zokuダチ。セッション7 夏はすぐ其所編
「分ってるよっ!たく、……人をモジャ公みたいに呼びやがって!」
……時間が立つにつれ、風の強さと雨の量はどんどん増していく。
「こらあ、急がねえとな、風が大分強くなってきやがったな……」
視界もどんどん悪くなり、只管板を打ち付けるホークも苦戦気味であった……。
「お?お?お?お……」
体重の軽いジャミルが強風で屋根の先までおっとばされ、屋根の上から
落ちそうになる……。
「……うわわわわっ!!」
「ジャミルっ、危ないっ!!」
ユリアンが落ちそうになったジャミルの手を掴んで引っ張り、事なきを得た。
「はあ、間一髪……」
「助かった~、ユリアン、サンキュー……」
「……一度落ちて頭でも打った方が頭も良くなったんじゃないか……?」
「んだとお……!?こんの、クソグレイ……!!他人事だと思ってからに……!!」
「……いい加減にしろ!おめーら!!」
と、流石にホークもブチ切れ掛けた処で……。
「……キャプテン、雨が止んだみたいです……、ぎゃ……」
「……お?本当だな、風も段々と弱まってきたな……」
「峠は越したか……、大した事が無くて良かったよ……」
「本当だな……」
トーマスとユリアンも、すっかり暗くなってしまった夜空を見上げた。
「あはははっ!天気予報なんかアテになんねーっつの!」
「こ、こらっ、ジャミルっ!駄目だぞ、そんな恐ろしい事を言っては……、
……き、気象予報士の……、〇田さんが飛んでくるぞ……」
ユリアンは真顔でジャミルに詰め寄る……。
「おいおいおい……」
「さーて、丁度、板も打ち付け終わったし、よし、そろそろ降りるかーっ!!」
ホークも肩を押えてコキコキ鳴らした。と、お疲れ男性陣が
作業を無事終えようとした処に……。
「あーーーれええーーっ!!」
「……!?」
……何者かが、屋根を突き破り、今度は屋根の違う箇所に大穴を
開けた様であった……。
「……あてててて」
尻を押え、屋根の上に飛んで来た呻く巨大な物体……、近藤であった……。
「また、大穴が……」
男性陣はあっけにとられ、再び屋根に開いた巨大な穴を見つめた。
「……すみませーんっ!そちらに近藤君が飛んでいかなかったでしょうかー!」
穴の下から声がした、……谷口であった……。
「いるけど……」
力なく、ジャミルが返事を返す……。
「本当に、申し訳ありません、俺の監視不足で……、又、丸井が
やらかしまして……、も、申し訳ありませんでしたっ……!!」
「……すいません、谷口さん、つい、カッとなって……」
「謝って済む問題じゃないぞっ、丸井っ……!!本当にもう……!!」
穴の下を覗くと……、ペコペコ頭を下げ、只管謝罪する、谷口と
イガラシの姿があった……。
「あてて、……丸井はんのキックの破壊力は半端ではないんやで、アタ……」
「……あはは、気象予報士は飛んで来なかったけどな……、あは、あは、
あははは!!」
「……おい、ジャミル……」
「あは……?」
ヤケクソ気味に只管笑い飛ばすジャミルの処にホークが……。
翌日……、昨夜の嵐は何処へやら……、空はからっとした
青空が広がっていた。
「……しっかり板押さえろよっ!!近藤っ!又、ケツ蹴飛ばすぞっ!!」
「あわわ、そんな、殺生な~、もう、堪忍してーな……」
「……てめーら責任もって真面目に屋根直せよっ!!……未成年
労働保護で監視してる俺の身にもなってみろっつーんだよっ!!」
これは、あくまでも、青少年職場体験学習の一環……、という事で、
ホークがジャミルを丸井と近藤の担当教員役を押し付けたのであった。
「なーんかさ、あんた見てると……、やっぱどうにも年上に思えねーんだよな、
おれっち……、あんた本当に成人してんのか?」
丸井が横目で時折、ジャミルの方を見る……。
「うるせー!とっとと直せっ!!この三角おにぎり頭っ!!」
「……ジャミル、また吠えてる、屋根の上で……、はあ、御近所中に
聞こえるよお……」
ダウドが心配そうに屋根の上で吠えている友人の姿を見上げた。
「うふっ、お仕事終わったら、ジャミルにお疲れ様のおにぎり食べさせて
あげちゃおーっと!頑張ってねーっ!!ジャミルっ!!」
「モフルンのラブいっぱいのにぎにぎおにぎりも食べて欲しいモフーっ!!」
……見た目最悪のぐちゃぐちゃおにぎりを持ち、エールを送る
アイシャと……、毛だらけのおにぎりを持って、モフルンも
ジャミルにエールを送った……。
「私達のも食べて貰おうね、こむぎ!」
「わんわん!ジャミルに元気つけてもらわなくちゃね!」
「……うわ……」
上では、生意気な喋るおにぎりと……、下では破壊おにぎりが、
それぞれジャミルに待ち構えていたのであった。
レトロゲームの世界で・1
今日はダウドがジャミルの部屋に面白い物を持って来る。
懐かしのオールドファミコン。今、レトロゲームブームで
ソフトの中古値段が葛藤している。又、闇鍋福袋で当てたらしい。
「……ふーん、珍しいな、どれ、ソフトはあんのかよ」
「中古品で、一つだけおまけについてた、裏に名前が書いてある、
やまだたろう、だって」
「どうでもいいよ、……グーニーズ2ね、ま、いいか」
早速、テレビにファミコンを繋ぎ、ソフトをセットする。
……しかし二人は忘れていた。この話では絶対に碌な展開に
ならないのを……。案の定、無理矢理ゲームの中に吸い込まれた……。
「おーい……、って、何処や、此処……」
「フハハハハ!」
「!?」
突然、ジャミルの前に巨大なモニターが映し出され、中には
厚化粧の赤髪のオババが。
「……ダレガ オババダ!グーニーズ ショクン、ヨクモ、
オレタチ イッカヲ ロウヤニ ホウリコンデ クレタナ!!」
「知らねえし!急に2からだし!」
「コノオレイトシテ オマエタチノ ナカマ ニンギョノ
アイシャハ オレタチガ アズカッタ!!
……カエシテ ホシクバ、ワレワレノ アジトマデ
ヒトリヅツコイ!!ハッ、ハッ、ハッ!・ ・ ・」
(台詞うろ覚え)
「あ……」
モニターの中のギャング・オババーラ一家のボスが喋るだけ喋ると
映像が途切れた。
ピーッ……
「な、何だ?トランシーバー?こんなの……」
『……あのさ、ジャミル、オイラだけどさ……』
「ダウドか……?まあ、考えたってお前しかいないよな……」
『……何かさ、今、捕まっちゃったんだよね、どうやら、
このゲームクリアしないと元の世界に帰れないみたいだよお……、
だからっ、早く助けに来てよね!んじゃ!』
「……早速捕まってんじゃねえよ、たくっ!」
怒りながら、正面にあった扉を抜けると、汚い屋敷らしき場所に辿り着いた。
「別に、あんさんに恨みはないんやけど、死んでもらいまっせ!
ちなみに、ワイが大活躍のキャプテン2、絶賛連載中やで、応援
よろしゅう!」
「……おい、さりげなくこの場で宣伝してんじゃねえよ!このデブ!」
いきなり、歯の掛けた図体のデカいギャングが襲い掛かって来たが
取りあえず、持っていたヨーヨーで試しにデコを撃ってみると。
作品名:zokuダチ。セッション7 夏はすぐ其所編 作家名:流れ者