zokuダチ。セッション7 夏はすぐ其所編
「……この下にも通路があんのか、……生身じゃちょっと無理だなあ……」
今は諦めて、元来た扉を通り、一旦外へ出る。ブロリーはいなかった。
また出て来られても困るので、ジャミルは、此処の場所からさっさと逃げる。
漸く、別の方の氷雪ルートを見つけ、二人目の困ったちゃん、アルベルトを救出。
「はあ、……何で僕がこんな……、ジャミルっ!君……、
又何かやったね……!?」
「……知らねえよっ!バカダウドが福袋で当てたファミコンを付けたら
こうなったんだよっ!」
「何でもいいから、責任とって他の仲間も救出してくれる……?
じゃあ、僕はこれで……」
アルベルトは頭を抱えながら、フラフラと消えて行った。
相当疲れている様子。当り前だが。
レトロゲームの世界で・2
別ルートで、苦労して潜水服を手に入れたジャミルは、もう一度、
氷ルートに有る部屋に戻り、海底の隠し通路を進むのであった。
……ちなみに、潜水服入手時点ルートで、ちゃっかりと捕まっていた
緑バカを救出しているので残り、後3人である。ちなみにユリアンは
牢屋で平然と鼻提灯を出し、爆睡していたのであった。
「……うはあ、結構楽しいなっ!息も苦しくねえし!」
仲間を探すのも忘れ、呑気にちょっとしたダイビング気分である。
道中、襲い掛かってくるサメやタコなど水中銃で撃ちながら進み、
ゲーム感覚でスリルあるモンスターハントも楽しんでいる。
ピ~ッ……
「あんだよ……、もしもしっ!」
水中でも平気で、トランシーバーから通信が入る不思議。
『……ちょっと、ジャミルっ!アンタ何遊んでんのよっ!
早く助けに来なさいよっ!!このアホッ!!』
「エレンか?……何だよ、珍しいな、お前が捕まったのか……?」
『珍しいも何も、勝手に牢屋に入れられたんだから仕方ないじゃないのっ!
この鉄格子、蹴っても折り曲げようとしても何しても駄目なのよっ!!
……だからさっさと早く来てよねっ!!』
……ピ~……
「はあ、この近くにいるのかな、あそこにも扉があるけど……」
……ドナルドマンの所為で、ジャミルは扉恐怖症になりそうであった。
「……ふうっ!はあーっ、やっと着いた、此処にいてくれると
助かるんだけどなあ……」
一旦、潜水服を脱いでポイし、部屋の探索へと駆り出す。
「とにかく、このゲームの基本は叩くだよな、……叩け、叩け!
叩くべしっ!」
拳でガンガン、そこら中叩きまくると、何故かハシゴが出てくる。
ついでに特に意味もなく、他にも何か出ないかと更にハンマーで
ガンガン……。
……ちょっとっ!誰よっ!ガンガンガンガンうるさいわよっ!!
叩きまくると天井の方から、キャンキャンけたたましい声がした。
「その声、エレンか?」
「ジャミルっ?アンタ、来てんのなら早くしなさいよっ!この上よっ!」
「へえへえ、……よっと!」
天井にハンマーをブン投げて穴を開け、其処にハシゴを掛け、上へと登る。
「やっと来た!遅いわよもうっ!んじゃ、あたし帰るからね!じゃっ!」
忙しいと言う様に、エレンもさっさと退場し、その場から消える。
「ハア、後2人だよな……、たく……」
ブツブツ言いながら、もう一度潜水服を着用し、海の中へと戻った。
……そして、再び地上からあっちゃこっちゃ移動して周り、
別の屋敷ルートを抜ける。巡り巡った部屋の先に、又もワープの番人、
美奈子が待っていた。
「……ま~たお前か……」
「もうっ!グレイさん逃げちゃったのよっ!……早く捕まえて来ないと
この下の潜水ルートは通さないわよ!」
「んな事言ったってよ……、仕方ねえ、戻ったらアイドル雑誌
買ってやるよ、確か、今月の平凡は、月野源太郎のヌードピンナップが
付いてたな……」
「仕方ない、今回はそれで手を打ってあげる、さあ、通ってっ!」
美奈子は手をポンと打つと何処かへすっ飛んで行った。
「……何だあいつ……、はあ、んでもって、又此処潜るのか、いい加減で
風邪引きそうだわ……」
そしてついに5人目の拉致被害者、いろはを発見したが。牢屋の中で
犬こむぎと一緒に呑気におやつを食べていた。
「もしもーし、助けに来たよ、……おい、大丈夫か?」
「あ、ジャミルさん!もう、大変でしたよっ、お部屋でこむぎと一緒に
おやつ食べてたらいきなり牢屋の中に閉じ込められちゃってえ~……」
「わんわん!ひどいわん!こむぎ、ブーブーだわん!」
「……寝てる奴も凄かったけどな……、これも大物の毛が……、んで、
こむぎ、お前は犬か、ブタか……」
「……はい?なんですか?」
「なんだわん!?」
「おおうっ!?とにかく牢屋から出ろよ、もうお前らは元の世界に
戻れるからよ」
「そうなんですか、でも、ジャミルさんは帰らないんですか?」
「……戻りてんだけど、まだやる事があってよ……」
「そうなんですか~、じゃあ、私達帰りますけど、どうか気を付けて下さいね」
救出されたいろははこむぎを連れ、元の世界に帰って行く。
いろは達を見送ったジャミルはその場に座り込んで溜息を
つくのであった。
「……一服するかな、あ、もうライターが切れた、ロウソクで
終わっちまったか、……とほほ~……」
そして、海底から再び地上へ戻り、今度は溶岩地帯ルートへと進む。
「……これで、最後に捕まってるのが又グレイだったら草生えるっての、
プ……、牢屋にいたら笑える……、笑ってやる……」
しかし、最後の拉致被害者は、少年であった。人物的に、捻くれマンと
性格の悪さはグレイと同じ様な物であったが。
「……僕に構わないで……」
「そうかい、んじゃ構わないよ……、と言いたい処なんだが、
全員救出しないと俺も此処から出られねーし……、お前、ずっと
其処にいるか?」
「……今日は少しだけなら……、構って……いい……」
「はあ、んじゃさっさと出ろよっ、たくっ!」
「……」
少年は救出され、無言でその場を立ち去るのであった。
「……取りあえず、これで全員救出は出来たけど、後は肝心のアイシャが
何処に捕まってんだか……、んとにっ、良く捕まるお嬢さんだことっ!」
ピーッ……
と、再び、トランシーバーで通信が入る。
『……ジャミル?私、アイシャよ……』
「アイシャか?捕まってた仲間は全員救出したんだけどさ……」
『……ほんとっ、じゃあ、もう私の処まで来られる筈だよっ、今、ジャミルは
何処にいるの!?』
「又、違う屋敷ルートに来てる……、結構、裏の方の裏の……、
……うらうらうら?……訳分かんなくなってきた……」
『ジャミルの声、どんどん大きく聞こえてるから、
そんなに場所ももう遠くないよっ、あ、あのねっ!』
と、言った処で、急に通信が途切れた……。
「アイシャっ!?おい、どうしたっ……!」
「ハハハハハ!!」
……正面を見ると、黒服背広、サングラスのギャング子分を
従えたオババーラ一家が扉の前に立ち塞がり、ジャミルを見下し、
ニヤニヤ笑っていた。
「……相変わらず、化粧濃いなあ~……、香水の匂いもスゲエんだけど……」
作品名:zokuダチ。セッション7 夏はすぐ其所編 作家名:流れ者