zokuダチ。セッション4 もっと増えます住人さん編
「いろは!ちょうちょさんだよっ!ホラホラ、みてみてっ!」
ジャミルはピンクリボンの方の女の子、こむぎの方をまじまじと見つめる。
異様に落ち着きが無いのは嫌でも分かった。先程から其所編で飛んでいる
チョウチョをじーっと目で追っており、何だか蝶に向かって今にもジャンプ
しそうな勢いである。
「こむぎ、大人しくしてなくちゃ駄目だよ!あっ、ご免なさい、この子、
わ、私の従姉妹なんです!とっても元気が良すぎて色々やらかしちゃうかも
知れませんけど、とにかく宜しくお願いしますっ!……ホラ、こむぎも
管理人さんにご挨拶だよ!」
「宜しくおねがいしまーす!わんっ♡」
「……そうか、直姉妹じゃあねえのな、分かったよ、んで、俺の方も
自己紹介、俺はジャミル、一応ココの管理人さ、まあ、気楽に
過ごしてくれや、他にも色んな連中がいるからさ、飽きねえと思うよ」
「わあっ、おにいさん、おなまえはジャミルって言うんだねっ!よろしくう、
ジャミルうー!」
「こ、こらっ!駄目だよっ!ちゃんとジャミルさんて言うのっ!
ウチのこむぎが……、どうもすみませ~んっ!」
いろは年上のジャミルをタメ口で呼ぶこむぎを慌てて窘め、自らは
頭を下げ、ペコペコ謝る。こむぎ張本人は悪気なく、きょとんとしている。
このこむぎと言う少女、外見は中学生の少女だが、頭の中身は幼稚園児……、
もしくは本当に何だか無邪気な子犬を見ている様な、そんな感じが
ジャミ公はしたのである。
「いいよいいよ、どうせ年下にも呼び捨てで結構呼ばれてるし、
気にしなくていいよ、それよりも部屋を案内するよ、いつもは俺の
ダチの女の子がサポートで部屋案内をしてくれるんだけど、……今日は
外出中でさ、だから代わりに今回は俺が……」
「こんにちはー!オイラダウドでーす!えへへ、ジャミルの親友なんだー!
オイラも今後とも宜しくねえー!」
「……おい」
ジャミルの肩越しから、ぬっとヘタレが顔を出し、いろはと
こむぎにご挨拶……。
「あっ、ジャミルさんのお友達なんですね!私、犬飼いろはです!
はい、此方こそ、宜しくお願いしますね、ダウドさん!仲良く
して下さいね!」
「わんわん、宜しくね、ダウド!」
「……こむぎっ、だからタメ口で呼んじゃ駄目だよっ!きちんとダウドさんて
言いなさいっ!めっ!……あれれ?あれれ?え、えーっとおおお……、
あれれ?ジャミルさんて……、ジャミルさんて……」
「わん?」
いろはは急に困り出す……。よく見ると、ジャミルもダウドも、
背丈が余り自分達と変わらない様な気がしたからだった。ダウドの方が
ジャミルよりは背が大きい様な物の……。管理人の割には明らかに
背が結構小さい。しかも童顔……。なんで、年齢……、こむぎには
タメ口は駄目だよと言ったが、実際、彼の年が本当は何歳なのか
良く分からなくなってきたんである。いろははジャミルの方を
チラチラ伺いながら、目を回し始め……。ジャミルは直感で彼女が
何で困っているのか直ぐに理解する……。
「……え、え~と、え~っとおおお……」
「はあ、一応俺、20歳だけどさ、……本当に気にしなくて
いいから……、……背が小さいのは別に気にしてねえし、
……マジで平気だよ……、本当に……」
「……そ、そうですか……?お、大人の方に当たり前ですよねっ!本当に
どうもすみま……、って、こむぎっ!!」
「?」
「わふ~ん、こむぎ……、何だかねむくなってきたわん……、
すう……」
「まだ此処で眠っちゃ駄目だよっ!……こむぎーーっ!!」
どうやら。こむぎが急に眠くなってしまったらしく、床にぺたんと
座り込んでしまう。それを見たいろはは異様に困って慌てている。
「疲れたんかな、じゃあ、早く部屋に案内してやらねえとだな、ホラ、
これ、あんたらの部屋の鍵だよ、同室でいいのかい?と、もう1階は
満杯だな、2階でいいかい?」
「はいっ!おねがいしまーっすっ!!」
ジャミルは2人を部屋まで案内する。いろはは眠りそうになっている
こむぎを慌てて立たせ、連れ添い、何とかジャミルの後まで付いて行く。
……漸く自分達の部屋まで辿り着いたのだが、いろはは何故か
汗だくであった……。
「じゃあ、俺も自部屋まで戻るけど……、何かあったら101号室まで
気軽に声掛けてな……」
「ぜーはー、ぜーはー……、あ、ありがどうございまずっ!ほ、ホラ、
こむぎ、お部屋に入るよ!ハア、ハア、……、わ、わたしだちも、また、
あらだめで、ごあいさづに……、ぞれでは……」
「またな……」
ジャミルはいろはとこむぎが部屋に入ったのを確認、見届けると、
自分も自室へと戻って行く。……少々首を傾げながら……。
アイシャの事ばかり只管考え、そして……。
「はああ~!つ、疲れたああああ……、どうにか無事にお部屋に
辿り着いたああ~……」
「わふうう~ん……、こむぎ……、おともだち……、いっぱいいっぱい、
たくさんあそびたい、ふにゃ……」
「でも……、やっぱり隠し事は苦手だよう~、えうう~……、で、でも、
此処でのシェア生活、頑張るぞーっ!」
「……ぷう、ぷう、わんわん……」
いろはとこむぎの自室では、寝っ転がった子犬のパピヨンが鼻提灯を
放出しながら、いろはの足下でくうくうと眠っていた……。
内緒は苦手
「新しい子来たのっ!私にも紹介してよっ!」
あれから……。アイシャ帰宅後。何事も無かったかの様に本日の
ジャミルとアイシャのケンカはお終い。本人達も何で揉めていたのか
両者共忘れてしまった様でケロッとしていた。まあ、単純、毎日こんな
モンである。
「人数も増えてきたからよ、2階の部屋に案内したよ、けど、来たばっかで
彼女達も疲れてるだろうから、今日はあんまり押し掛けるなよ?」
「分かってるわよう、でも、もし廊下ですれ違ったらご挨拶しても
いいでしょ?」
「それぐらいならな、いいんじゃね?ハア……」
「うふふ、新しいお友達楽しみーっ!じゃあ、私お部屋に戻るね!」
「オウ、又な……」
ジャミ公はアイシャを見送った後、ライターを取出し、タバコで一服……。
そして、部屋が静かになった途端、落ち着いたのか誰も居なくなった
部屋で屁を放いて独り言を呟く……。
「……ふう、今年も又猛暑かな……」
「あれ?随分廊下が賑やか……、あっ!」
「でね、でねー!わんっ!いろはったら、いろはったらねえ!」
「……こむぎ、だから、ワンって言っちゃダメだったらっ!」
「あははー!♪はー!こむぎも面白いねえ!」
「ホント、何だか子犬みたいな変わったコだわ……、口癖なのかしら……」
「うんうん、このマンションも又新しい友達が増えてワクワクもんだぁ!」
「♪モフー!ワクワクたくさんモフー!」
開放廊下で騒いでいる女の子達。まほプリ組と、今日越して来た
いろはとこむぎのコンビである。こむぎもすっかりもう、目は
覚めている様で……。女の子同士皆、直ぐに仲良くなったのか、
楽しくお喋りを交わしていた。
「……あれれ?で、でも……、モフルンて……」
「熊ちゃんだよねえ!あはは、モフルンはみらいのパートナー!こむぎと
作品名:zokuダチ。セッション4 もっと増えます住人さん編 作家名:流れ者