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Tパロ

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エルムドアというのはこの地を治める侯爵家である。
その屋敷に迎え入れられたセフィロスは当主メスドラーマの肖像画を見上げた。騎士甲冑を身につけた銀髪の男の姿が描かれている。
「本当に瓜二つにございますな」
髪の色しか共通点がないとセフィロスは思うのだが、家令の男はしみじみと見つめてくる。
さすがに彼は自分の仕える当主とセフィロスを見間違えることはなかった。
「セフィロス様とおっしゃいましたな……家名もなく見知らぬ土地にあっては何かと不便でしょう。主に代わり侯爵家にてその身を預からせてはもらえませんか」
侯爵、つまりは貴族。セフィロスの知る時代にはそのような身分制はすでになく、物語の中でのみ確認できる特権階級だ。それが何の下心もなく世話を見てやるというのは見え透いた甘言だと断言できる。だがこの世界の知識を集めるには都合がいいかもしれない。ジェノバの力を行使できないセフィロスは自力で情報を集める必要があった。市井に紛れるよりも階級社会のほうが効率的に収集できると踏んで、セフィロスは答えた。
「……何が目的だ?」
「我が主、メスドラーマ様の跡継ぎが決まるまでの間、侯爵家の名代を務めていただきたい」
「当主に成り代われと?」
「本人に成りすませとは申しません。メスドラーマ様は貴方よりも十は年嵩です。逆ならばまだやりようがありますが、当主が突如若返ったなど、悪魔に組したのかと疑われる。敬虔なグレバドス教の徒である公にそのような疑惑はあってならぬのです。ですから、メスドラーマ様の血縁者として滞在していただきたい」
大河と湿地に育まれた広大な沃土、南方には軍港を所有するランベリー地方を治める貴族。かつての戦争では銀の貴公子とも銀髪鬼とも恐れられたエルムドア公。その彼が行方不明だと公爵家家令は言った。亡くなったのならともかく、行方不明の時点で跡継ぎを決めるのは尚早ではないのか。貴族の内情をあっさりと開示され、セフィロスはいぶかしんだ。
「跡継ぎが決まるまでと言ったが、公本人が戻ってきたらどうする?それとも遺骸が見つからないだけで死んだと断言するのか?」
「……仮にご無事であっても、次にこの屋敷に戻られたお体が真に公のものなのか私どもには判断がつかぬ。今、この地は国賊、異教徒の皮を被った悪魔の侵略を受けているのです。セフィロス様は悪魔を知っておられるか?奴らは変身し生前の姿で戻り、土地のすべてを食らいつくして次の土地へ向かうのです」
それはまるでジェノバの生態ではないか。家令の男はセフィロスをそれと知らず家へ招きいれようとしている。そんな皮肉にセフィロスの口角が上がる。俄然やる気が湧いてきたのだ。
「……名代の件は引き受けよう。その代わり、私には探しているものがある。用立ててもらえるか?」
どうあれ、セフィロスのやることは変わらない。利用しようと手を伸ばしてくるものを利用し返すだけだ。



そうしてセフィロスはエルムドアの家名を得た。身罷った当主の名代を務めるためにランベリーへ舞い戻った、当主メスドラーマの腹違いの弟……という家令の設定に則り、セフィロスは貴族として生活する傍ら、情報収集に勤しんだ。国の情勢はそこそこに、本題は元の世界へ戻る方法と、ジェノバの力の行使についてである。
家令の言っていた悪魔――ルカヴィがこの世界におけるジェノバではないかと予測を立てていたが、どうやら間違いらしい。ルカヴィは太古から伝わる異形の者たちを指す。彼らはジェノバと同じく人間を異形に転じさせるが、ジェノバと異なるのはコピーも再結合もせず、異形を従え群れを成すということだった。セフィロスの知るジェノバは大空豪に墜落した一体のみだが、ルカヴィは原初十二体からなる魔の種族と伝承されている。ここまで生態が異なるのならば、別種だと判断すべきだろう。
ジェノバの力を行使できないのは不便だが、セフィロスにとっては後天的に得た力でしかない。それは一旦置いておくことにして、なぜ自分がこの世界に来ることになったのか、どうすれば戻れるのか、その方法を探ることにした。星に生きる命の情報すべてを内包するライフストリームならば世界を跨ぐ転移が可能であろうことは分かるが、この世界に類似事象は見当たらなかった。セフィロスのような稀人の記録を探るも、そもそも陸と海を越えた先の他国のことすら異界のごとく扱う記録が多く、手応えがまるでなかった。しかしこの世界の成り立ちは興味深かった。特に召喚獣はセフィロスの知るそれの名と同じ名前で呼ばれていた。全く異なる文明から類似点を見出し小さな点をか細い理解という線で繋ぐ作業は成果の見えない作業を少しだけ慰めてくれた。

作品名:Tパロ 作家名:sue