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構築者

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それから二人揃って少しばかり眠ってしまい、夜中になって風呂場へと移動した。
息を殺すガウェインの挙動を不思議に思ったらしいネツァワルピリがどうしたのか訊ねてきたので、声を潜めて答える。


「給仕の女たちを起こすわけにいかんだろう」

「…彼女たちなら、暗くなる前に帰っているが」

「……え?」


…つまり、ベッドインした時点でこの家には二人きりだったと。
目を点にしたガウェインが固まること数秒。ぷるぷると震えだし、手を握り込む。


「!なるほど、だから声を抑えておったのか!」

「……」

「はっはっは!まあ聞かれたところでちょうど良い牽制にはなったが、その背徳感もまた一興ぅぐっ!?」


こちらの気も知らないで愉快そうに笑い飛ばす鷲王の脇腹に拳を入れてやった。


「そういうことはヤる前に言え阿呆!」

「す、すまぬ…。ではガウェイン殿、せっかく二人きりなのだ。風呂場でもう一戦、如何かな?」

「貴様ふざけるなよ…?そういうことはヤる前に言うな!ド阿呆が!」

「はっはっは!」


鷲王の高らかな笑い声と騎士の怒声が、夜のネツァワルピリ邸に響いた。


+++


ネツァワルピリとガウェインが島を発つ日。
朝食のパンとスープにありついていた二人のもとに、クゥアウトリが窓から滑り込んできた。
主人の腕に一度止まると、高い声で何度か鳴いてすぐに飛び去っていく。何かを伝えようとしたようだが、ガウェインにはわからなかった。

ネツァワルピリに目を向けると、頬張っていたパンを飲み下してからにっと屈託なく笑ってくる。


「ガウェイン殿、朗報である。グランサイファーが来ているやもしれぬ」

「そ、そうなのか?」


団長たちが迎えに来てくれたことよりも、今のピーピーでそれが理解できるということに驚きが隠せない。

しかしネツァワルピリはガウェインの関心をよそに深く背もたれに寄りかかり、安堵の息をついた。


「これで小型艇に乗らずに済む…。グランには感謝せねばな。」

やはりそこが気がかりだったらしい。
ガウェインはスープを口に運びつつ苦笑した。
とはいえ、レンタルであるため小型艇は返却はしないとならない。まあ、グランサイファーなら余裕で積み込めるだろうが。

「食事を終えたら我は長老たちに挨拶をしてくる。ガウェイン殿は帰り支度を進めて頂きたい」

「ん、わかった」



















その後荷物をまとめ、ネツァワルピリが戻ってくるのを待ってから発着場に向かうと、ルリアとビィが大きく手を振って迎えてくれた。


「あ!来ました!ネツァワルピリさんとガウェインさんです!」

「さすがネツァワルピリの相棒だぜ!ちゃんと伝えてくれたんだな!おーい、グランー!」


ビィが急いで艇に戻っていく様子に、ガウェインは呆れたようにぼやく。


「…まったく、元気なことだ。ザンクティンゼルで星晶獣とやり合ってたんじゃないのか?」

「子供はそうでなくてはな!」

「いや、そもそも子供は星晶獣を狩らんがな…」


まだまだ艇まで距離がある中、二人はのんびり歩いていく。
するとネツァワルピリが、やや声を落として「ところで」と話題を変えた。


「帰り際に長老たちに言われたのだがな」

「なんだ、また嫌味か?」

「そうではない。お主のことだ」

「…俺?」


予想だにせずこちらに向けられた矛先に、ぴたりと足を止めて思わず眉根に力が入る。
完全に油断していた。ああいった手合いは身内には口煩いが、部外者には無関心を貫き通す印象があったため、俺など存在すら認識していないだろうとばかり踏んでいたのだが。

立ち止まったガウェインに合わせてネツァワルピリもその場で振り返り、苦笑を浮かべた。


「聞き流してもらって構わんのだが…。お主の立ち居振る舞いや武の腕前を、長老たちがいたく気に入ってな。」

立ち居振る舞いといっても庵では無言で突っ立っていただけだし、ネツァワルピリとの手合わせは目撃すらしていないのでは。
色々と突っ込みたい気持ちもあるが、言葉を飲み込んで続きを待つ。

「お主が良ければ是非にも翼の一族に引き入れたい、とのことだ」

「……」


いやいや。

いやいやいやいや。


数秒ほど思考が止まるが、何はともあれ疑問がひとつ。


「…前提として。翼の一族というのは、翼の一族の間に生まれた者のことじゃないのか?」

「うむ」


うむ、じゃねぇよ。


作品名:構築者 作家名:緋鴉