zokuダチ。セッション5 騒動もっと盛り沢山編
「ふふ、はーちゃん、嬉しそう……」
廊下で二人のやり取りを聞いていたアイシャはくすっと笑った。
「お姫様……、ね……」
「ちょっと、ジャミルっ!どうして私の方見て溜息つくのっ!?」
「……いでで、いででで!コラやめろっ!オメーもちょっとは
大人しくしてねえと、嫁の貰い手ねえぞっ!!」
「ふーんだ、大きなお世話ですっ!なーんでジャミルがそんな
心配すんのよっ!バカっ!!」
(てか、あの時……、ことはが確か変身した時、口調がそれこそ
変わって……、まるで別人みたいになったけど……、本人は
自覚してないんだろうか……)
「何よ、ジャミル!」
「だから、何でもねえよ……」
「そうだ!お洋服屋さんに新しいの入荷したかなあ、ねえ、
行こうよーっ!!玉にはおしゃれしたいのーっ!女の子だもんっ!」
アイシャがジャミルの腕をぐいぐい引っ張った。
「……あてて、俺は女じゃねえから、どうでもいいよ……」
「何よ、どうせまた女装するんでしょ!?」
「……するか馬鹿!」
「おい、ジャミル、昨日、クローディアの付き添いで、俺も洋品店に
足を運んだが、結構新作が入荷していたぞ……」
「ほんとっ、グレイっ!?」
アイシャはキラキラ目を輝かせる。
「たく、余計な事言うなよな……」
「ああ、アホのお前にぴったりの新作だ、大銀杏とマワシのセットだ……、
買い得だぞ……」
「っ!!うるせーこの糞グレイめっ!!はよ向こう行けっ!アホッ!!」
ジャミルがグレイに向かって蹴りのポーズを入れると、グレイは
ニタニタ笑いながら姿を消した。
「むっかーっ!相変わらず腹立つゥ……!!」
「ねえ、ジャミルもずっとその野球帽子、被りっぱなしでしょ?
玉には帽子脱ぎなさいったら!……はげるよっ!!」
「おめえもうるせえっての、大きなお世話だっ!」
「ぶうー!それじゃ、新しい帽子も買いにいこ?うん、決まりーっ!
折角だから、又4人で行こう、私がアル呼んで来るから、ジャミルは
ダウド呼んできてね!」
「……おいおいおいおい、どうしてまたそういう……」
「何、ジャミル、オイラ呼んだ?何処か行くの?」
「いや……」
「お待たせーっ、アル連れて来たよーっ!」
アイシャがアルベルトを引っ張って連れて来た。尚、アルベルトはもう
騒ぎに巻き込まれる回避を諦めた様子。
「じゃ、4人揃ったね、それじゃ洋服屋さんとお帽子屋さんへ
しゅっぱーつ!」
……アイシャが仕切り、4人は買い物へ……。
「…洋服もインテリア同じく高いねえ~…」
ダウドが何万円の洋服を見つめる。
「いらっしゃいませ、ドナルドだよっ!今日はね、バイトで
来てるんだ、君達も一緒にらんらんるーしようよっ!」
「……お前の言ってる事は毎回意味が分かんねえんだけど、頼むから
ゆっくり見させてくれ……」
「ねえ、アルはどんなのがいいの?」
「……うーん、実家から持って来た私服と比べると、ちょっと
地味かなあ……」
「けっ!ボッチャマがよ!」
「あ、ジャミル、これこれ、いいのがあったよお!ジャミルにぴったり!
90年代newツッパリセット!」
「……だから、もうそれも、いいっつんだよっ!」
「……あいたっ!」
ダウドの頭を思い切りぶん殴るジャミル。
「あっ、これこれ……」
「?」
「お嬢様ワンピ、これ着たら……、私もお嬢様みたいに
なれるのかなあ……」
アイシャはワンピースを抱きしめて、夢見る様にうっとりする。
「……プ、やめとけやめとけ、こっちのプロレスコスの方が似合うぞっ!
それとも、こっちのハゲカツラ&腹巻セットの方がいいんじゃね?」
「……ちょ、ジャミルっ!」
「あ、ああ~、又、アイシャが怒るよお~……」
「ははははっ!は……」
「……」
アイシャは無言でジャミルにズンズン近づいていくと……。
「どうせ私は……こんなの似合わないわよっ……、何よっ!
意地悪ジャミル!!……大っ嫌いっ……、ばかあーーーっ!!」
「……ぶわっ!!」
アイシャはジャミルに向かってお嬢様ワンピを思いっきりぶつけると
泣きながら店を飛び出して行った。
「こ、コラ待てアイシャっ!!」
「……今のは完全にジャミルが悪いよお~……、幾ら何でも……、
女の子に対してハゲカツラセットは酷いよ……」
「泣いてたよ、アイシャ……、謝りなよ、ちゃんと……」
「知らねえよ、フ、フン、すぐ泣きやがる……、だから女は
嫌なんだよ……、つまんねえ事でメソメソしやがって、冗談も
分かんねえのかよ……」
「それ、ちゃんと買ってねえー!じゃないと、ドナルドが
怒られちゃうからねえー!!4800円だよっ!!」
「分ったよ……、でも、値段が10000円いかなくて助かった……」
……結局、残された男衆3人は帽子屋にも寄らず、そのまま
マンションへと無言で帰宅した。
……部屋に戻ったジャミルは只管寝転んで数時間、ふて寝していた。
「……何だよ、アイシャの奴……、けど、駄目だなあ、俺って……、
どうしても……、なんつーか、見てるとからかいたくなるんだよなあ~、
それはその……、あいつが……、ボショボショ……、可愛いから……、
……あーーっ!何言ってんだ俺はーーっ!!」
「ジャミル、うるさいんだけど、オイラの部屋まで奇声が聞こえる……」
ダウドがのそっと部屋に入って来る。
「悪かったな、静かにすりゃいいんだろ……」
「どっこいしょ……」
ダウドはジャミルの側に正座するとジャミルの顔を見た。
「別にオイラは説教する気も何もないけど……、ただ、此処で
愚痴ってるよりはアイシャにちゃんと謝って来た方がいいと思うよ……」
「……」
「聞いてんの、ジャミルっ!!」
「ちょ、おま……、何だよ、又そのスリッパは!!」
「アルから借りて来た、早く謝りに行かないと……、叩くよ!」
「分ったよっ!たくもうっ!!」
ダウドに脅され、ジャミルは仕方なしにアイシャの部屋まで向かった。
(……最近ダウドの野郎も急に牙を向く様な……、何かの前兆かな……)
そして、アイシャの部屋の前に立つ。
(まだ怒ってんだろうな、相当……、いつもなら、すぐ笑って機嫌も
直ってる頃だけど、……今日は……、……はあ……)
踏ん切りが付かないジャミルはアイシャの部屋の前でウロチョロ
ウロチョロ……、これでは変なストーカーである……。
「今日は、止めるかな……、もう寝てるかも知れないしな……、
止めよう、うん、今日は止めよう!」
と、あっさり引き下がろうとするが……。
「……っとっ!!」
……何故か廊下に置いてあったバナナの皮で滑り……、思いっ切り
転倒した。
「……誰だっ!んなとこにーっ!!」
「俺だ、悪いな……、つい……、何かつい捨てたくなっちゃうんだな、
皮……」
正面を見ると、ユリアンがバナナを食べながら歩いていた。
「テメエかっ!この緑バカーーっ!!」
「……」
「あ……、アイシャ……」
……罵声に釣られ、アイシャが部屋のドアを開けて、ちらっと
廊下を見る。
「あのさ、アイシャ!さっきは……」
作品名:zokuダチ。セッション5 騒動もっと盛り沢山編 作家名:流れ者