zokuダチ。セッション14 ジャミ公の夏休み(?)編・2
「ねえねえ、まもく~ん、東京ばななっておいしいよねえ~っ!」
「うん……」
「噂をすればっ!……レディーっ!!」
声を聞き付け、物凄い勢いでジタンがジャミルの部屋を
飛び出して行ったはいいが。
「……ジタンっ!何してるのっ!!」
そして、例の如く、此方も何処からともなく飛び出してくるダガーに
間も無く成敗される。
「しかし、あのお嬢も相変わらずスゲエなあ、何処で話聞いてんだか……」
それから数時間後、ダウドがジャミルを呼びに部屋に訪れる。
「ジャミル、いこうよお~、支度出来た?」
「は?何処へだよ……」
「何言ってんの、銭湯だよお、今日は夜から断水になるから、
自部屋のお風呂沸かせないんだよ、市役所からの連絡聞いてた?」
「いや、今初めて聞いた……、はあ、めんどくせえ、風呂なんか
一日ぐらいいいよ……」
「駄目だよっ!夏場は一日でも風呂逃すと汗臭くなるよお!ほら早くっ!
特に今は夜も熱帯夜で身体もムシムシしてんだからね!」
「……分ったよ、意外とうるせえな、お前……」
「オイラは清潔派なのっ!」
昔から長年の幼馴染だが、ダウドもまだ玉に良く分らん面がある……と、
ジャミルは思う。
……そして、銭湯までの道のりを歩いて行く二人を空から見つめる
変なのが一匹。また小悪魔であった。
「けけ、今日は風呂屋かりゅ?これは面白そうりゅね……」
「はあ~、歩くだけでもう……、めんどくせ……、ん?」
項垂れながら歩いていたジャミルが急に立ち止まる。
「どうかした?ジャミ……、いっ!?」
後ろを振り返ってジャミルを見たダウドの目玉が飛び出……、
古典的表現になった。
「俺、変だ……、明らかに変だよな……、やけに胸がでかくなってる
気ィするし……、何か変だ……、ぜってーへんだ……、それに何か声の
トーンも高いし、異様に色気が出て来た……」
「……へ、変なのは、い、いつもの事だけど……、ジャ、ジャミル……、
女の子になってる……、髪も伸びてるよ……、女装した時みたいに……」
ダウドが丁度持参していた手鏡をさっとジャミルに見せた。
「……あ、あああー!ま、マジで……、俺、女になって……る?
女装じゃなくて……マジで……?」
「けーっけっけっけ!……りゅー!」
「りゅ……?」
「りゅ……?」
2人がアホ面をし、声のした上空を見上げると……。
「リトル様、参上りゅー!」
「……リトルっ!ま~たテメーの仕業かーーっ!!てめえ、何時から
こっちでもレギュラー扱いになったんだよっ!!最近出過ぎだろうが!!」
「おやおや、女の子がそんな口の訊き方しちゃ駄目ですよ、りゅ!
もっとお淑やかにしなさいりゅ!けーっけっけっ!」
小悪魔はジャミルを放置し、そのまま何処かに飛んで行ってしまった。
「ダウド、……風呂なんか行ってる場合じゃねえ、俺は糞小悪魔を
追い掛ける!」
「でも、リトルの魔法だから……、時間がくればその内切れるよお……」
やがて後ろからがやがやと賑やかな声がする。バーバラとシフを先頭に
風呂セットを持ったマンションの女子集団が歩いて来た。……わんぷり組、
まほプリ組、美奈子、エレン、サラ、クローディア、ダガー、アイシャ、
ゆうな、マンションの恐怖の女子集団が、主婦のみさえと娘のひまわりを
除き、集結しようとしていた……。
「あの賑やかな声……、ジャミル、女の子達が来たみたいだよお……」
「……いっ!?ま、ますますやばいっ!やばすぎるって!」
「あっ、ダウドー!ダウドもお風呂入りに行くのー!?」
(……アイシャめっ!こっちくんなっ!頼むからっ……!!)
アイシャが真っ先に二人に気づき、走って来た。ジャミルは慌てて
持っていたタオルで顔を隠す。
「うん、オイラも今から入りに行く処なんだよ……」
「そうなんだ!あれ?ジャミルはいないの?あの、あなたは……?」
アイシャはタオルを顔に巻いたジャミルをじろじろ見る。気づいては
いない様子であったが。
「ジャミルはね、さっきまでいたんだけど、お腹壊したみたいで
どっか行っちゃった!あ、後から来ると思うから……、オイラ先に
行ってる事にしたんだよ」
「そうなんだ!全くもう、食べてばっかりいるからお腹壊しちゃうのよ!
しょうがないんだからっ!」
「……うるせーな、このっ……!」
「……あ、あああっ!こ、この人ね、さっき知り合ったばっかりなんだよ、
うんっ、ジャミィさんて言うんだよ!」
「……ぶっ!」
「そうなの、名前もジャミルと一字違いだね、あ、お風呂一緒に
行くんでしょ?良かったら……、私達とご一緒しませんか……?」
「え、え、え、……あのその、あのっ!!」
すでに風呂道具も持参している為、まさか違うとは言えず、パニくる
ジャミルを見、ダウドが横を向いて堪らず吹き出した。
(……の、野郎~……、ヘタレめ、後で覚えてろよっ……!)
「アイシャー、何してるんだい?」
「バーバラー、今行くー、あ、あのねー!」
「うわうわうわっ……!!」
アイシャに手を引かれ、ジャミルは女子軍団の処へ連れて行かれてしまう。
その様子をハンカチで顔を拭きながらダウドが見送り、手を振る。
「ごめんよお、ジャミルう……、オイラ親友として何もしてやれないけど、
何とか乗り切ってね、じゃあ、オイラ先にお風呂行きます……」
薄情なダウドはさっさと自分だけ先に銭湯に逃げて行くのであった。
……結局、ジャミルは女湯に連れ込まれてしまい……、危機に陥っている……。
(これ、途中で魔法が切れるとか、オチじゃねえよな……、ああ~、どうか
無事で生きて帰れます様に!……乗り切れますようにっ!)
只管ガクブル状態である。見渡す限り何処もかしこも胸、胸、胸で……、
普通の男性なら喜ぶ状況であるが、ジャミルはそれ処ではない。
取りあえず、並ぶおっぱいから逃げようと目線を反らし湯船に直行。
だが、自然のまま、ありのままの姿の女子さん達が集まるお風呂には
観ておると、色んなお方がいらっしゃる。
「わあ、ユキちゃんの被ってるシャワーキャップお洒落で可愛いね!
ネコ耳さんの形?まゆちゃんとお揃いなんだー、いつも仲良しでいいねー!」
「ふふ♪何だか照れちゃうね!これならユキもお風呂が楽しく
なるかなあって、石鹸もね、ホラ……」
「こっちもネコちゃんの形なんだね!香りも凄くいい匂いする!
これは、ほんのり甘いミルクの香りかな?」
「……仕方無いのよ、まゆが勧めるから……、仕方なしよ、
……本当よ……」
お風呂猫グッズをアイシャに披露するまゆ。して、相方とお揃いで
嬉しい癖に、何処までも仕方無いからで通す、顔が赤いツンデレ
ユキちゃんである。
「おふろっ!おふろっ!みんなでおふろっ!♪ぽっかぽかのおしり
ふりふりっ!」
「こむぎっ、お風呂場を走っちゃめっ!だよっ!……こらっ!こむぎっ!」
「あはは、こむぎちゃん達も賑やか……、な、なんか、こむぎちゃん、
懐かしいねえ~……」
「……あはは~……、こむぎちゃん、そうだね、今夜も元気だね……、
ね、ユキ……」
作品名:zokuダチ。セッション14 ジャミ公の夏休み(?)編・2 作家名:流れ者