zokuダチ。セッション8 さらにトラブル続発編
怒鳴ルドは、近くにあった本棚に思い切りぶつけられ、落ちてきた
本の下敷きになって埋もれてしまう。
「すごおおーい……」
園児達は顔を赤くし、エレンを尊敬の眼差しで皆見つめている……。
「ふんっ!大した事ないわっ!!」
エレンは手をパンパン叩き、腕組みをして怒鳴ルドを睨んだ。
「おーっ!エレンっ!かっこいいぞおーっ!!」
ユリアンもエレンに大声援を送る。
「はっはーっ!……怒鳴ルドはね、こんな事ぐらいじゃまいらないのさ、
はっはーっ!!がおーーっ!!」
本の山の中からすぐに怒鳴ルドが復活し、野生の雄叫びを上げた……。
「……スゴイゾ、オ、オラたちもエレンちゃんに負けていられないゾ!
かすかべ防衛隊、出動っ!!」
「おお(ボ)ーーっ!!
「うわああん、いやだよ~、こわいよ~……!!」
「糞ボウズ!おめーも戦うんだよっ!!」
しんのすけの号令で、かすかべ防衛隊も怒鳴ルドに突っ込んでいく。
ネネに無理矢理引っ張られたマサオ……。
「よーし、ぼくたちも戦おう!ふたば幼稚園の平和を守るんだっ!!」
他の園児達も次々と加勢し、怒鳴ルドに突っ込んで行った。
「スゲエな、糞ガキ連合……、ま、俺が出る幕でもなさそうだ……、
それにしても、いっつも化け物の役回りだな、あのピエロ、
容姿が容姿だからな、仕方ねーのかもな……」
「けけっ、けけけけ……、あ……」
「……」
窓を覗き込み、笑っていた小悪魔と……ジャミルの目線があった……。
「そうかい、まーたおめえの仕業かよっ!!」
「りゅっ!!やべーりゅ!!また糞ザルに見つかったりゅっ!!」
ジャミルは再び外に飛び出して行き、小悪魔を追い掛けるが
小悪魔は余裕で空を飛んで逃げて行ってしまった。
「けけっけー!いい眺めだったりゅー!!今日は本当にこれでかえりゅー!!
バカ猿、あばよおーーりゅー!!」
「……逃げられたか、……畜生……、今度会った時はただじゃおかねえぞ、
ったく!」
ジャミルが苛々している処に、園児達に殴られ、ボコボコにされた
ピエロがふらふらとひまわり組から出て来た。どうやら魔法は解除
されたらしく騒動も収まった様であったが……。しかし、事実上、今回は
彼も被害者であり、無実なのであるが……。
「……ドナルドはね、こんなところで何をしていたのか、さっぱり
分からないんだよ、ねえ、君は知ってる?知ってたら教えてくれる?」
「俺が知るかっ!……てか、アンタ、元に戻ってもあんまり
変わんねえなあ……」
「……不思議だなあ、まあ、いいやっ!あは、あははははっ!」
「……」
ジャミルは、不気味に笑いながら、何処へと消えて行くピエロの
背中を黙って見送ったのであった。
「そういや、俺ら一応、同じマンションなんだよな、けど……、
あんまりマンションで姿見掛けたの見た事ねえんだよなあ、
どういう訳なんだか……」
やがて、漸く慌しい一日が終わり、ジャミル達は再び幼稚園バスへと乗り、
無事、マンションへと帰路に着いたのであった。
「母ちゃん、おかえりー!」
「……ボ」
「……ただいまでしょ、しんちゃん!まったくっ!ほら、ボーちゃんも、
部屋に入りなさいっ、さあ着替えて!」
「ほほーい!」
外で待っていたみさえに連れられ、しんのすけとボーちゃんが
2階に上り、ジャミルも急いで自分の部屋に入った。
……と、途端に急激に身体が元に戻り始める。
「……戻った、背もいつも通りだ、……ははっ、はあ~……」
ジャミルは安心した様にいつも通りにタバコを取り出し一服し、休憩。
「てか、服も元踊りだ、園服も、もう身に着けてない、糞小悪魔の
魔法だったとはいえ、何かおかしなモンだなあ……、気分がどうも
すっきりしねえ……」
何となく、ダウドが気になって、ダウドの部屋に試しに入ってみる。
「よお……」
「あ、ジャミル、……何……?」
「あのさ、今日の、その……、幼稚園の事だけど……」
「は?幼稚園がどうかしたの?……しんちゃん達が通ってる幼稚園の事?
……何か事件でもあったの?」
「お前、もしかして、何も覚えてねえの……?幼稚園、通っただろ?
一日だけ……」
「ジャミル、何言ってんの?オイラ馬鹿にしてんの?何でオイラが
幼稚園なんか通うのさ……」
「あう……」
どうやら、元に戻った途端、記憶が一瞬で吹っ飛んだらしい。
どういう訳かジャミルは全部記憶があるのだが……。
「と、言う事は……」
「……な~んか、あたしさあ、今日、一日、何処かでおかしな事してた様な
気がすんのよ、何なのかしら~?記憶ブッ飛んでるし……」
「……美奈はいつでも何処でもおかしいし、変じゃないか……」
「何よっ!アルテミスっ!」
美奈子もいつも通り、中学生モード。彼女もアルテミスも本日の記憶がないらしい。
「何か今日、私達、学校お休みしちゃったみたいだねえー、てか、その間、
全然覚えてないよう~、どうなってるの~?」
「でも、何だかとってもたのしかったようなきがするよ!こむぎは
いろはといっしょならいつでもたのしいワン!」
「私もだよ~、今日は一体何してたんだろう……」
「……モフ~?」
「ほんっと、不思議ね……、こ、こんな事、計算外よ!」
「あははー!私もすっごく、と~っても楽しかった様な感じはするよー!」
「この調子だと……、他の連中も全然記憶にないだろうな、恐らく……、
ま、それはそれでいいか……」
やはり、聞いてみると、アイシャもアルベルトも……、今日の事を
全く覚えてはおらずジャミルに対して不思議そうな表情をしたのであった。
「おー!ジャミルのお兄さん、今日も一日、お元気ー?」
「……何言ってんだ、もう日も暮れるわ……、それよりも……」
「お?」
ジャミルが屈み込んでしんのすけの顔をじっと見つめた。
「いや~ん、そんなに見つめられたら……、オラ、てれちゃうぞお~……」
「お前らはお前らで、大変なんだな……、おりゃ、幼稚園っつーモンは
ただ遊ぶだけで一日、あっと言う間に終わるモンだと思ってたけどよ……」
「何か今日は嫌に真剣ですな……、オラたちはオラたちで、
結構いそがしいんだゾ……、子供は子供なりに、それなりに
ドラマがあるのよ……」
「だな……」
「お……」
……今回は何だか変な兄弟の様な……、二人であった……。
そして、今週も日曜日が始まる……。
「こーんにちわーっ!」
日曜日、しんのすけの新しい住居祝いに、かすかべ防衛隊と
あいがマンションへと遊びにやって来たのであった。
「おおーっ、風間くーん、ネネちゃーん、マサオくーん、あいちゃんも、
いらっさいだゾー!何もないマンションですが、ささ、どうぞ、ごゆくり!」
「ボ、みんな、いらっ、しゃ、い……、ませ……」
「お邪魔しまーす!!」
「……よく言うわ、たく……、よお、お前ら、元気か……?」
ジンジャーエールを飲みながら、丁度部屋からのそのそと
出てきたジャミルと、防衛隊がすれ違った。
「……」
「はあ、これから6月になる処だってのに……、このムシ暑……、?」
作品名:zokuダチ。セッション8 さらにトラブル続発編 作家名:流れ者