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構築者

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さすがに息が上がる中相手の様子を窺うが、やはり自ら跳んだことにより大した痛快にはならなかったらしい。
すぐにむくりと起き上がり、ネツァワルピリが一足飛びに迫ってくる。

正直体力も限界なので、近接戦は避けたいところ。
ガウェインは剣斧の先に風を纏わせ、思いきり横一文字に空気を切り裂いた。風が圧縮された重い音を伴って、一拍遅れて周囲の木々がめきめきと薙ぎ払われていく。

が、ネツァワルピリは足を止めるどころか切っ先をこちらに向けて鏃の形を取ることで風圧に耐え、そのまま突進してきた。


「くっ…、」

奴の攻撃を受け止めきる体力はない。
そう判断して咄嗟に飛びすさろうとしたとき。

踵が、ネツァワルピリによって生じた地面の亀裂に捉われてバランスを崩し、

「う、わっ…?」


盛大に転倒した。
がくんと視界が下降し、音よりも早く槍の先端が鼻先まで襲いくるが、靴底で土を抉りながらネツァワルピリが踏みとどまり、その場でぴたりと槍も静止して鷲王の高らかな笑い声が木霊した。


「はっはっは!大事ないか、ガウェイン殿!」

「……ちっ。大事大ありだ、筋肉馬鹿が。」

ネツァワルピリが槍を後方におさめて、尻餅をついたこちらに右手を差し出してくる。手を取ろうとして、右手がまだ痺れていることに気がつき左手をぞんざいに突き出した。

「おかげで右は力が入らん」

「なんと。これはすまぬ……つい楽しくてな」


バツが悪そうに苦々しく笑いつつも、槍を持ち替えて出してくれた左手をガウェインは有り難く掴んで、ぐっと立ち上がった。
まったく、あれほどの大立ち回りをしたくせに息も乱れていないとは呆れたものだ。とはいえ、自身で吹き飛ばした土塊の中を無理矢理強行突破した折に負ったのだろう、細かな擦過傷が頬についていた。


「…で、どうだ。こんなもので十分か?」

「うむ!幾分か過ぎたほどであるな!」


周囲を見渡して、ネツァワルピリは満足そうに笑った。

長老たちに提示した、鷲王が帰還していると知らしめる方法。
それは単純に、ひと暴れして様子を見に来させるといったものだった。

高い鳴き声をあげてクゥアウトリが上空から舞い降り、主人に何かを伝えようと低い位置で旋回する。そんな相棒を見上げてネツァワルピリは小さく頷いた。


「ほう。やはり偵察が来ていたか」

「…これだけ騒げば道理だな」


あちこちに空いた馬鹿でかい穴に、抉れた大地。ひしゃげた木々も広範囲に渡る。挙げ句の果てには一人でフルチェインを決めたかのようなディアストロフィズムばりの地割れまで。
相手方が首を狙っている鷲王本人の力を示す暴れっぷりとしては十分すぎる。こちらに手を出せばこの武が牙を向くぞ、という牽制になるということだ。
結果としては大成功だったのだろうが…


「本当に貴様は…攻めることしか頭にないらしい。少しは身を守ることも考えたらどうだ」

「はっはっは!それはガウェイン殿に任せる!」


豪快に笑って槍を担ぎ、村の方へと足を向ける男の後に続きながらガウェインは嘆息した。


「どんな攻撃が来ようがお構いなしだな……俺やヒーラーがいなければ貴様なぞすぐに死ぬぞ」

「わかっておる。お主らがいればこそ、我は我の戦いができるというものよ!」

「…調子の良いことだ。貴様の身体を気にかけながら立ち回る俺の身にもなれ」


ここぞとばかりに苦言を呈すが、ネツァワルピリはどことなく嬉しそうにはにかんで、がばりとガウェインの肩に腕を回した。


「胸を貸してもらえたこと、有り難く思う!これからも宜しく頼むぞ!」

「ほ、本当に調子が良いな!」


唐突に近づいた体温にどぎまぎしつつ、思わずつっけんどんに切り返すが逆にぎゅうと腕に力が入り、さらに密着する。


「我は嬉しいのだ」

「っ……な、何が」

「愛しい者に背を預けることができる。それに勝る喜びがあろうか」

「ええい黙れ!そういうことを平然と口にするな阿呆が!」


相手の腕を振り解いて、一気に熱を持った身体を離して先行し大股で歩き出した。


「では今宵、閨で改めて囁くとしよう」

「要らん!死ね!」


乱暴な応酬をしつつ、土埃に汚れた二つの背中は森を後にした。


作品名:構築者 作家名:緋鴉