サブエピソード集・続勇者、始めます。
「あのなあ……、誰が飯をこんなにしたと思ってんだっ……!
ええ~っ!?」
「ジャミルっ、駄目よっ!チビちゃんまだ小さいんだからっ!
悪い事は悪いって、私がちゃんと教えるわよっ、……だから今夜は
大目に見てあげてっ!」
しかし、アイシャが止めようとするも、先程の落書きの事もあり、
……怒りMAXジャミルのプッツンモードは止まらず。
「チビ、捨てるぞ……」
「!!!!」
言ってはいけない一言を口にしてしまうのであった……。
「……ぴいーっ!すぐおこってくさいおならするジャミルきらいっ!
やさいたべないとおこるアイシャもいやっ!ほんばっかよんでる
あそんでくれないアルもいやっ!……みんなきらいっ……!!
……びいいいーーっ!!」
「……チビちゃんっ!!」
チビは泣きながら休憩室を飛び出して行ってしまう……。
「ふう、良かった、オイラは今、嫌いリストに名前入ってなかった……」
「そう言う問題じゃないでしょ、ダウド……」
……アルベルトが横目でダウドの顔を見る……。
「え、えへへ……」
「ほっとけよ、アイシャ……、すぐ機嫌も収まらあ……」
「……でも、さっきの一言はちょっと幾らなんでも酷いわ、
捨てるだなんて、言い過ぎよ……」
「チビちゃん、かわいそう……、も、もしも……、チビちゃんが……、
さっきの言葉で傷ついて……、家出でもして……、ふ、不良にでも
なっちゃったら……、……う、うわあああーん!チビちゃんが
かわいそうだよお……!!」
「……アホか、バカダウド……、オーバー過ぎんだよ……」
「きちんとチビに謝ってきなよ、ジャミル……、さっきの言葉が
君の本心じゃないって事は分かってるよ……、でも……」
「……」
ダウド、アイシャ、アルベルトの3人は、じーっとジャミルの顔を
見つめ、何とか言えよと返事を待つ……。
「わ、分ったよ、謝りゃいいんだろ、謝りゃ、たくっ!」
……ジャミルが休憩室を出て行くまで、3人はずっと
ジャミルの方を見ていた。
「はあ~、何で俺がこんな……、……ブツブツ、チビの奴……」
ジャミルがチビを探しに甲板まで上がって行くと、寂しそうに
チビがちょこんと一匹で座って海を見ていた。
「ぴい~……」
「……チビっ、コラ!」
ジャミルの姿に気づくと、チビはジャミルから顔を背けた。
「……あしたから、チビすてられちゃうの、ノラドラゴンに
なっちゃうの……、ぴいい~……」
「バカだなあ、ホントに……、すーぐいじけんだから、よっ!
……んなとこはダウドに似なくていいっつーの!」
「ぴ?」
ジャミルはチビを抱き上げるとチビの顔を見た。
「冗談だよ、言葉のアヤっつーか、……捨てたりしねーよ、だから、
オメーもあんま、本気にすんなっつーの、ていっ!」
ジャミルがチビに軽くデコピンすると、チビはスリスリ、
ジャミルにすり寄って来た。
「……ぴー、ごめんなさい、チビ、……いいこになる、
だからすてないで……」
「だから、それは心配しなくていいって、……でも、あんまり
我儘言うなよ……、分ったか?」
「……うん、でも……、おやさいきらい……、いや……、たべない……、
まずい……、おえ……」
「……チビ、お前、今、この期に及んで……、ん?」
「すぴょ、すぴょ……」
チビはジャミルに抱かれたまま、安心して眠ってしまったのであった。
「たく、ほんっとーに、どうしようもねえ、我儘ドラゴンめ……」
「……ふふ……、ジャミルったら……」
「やっぱり、可愛いんだねえ~、チビちゃんが……」
「良かったね、素直になれて……」
「ちょ、お、お前らっ!……何時から其処にいたっ!?」
階段の下にこっそりと隠れてやり取りを聞いていた3人が
笑いながら顔を出した。
「べ、別にっ!うるせーから寝かしつけてただけだっ!ほら、
アイシャこれっ!あーっ、漸く寝てくれて助かったわ!じゃあ
俺も寝るっ……!んじゃあな!!」
「あ……」
ジャミルはアイシャに寝ているチビを押し付けると、……慌てて
船室へと逃げて行くのであった。
「うーん、やっぱり……、素直じゃないなあ……」
「でも、仲直り出来て良かったわね、チビちゃん!」
「……すぴょ……」
翌朝……。
「かーきかき、かきかきかき!かおー!これ、アイシャに
なぐられてたおれてる、おーのーしておならしてるジャミルの
かおー!♪ぴいー!」
「……こ、こら!チビちゃんっ!待ちなさいっ!!お部屋の壁に
絵を描いちゃ駄目だって何回言ったら分るのっ!!……こらーーっ!!」
「きゅぴーっ!!」
「チビちゃーんっ!!言う事聞きなさいっ!!こらあーーっ!!」
船内でアイシャとチビの早朝マラソンが始まり、今日も一日の
スタートを切る。……しかし、子供と言うものは、普段からよーく
大人のする事をしっかりと見ているのである。
「……やれやれ、そんな簡単に……、ころっと悪戯が急に
止まる訳はないわな……」
「まあ、気長に見守ってあげようよ、何せチビはまだ精神上、
赤ん坊なんだしね……」
「だよねえ~……」
「たく、どうしようもねえ、一体、んなとこ誰に似た……」
……ぷう~、ぴい~……
「……」
「おならでたきゅぴ!」
「……チービーいいいっ……!!てめえ、わざわざ人の顔の前まで
来てっ!くっそ、デコピンしてやるーーっ!!」
「きゃはははは!!」
「……ま、明らかに、誰に似たのかは言う間でもないけど……」
「だよねえ~……」
アルベルトとダウドは顔を見合わせ、苦笑いするのであった。
……そして、チビの悪戯と我儘は更に止まる事を知らず……、
話は、9話のケンカする程……、へと、続いていくのである。
君といつまでも
……これは、ある小さな町で起こった出会いの物語……。
「待てコラーーっ!ガキーーっ!この泥棒めがーーっ!
逃がさねえぞーーっ!」
大声で罵声を上げ、男は追っている少年を猛スピードで
追い掛け捕まえる。そして、男は持っていた太い棒で少年の
身体をしこたま強く叩きまくった。
「このっ、この野郎っ!このっ、……死ねっ!オラあ!浮浪児めがっ!」
「……痛いっ、や、やめて……、ごめんなさい、お腹が空いて……、
本当にごめんなさい、……僕、償いで、おじさんのお店で一生懸命
働きます、だから……」
……みすぼらしい身なりの少年はパン屋の外にある
ゴミ箱に捨ててあったパンを探り、拾って食べたのだが、
それを中で見ていた男……、店主の怒りを食らい……。
「冗談言うんじゃねえっ、テメエみてえな汚ねえガキを使う
列記とした職人が何処の世界に居ると思ってんだーーっ!!
……ゴミのパンだってウチの立派な商売品だーーっ!
おめえなんかに食わせるモンじゃねえーーっ!」
男は更に少年に暴力を振るったが、町の者は誰一人として
止める者はいない。
「……ヘッ、ざまあみやがれ、これに懲りたらよう、金輪際、
作品名:サブエピソード集・続勇者、始めます。 作家名:流れ者