顔を確認して、悲鳴を
上げるのであった……。
※顔に描かれた意味不明の悪戯落書きの一部→ ルパンダイブに
しっぱいしてがけについらくしておーのーしてるジャミルきゅぴ
「ちくしょーっ!まーたチビだなっ!……あの野郎……!
す、少し説教してやるっ!!」
「……よしなさいよっ!それにしても、チビちゃんて
まだ小さいのに、凄く芸術性もあるのねえ!」
「……感心してる場合かっ!!怒る時はちゃんと怒らねーとっ!!」
「へえ、野菜の時はあまり怒らないのにね……」
「……いいんだっつーの!」
「ダウ、どこかなあ、おへやにもいない……、あっ、いた!」
チビは休憩室で料理していたダウドを見つける。今日の夕ご飯は
ダウドが当番なのである。
「ぴ、ダウー!」
「ああ、チビちゃん、ふふ、どうしたの?お腹空いたのかな?」
「ダウ、おこらないからだいすき!ダウー、ダウー!」
チビはダウドにスリスリ頬を寄せて甘えるのであった。
「待っててね、夕ご飯の支度が終わったら遊んであげるからね、
ちゃんと作らないと怒られちゃうから……」
「きょうのゆうごはんはなあに?チビ、ミルクごはん!!」
「それはチビちゃんが好きなご飯でしょ、オイラ達がちゃんと
食べれる物を作らないと……、チビちゃんも好き嫌いしないで
きちんと何でも食べなくちゃ駄目だよお……」
「きゅぴ……、じゃあおにくいっぱいごはん!」
「うーん、ごめんねえ、今日はもう下ごしらえしちゃったんだよ、
グリンピースライスと野菜のスープだよ、栄養満点で美味しいよ」
「……ぎゅっぴ!おやさいいやっ!……ごはんにミルクいれるのーーっ!!」
「あ、ああーっ!駄目だよっ、チビちゃんっ!……あ、あああっ!!」
ダウドが止める間もなく、チビがライスにミルクを掛けまくり……、
……甘いミルク御飯が出来上がるのであった……。
「……で、どうすんだよ、コレ……、ちったあ怒る事もしろっつんだよ!
バカダウドっ!」
「……だって、間に合わなかったんだよお……」
「ぴー!ミルクごはん!おいしー!」
「はあ、勿体無いし……、私達も食べるしかないわよね……」
「だねえ……」
「……たくっ!……お、おぇええ~……」
仕方なしにミルク御飯を一口、口に入れたジャミルが……、あまりの
不味さに吐き気を催す……。
「あ、ジャミル、ごはんのこしてる!すききらいはいけませんよっ!!」
……ぷっ、つん……
作品名:サブエピソード集・続勇者、始めます。 作家名:流れ者