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狂愛

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我ながら滑稽なほど必死だと思う。が、そんなことになりふり構っていられないくらい滅茶苦茶に動揺していた。
煉獄は疲労を滲ませた微笑を浮かべ、息を整えながらしっかり答えてくれた。


「君の…どこか後ろ暗い想いは、俺にも届いていた。感情が昂ると、俺に対して食欲や暴力による支配への欲求が出てくるのだろう」

「っ…そ、それは…」


確信めいた口調であっさりと言われてしまい、猗窩座は面食らって口篭る。
それは、知られてはいけないことだと思っていた。懸命にひた隠しにしていた、己の醜い欲望。

好きすぎて食ってしまいたくなる。潰してしまいたくなる。でも傷つけてはいけないから、時には己の心臓を掴み出す等、自分自身に痛みを与えて衝動を紛らわすのだ。


「その行き過ぎた愛を向けられることに、俺は喜びを感じている」

「……、」

「乱して、掻き混ぜて、壊してほしい」


狂った愛だと、自覚があった。
腕っぷしの強さや人間性に惹かれたという、ありふれた恋情とは毛色が違う異常な愛だと。
しかし煉獄は特段軽蔑する様子もなく、寧ろ挑むように力強く笑ってみせた。


「侮ってもらっては困る。この炎柱、君が思うほど柔ではないぞ」

「……」


熱いものが目元と鼻先に迫り上がってきて、猗窩座は煉獄の胸に顔を埋める。

なんなんだ、この男前は。
息が苦しい。肺の中が膨らみすぎて、うまく呼吸ができない。いや、呼吸など鬼に必要ないのだからこれは酸素不足による息苦しさではない。わからない。原因がわからない。
心臓も正常値から大きく逸脱して鼓動が早い。この原因もわからない。身体への問題はないが、焦燥感のようなものが全身を巡っているのは心拍数が影響しているのだろうか。
一度取り出して再生するべきか。しかし以前にもこういった苦しさに襲われたが、心臓を掴み出して作り替えても何も変わらなかった。


「どうした、大丈夫か?」

「……わからん」


顔を伏せたきりのこちらを窺う煉獄。
鬼に大丈夫かなどと訊ねる鬼狩りがいるか。
胸中で突っ込みつつ、相変わらずの息苦しさにぐりぐりと額を相手の胸に押しつけてみる。


「ふむ…、わからないとは?」

「この身に起きている症状の原因がわからん。内から爆発でもしそうなほど内臓が膨張している気分だ」

「……ほう」

「気管が圧迫…いや、すべてが圧迫されている。吐き出しようのないものが溢れ出てきそうな感覚だ」

「それは不快なのか?」

「……わからん。今すぐにでもどこぞへと全力で走って行きたい気分だが、杏寿郎と離れたくはない」

「猗窩座。」

名を呼ばれて、ぱっと顔を上げる。
優しげに目元を下げて、煉獄はこちらを見つめていた。

「俺はおそらく、その状態に名前をつけられる」

「なに?勿体ぶらずに教えろ。これはなんだ」

「高揚感、充足感、ときには泣きたいくらい嬉しいとき、人はそれを『幸せ』というんだ」


…シアワセ。

あまりに耳馴染みのない単語だからか、音が聴覚の表層を滑ってうまく入ってこない。脳が認識を拒んでいる。


「歓喜が膨れ上がり、興奮することで心拍数は上がる。血流が良くなるから体温も上がっていることだろう。俗に『胸がいっぱいだ』と表現する。要するに君は今、幸せであり、嬉しいと感じているのだろう。」

明朗に説明してくれる煉獄だったが、不意に「ところで」とどことなく気まずそうに目を泳がせた。

「…君のものが、その、入ったままだ。そろそろ抜いてもらってもいいだろうか」


言われてはたと気がついた。つい居心地が良くて忘れていた。
しかし猗窩座が言われるがままに抜こうとすると、中に注ぎ込んだ精が奥からこぽりと溢れ出てきて。煉獄がむずがるように腰を捩ったことで思いなおし、再びぐちゅりと水音をたてて逸物を潜り込ませた。


「んんっ、…待っ、ちがう、入ってる…!」


慌てて身体を逃がそうとする煉獄をぎゅっと抱きしめ、互いの肌を密着させつつ腰を前後に揺らす。
先程まで諭すような口調で話していたその唇からたちまち甘い吐息が落とされ、下腹部が不規則にひくつく様はひどく嗜虐心を煽られた。


「…壊しても構わないと言ったな、杏寿郎」

「やっ、言っ……言ったが…、ぁ、今は…ッ」


相手の腕ごと身体をきつく抱き込む。
じんわりと煉獄の熱が上がっていくのがわかる。背中がのけぞる一点を容赦なく責め立てて、快感を拾いやすくなっている身体を思い切り貫き続けた。


「ぁ、ぐっ……だめだっ、そこ…」

「っふ…、こんなに、絡みついてきて、いやらしいな」

「そ、そこ、…ばかりッ、やめ……、っん!」


びくびくと煉獄が痙攣し、先程よりも随分濃度が落ちた少量の白濁をすぐに吐精したが、それでも休むことなく奥を穿つ。


「杏寿郎っ…」

「っく、ぅ……少し、待っ…」


達して収縮したのちに弛緩した胎内を、間断なく張り詰めた屹立で突き上げていく。互いの腹の間で煉獄の雄はもみくちゃにされ、精を流したまま強制的に刺激を与えられていた。

欲しい。この男の全てが、余すことなく欲しい。
俺の裏側までも受け入れて尚身を委ねる、この強く美しい気高い男を、骨の髄まで喰らい尽くしてしまいたい。

張りのある若い皮膚に牙を突き立てて食い破りたくて、唾液がしとどに溢れ出してくる。が、その衝動だけは死に物狂いで押し留めて、食欲を色欲に変換して煉獄の内側を貪っていく。
腕の中でまた愛しい男が達した。
猗窩座もまた駆け上がってくる快感に身を震わせ、白濁を放つ。
タガが外れたように真っ黒な感情を暴力的な性行為にのせて、何も考えられないままひたすら求めた。


作品名:狂愛 作家名:緋鴉