zokuダチ。セッション5 騒動もっと盛り沢山編
「こ、今度は……、腰をひねっちまった……」
「……おーいー……」
と、其処に……。
「ジャミル……、何してるの?お客様は?あんまり戻って来ないから、
どうしたのかと……」
「アイシャ、助けてくれ……、動けねえんだ……」
「は……?」
アイシャは奇妙な体制で寝転がったままのジャミルを見つめた……。
「ははは、可愛いお嬢さん、わりいねえー!良かったら……、
起して貰えっと有難いんだがね……」
アイシャに手を貸して貰い、二人は漸く転倒から立ち直った。
「助かったよ、アイシャ……」
「いやー、わりい、わりい、ほんっと、俺ってあわてんぼさん!」
ラグナが笑いながら頭を掻いて誤魔化した。
「笑ってる場合じゃねーっつーの……」
「大丈夫ですか?……あの、あなたが新しく此処に入る人ですか?」
「そっスー!俺はラグナ!宜しくね、可愛いお嬢さん!!」
「あはは、私はアイシャです、此方こそ……、宜しく……」
「……」
ラグナがアイシャに握手を求めたのを見て、何となくジャミルは
面白くなさそうな顔をする。
「あ?焼きもち妬いてんのかい?ブン剥れちゃってー!かーいー事!」
「お、俺は別に……」
「安心しなって!俺、所帯持ちだかんね!奥さんも愛しの我が子も
ちゃーんと、いっからさ!」
「……はあ!?き、既婚者!?」
「!!!」
「さって、足の調子も戻ったみたいだし、俺、部屋に行ってみるわ、
んじゃ、まったー!」
「……」
今度こそ、ラグナはちゃんと階段を一人で登って行ったが……。
……ドンガラガッシャーーンッ!!
2階の途中で、恐らく、彼が又何かにぶつかった音らしく、
物凄い音がした……。
「まーた、ワケわかんねー奴が増えたな……、何で此処に住むんだ?
奥さんも子供もいるのに……?」
「人にはそれぞれ、色々な事情があるのよ、それよりも……」
「……?」
アイシャがジャミルの顔をじーっと見る……。
「ピザの注文権利、私のにしてーーっ!チーズダブルね!!」
さっき、アイシャに助けて貰った手前、……逆らえないのであった……。
「分ったよ、部屋に戻ろう……」
「わーいっ!やったね!!」
「……ハア~……」
「どいたどいたアーー!イケメンはどこじゃーーっ!?」
「……美奈ーーーっ!!」
美奈子が廊下をドタドタ走って行き、アルテミスが追い掛ける。
……また、ジャミルの気苦労が始まりそうである……。
ジャミル、又構われる
「……う~ん……」
その日、ジャミルは部屋で悩んでいた。右の奥歯が何となく、
ズキズキしてきた様な……、しない様な……、訳分らん、
変な感じがしたからである……。まさか、虫歯ではないだろうと
思いつつ……、ちゃぶ台の上にあったピーちゃん豆を摘んで口に入れる。
「……っ!」
咄嗟に、右の頬を押さえるが、やはり少しやばい感じがしていた……。
「やばいかな……、けど、虫歯じゃねえよな、……虫歯じゃなかったら……、
この歯の痛みは……、やっぱ虫歯なのかな……」
「ジャミルっ!差し入れだよお!塩豆大福!!」
いつもの如く、ダウドが元気に勝手にドアを開け、部屋に入って来る。
「お前な……、わざとやってんじゃねえのか……、人がこんな時に……」
今のジャミルの状態など分からないダウドは少しムスッとする。
「何だよお!折角、おすそ分け持ってきたのに!要らないの!?
要るの!?どっちだよお!!」
ダウドは嫌味ったらしく、ジャミルの目の前でわざわざ塩豆大福を
齧って見せた。
「ああー!おいしいなあ~!!この、ちょっと塩甘しょっぱな
感じが最高!!」
「食べるから……、台の上に置いといてくれよ……」
「分ったよお……」
「……」
「何だよ……」
ダウドはジャミルが大福を口につけるのを只管待っている様であった。
「食うよ、今食えばいいんだろ、食えば……」
仕方なしに、大福を一口、口に入れるが、甘しょっぱいのが余計に
痛む歯の箇所をズキズキと刺激するのであった……。
「おいしい?」
「美味いよ、……サンキュ……」
「えへへ!んじゃ、オイラはこれでー!」
ダウドは何故かご機嫌で部屋に戻って行った。
「変な奴……、嫌、変なのは昔から分かってるけどな……、それにしても……、
っつ……、この歯の痛みをどうにかしないと……」
……鏡で自分の顔を見てみた処、さっきより、頬が若干少し腫れてきた
様な感じであった。
「ますますやべえぞ、これ……、絶対大福の所為だな……、
バカダウドめ……、これじゃ俺が大福になっちまうわ!
こんなの特にアイシャにでも見つかったら……、歯医者に絶対連れて
かれるっつーの……、……歯医者のアイシャか……、プ……」
例え大人でも、何歳になっても、嫌な物は嫌なんである。
「私がどうかした!?」
「……うわーーっ!!」
いつの間にか、アイシャが隣にちょこんと座っていた。
「何よ、そのリアクションは……、今日はね、チビちゃんも遊びに来てるのよ!」
「チビ……?」
「きゅぴっ!久しぶりー!今日はお届けのお仕事お休みなのー!
だから遊びに来たよー!!」
アイシャの膝の上で、チビがパタパタ尻尾を振った。
「そうか、はは、ははは……、まあ、ゆっくりしてけよ、大変だよな、
郵政も大赤字なんだろ……?」
「ぴ?……くんくん、くんくん……」
チビが急にジャミルの側を飛び回り……、何故かニオイを嗅ぎ始めた……。
「やだっ!ジャミルってば!またおならしたの!?」
「何だよ!してねーよ!……一時間前にしたけどさ……」
「きゅぴ……、何だかジャミルから怖いニオイがする……、
何処かなあ……?……バイ菌さんのニオイ……、くんくん、くんくん……」
「!!」
「……え……?」
「な、何でもねえよ、それよりチビ、塩豆大福食うか?美味いぞー!」
「きゅぴっ!おもちだあー、食べるー!うわあーい!!」
ジャミルは大福でチビを釣り、……どうにか虫歯から遠ざける……。
「おいしー!おいしーねえ!!きゅぴきゅぴー!」
「ほっ……」
「……ジャミル、何か隠してる……」
「だから、何でもねえよ、ほらほら、お前も塩豆大福食えよ!」
アイシャにも慌てて大福を差し出すが、アイシャは不満そうに
首を傾げた。
「……食べたいけど、お昼食べたばかりだし、後で貰うね、
それじゃ、私達も……」
「帰るのか?ま、又来いよー!」
「きゅぴ、またねー!」
アイシャはチビを抱いてジャミルの部屋を出て行った。
「……ジャミルったら……、絶対何か隠してる……」
「ぴい?」
廊下を歩くアイシャは、ジャミルの態度が不振でどうにも
気に掛かっていた。
「……よう、アイシャ……」
「あ、グレイ、こんにちは!」
「また、あいつの処か?……どうした?何か不満そうだな……」
「うん、ジャミルね、何だか具合悪そうだったの……、
歯を押さえてたわ……」
「歯……か、歯……、……アイシャ、ちょっと其処で待っていろ……」
「?」
作品名:zokuダチ。セッション5 騒動もっと盛り沢山編 作家名:流れ者