zokuダチ。セッション4 もっと増えます住人さん編
子犬に戻ったり、ヒト体型になって走り回ったり……。……興奮して、
少しお漏らしをしてしまったり……。この間は廊下に置いてあった花瓶を
壊した。相方のいろははいつも気が気でない。いずれもっと変な住人の数が
増えてくれば、又色々と対処しなければならないのである。
「ま、大丈夫さ、こんないつ崩れるか分かんねえ屁糞マンション、
……これ以上もう人が来ねえっての、安心さ……」
と、ジャミルが呟きながらベッドでうとうと、2度寝仕掛けた、その時……。
「ジャミル、お客さんよっ、来たよっ!」
「……うげええ~……」
アイシャが部屋に迎えに来る。ジャミルは本能的に咄嗟に毛布を頭から被った。
が、直ぐにアイシャによって強引に毛布を剥ぎ取られ、追剥ぎに……。
「もうっ!何してるのっ!ほらーーっ!」
「勘弁してくださあ~い……」
折角、眠り掛けた頃、また客がきたらしく、ジャミルはアイシャに
エントランスまで引きずられていく……。その様子を隣の部屋に住む、
友人のダウドは自部屋のドアの隙間からじっと見ていた。
「……がんばってねえ~、うう、いつもいつもご苦労様です~……、
オイラは知ったこっちゃありませんので、今からカップスター
味噌味食べます」
「今度は誰だよ……、たまにはもっと落ち着いた奴がいいんだけど……」
「自分の事棚に上げて何言ってるのよ、大丈夫、……今度も可愛い女の子よ、
白いネコさんを連れた……」
「はう……?」
と、聞いて、絶望状態だったジャミルの顔が一瞬明るくなった。
「あ、何よその顔!スケベっ!もうっ!それじゃジタンと同じじゃないっ!」
「バ……、バカ!俺をあいつと一緒にすんなっての!」
「……ジーターン……?朝から抜き足差し足で何処へ行こうとしていたの?
またこそこそ、女の子達をお誘いしようとしていたのかしら……?」
「い、いや……、彼女達も、か弱い女の子、レディだし……、ホラ、
何かと護衛も玉には必要だろ?」
「大丈夫よ……、ちゃ~んと、エレンさんや、バーバラさん達も
いるんだから……、ね?うふふふ……、こほん……、あなたは一体誰の
護衛で此処へ来たのかしらっ!?」
「にぎゃああーーーーーー!!」
「……」
そう言っている傍から、朝からジタンとダガーの修羅場を見てしまった
二人であった。ジャミルとアイシャは無言になり、エントランスまで
歩いて行く。今度、玄関にいたのは。
「こんにちはー!」
「おう……」
アイシャの言う通り、額に三日月マークのある白いネコを連れ、
セーラー服を着て頭に赤いリボンを着けた女の子。
「はじめまして!あたし、愛野美奈子!中学一年生です!
あっ、こっちの変なオスネコはアルテミスって言います!」
(……変なネコは余計なんだよ……)「にゃ~お……」
何だか不貞腐れた様に、白いネコ、アルテミスが一声鳴いた。
「俺はジャミルだよ、ま、一応、此処のマンションの管理人さ……」
「私はアイシャ!宜しくね!うふふ、アルテミスも宜しくね!」
「にゃ~お……」
アルテミスがアイシャにすり寄って来た。
「わあ、ジャミルさんて、学生さんなのに、もう管理人さんを
していらっしゃるんですねっ!」
「……へ?あ、あの、俺、一応これでも成人者なんだけど……、20歳だよ、
いつもの事だけどさ……」
「はい?……う、うっそ!」
美奈子はそう言いながら、ジャミルに近寄って行き、……ジャミルの顔を
じろじろ見た。
「……マジ?」
「美奈っ!……え、えと、にゃ~お!」
「あ、あらっ、やだ、アタシったら!やあ~だあ!あーはははは!
ですよねえー!んなワケないですよねえー!」
「……」
ジャミルとアイシャは、頭掻き掻き大口を開けて高笑いする美奈子を
呆然と見つめていた。どうやらこの彼女も、外見だけ見れば立派な
美少女だが、かなり癖のある予感しかしなかったからである。
「おい、アイシャ……、部屋、彼女も2階がいいな、女の子達、
集まってるから……」
「うん……、じゃあ、美奈子ちゃん、2階のお部屋に行きましょ?」
「はあーいっ!んじゃ、管理人さん、またあとでーっ!」
「……」
美奈子とアルテミスはアイシャに連れられて、2階へと歩いて行く。
「そっか、あの人、あたしより年上なんだ……、で、でも、何か、
あれはパス……、あたしの好みじゃないわ、……それになんか、
全身からアホとおバカ、加えて思いっきりおドジのオーラが漂ってる……」
「……み、美奈……!君はっ……、人の事言え……、にゃーーおっ!」
「あの、美奈子ちゃん……?」
「あ?はい……?えっ?い、いえ、何でもないですよ!あーはははは!
あーはははは!」
「……びえーーーえええっ、くしっ!!」
美奈子を不思議そうに見つめるアイシャ。その後ろで、ジャミルが
思い切り大きなくしゃみをした……。そして、美奈子がやって来た
その翌日の日曜日の早朝に早速騒動は起きるのである。
「じゃあーんっ!美奈子のイケメン捕獲大作戦!決行よっ!
ぜーったあいにっ!此処でいい男をゲットしちゃうんだからっ!」
「……美奈っ!いい加減にしろっ!君は本当に正義の戦士、セーラーVとしての
自覚があるのかっ!」
「アルテミスっ、うっさいっ!……他の部屋のコが起きちゃうでしょっ!
いいのよっ、この島に来たからには、ゆっくり寛がないとっ!何せ、
黒子さんに変身ペンもみんな没収されてんだからね!この島は平和だから、
そんな物必要ないんだってさ!だからあたしだってちょっとぐらい、此処に
いる間はハメ外したっていいのっ!」
「羽目はいつも外してるだろっ!」
「……う、うっさいって言ってるでしょっ!」
「わん?おしゃべりネコさんだあー!こむぎのおともだちにも、おしゃべりが
できるまっしろなネコさんがいるんだよ、ユキっていうの!」
「……ニャーーーッ!?」
「あ、あら?」
いつの間にか、子犬モードのこむぎ登場……。
「よかったわねえー!アルテミスっ!普通に喋るワンちゃんも
いるんだから、アンタも此処で自由にして口聞いても大丈夫みたいよ!
んじゃ、こむぎちゃん、悪いけど、アルテミスと一緒に遊んであげて
くれるかしらー?」
「わーい!いっしょにあそぼー」
「ちょ、ちょちょちょちょ!……美奈ーー!こらーーー!!」
美奈子は口に手を当て、黒い笑みを浮かべると、こむぎにアルテミスを預け、
そのまま逃走した……。
「あー、良かった!もう此処って何でも自由よね!アルテミスったら
うるさいんだもん!よーしっ!待っててねー!あたしのイケメン王子様達ーー!!」
……そして。
「……」
「グレイ、お出掛けするの?気を付けてね……」
「ああ、……しかし、何だか恐ろしい視線を感じる……」
エントランス付近でしゃがみ込み、じーっとグレイとクローディアを
見つめている変な視線。
「あの……、昨日新しく入った方……、だったかしら?確か……」
作品名:zokuダチ。セッション4 もっと増えます住人さん編 作家名:流れ者