zokuダチ。セッション15 ジャミ公の夏休み(?)編・3
チビ達の身にも危険が及んでしまっていると分った以上、
どうする事も出来ずにジャミル達は唯黙って目の前の偽住職を
睨むしかないのだった……。
「さあ、……坊主達、覚悟はおありかの……?」
偽住職が、ゆっくりと……、こちらに近づいてくる……、と、
その瞬間……。
「ほほ、儂がどうかしましたかのう……?」
本堂の入り口が突然がらりと開き、小柄な爺さんが顔を出した。
「な、何とっ!そちは住職っ!?何故にっ!?」
「もうチビ達が……?それにしても、やけに早いなあ……、ま、
良かったけど……」
最初は首を傾げたアルベルトも、安堵の溜息をつく。
「まさか、アンタ本物の住職さんかっ!?」
ジャミルが聞くと、小柄な爺さんは人懐こい笑みを浮かべる。
「いかにも、一週間程……、森の奥に昔からある洞窟の地下に、
閉じ込められてしもうてのう、する事もありませんので、牢屋の中で
鳩豆を食べて暫く寝ておりましたわ、おっほっ!」
「寝てたって……、おいおい……」
「おーい、ジャミルっ!」
「……ぎゅっぴ!」
続いて、丸井とチビも本堂に姿を現した。
「お前らもっ、大丈夫だったのか!?」
「ああ、今、近藤の馬鹿が警察に電話しに行ってる、携帯からな!
もう、テメエの負けだぞっ!このハゲっ!!」
……どんなに真面に働いても、丸井にはバカ扱いでしか通らない
近藤って、一体……。
「よくもおしょーさんいじめたなっ!絶対許さないよっ!おまけに
爆弾仕掛けるなんてっ、チビがブレスで爆弾全部燃やしたからねっ!」
「そ、そうかっ、チビが爆弾を……」
「うわあ!……お前、すげえんだなあ……」
シグも改めて、チビを見、感心した。
「そうだよ、チビはスーパードラゴンなんだから、……ね?」
「きゅぴっ!」
アルベルトに褒められ、チビが嬉しそうに返事をした。
「もう、完全にアンタの負けだな、甘く見るからさ、チビをな……」
「大人しく警察に行く準備しとけっての!」
さっきの仕返しに、ユリアンとジタンもニヤリと悪戯っぽい
笑みを偽住職へと向けた。偽住職は堪忍したかと思われたが……。
「……なーにをおっしゃいます、負けはあんた達の方です、
このご本尊の中にも、爆弾が仕掛けてあるんですぞ……?」
「……なあにーーーいいいいー!?」
「ぎゅっぴ!?」
ジャミル達は揃って思わず声を合わせた。
「おやおや、それは困りましたのう……、そんな物がご本尊様の
中に入られてしまったとは……、いやいや、暫くお掃除をせんかった
からかのう……」
「爺さんっ!ボケてる場合じゃねえだろっ!!」
「……ハテ?」
ジャミルが突っ込むが、住職は平然として首を傾げた。本物は本物で、
相当天然な困った性格の様である。
「ふふふ、このリモコンのボタンを押せば、お前らは何時でも
木端微塵じゃ、……この寺モロ共破壊してくれる、儂が何処か
遠くに逃げた後でこのリモコンのボタンを押してやるからのう、
お前らは此処から逃げられん様に縄ででもふんじばっておいて
くれる……」
「大丈夫、……みんな、きてええーーっ、助けて、お願い!
きゅぴいいいいーーーっ!!」
……チビが雄叫びを上げると、突然地鳴りが鳴りだし、周囲が小刻みに
がたがたと揺れ始めた。
「……何だっ!地震かっ!?」
「ジャミル、大丈夫、地震じゃないよお、チビのお友達、モンブラン山の
ドラゴンさん達にお手伝いして貰うのっ!!」
……ギャーオーォォォォ……!!
確かに、外で翼が羽ばたく様な音と、獣の鳴き声が響き渡っている。
「みんな来てくれたみたいっ!もう大丈夫だよお、お寺の周りは
仲間のドラゴンさん達が取り囲んでるからね、ワルイおじいさんも
外に逃げてももう、逃げられないよっ!!」
「な、何という馬鹿者……、いや、化け物使いだったとは……、
儂の負けじゃ、……観念しようぞ……」
流石にドラゴン達に囲まれてしまっては偽住職もどうする事も出来ず、
静かにその場に座って崩れ落ちる。敗北である。
「よし、そのリモコン、こっちに渡して貰おうか……」
「好きにするが良い……」
偽住職は弱弱しい手つきでジャミルに時限爆弾の操作リモコンを
渡すのだった。
丁度その頃、ベストタイミングで近藤が呼んだ警察も寺に到着し、
偽住職は警察にしょっ引かれていった。刺激しなければ大丈夫なので
取りあえず爆弾処理は後日又行うらしかった。
「……」
「……ジャミル、何してるきゅぴ?何で仏様の後ろに隠れてるの?」
「ん?……いや、やっぱり警察って苦手なんだよ……、つい、癖で……」
「大丈夫だっ!オレもだからっ!ま、この世界じゃあんまり色々と
気にすんのはやめようぜー!はははっ!」
開き直ったジタンが馬鹿笑いした。
「たく、呑気でいいなあ、お前はよ……、……ま、いいか……」
何はともあれ、ジャミル達の奮戦により、本物の住職は無事救出され、
お寺へと無事に帰って来たのだった。
真夏の体験学習編 5
偽住職もどうにか捕まり、寺には静寂が戻った。
「……んじゃあ、最初からこの体験座禅学習も金儲け詐欺
だったっつー事か、ホークの野郎……、インチキ広告に
騙されやがってからに……」
「ホークも分らなかったんだよ、仕方ないじゃないか……」
お茶受けに住職が出してくれた煎餅をボリボリ齧りながら
喋るジャミルにアルベルトが呆れてみる。
「すみませんのう、儂がうっかり、椎茸を譲るなどと……、
つい……、甘い言葉に騙されてひょいひょいと……、知らない
相手に付いて行ってしまったばかりに、皆様まで巻き込んで
しまって本当にご迷惑お掛けしました……」
(しいたけ?……このじいさん、しいたけで勧誘されたのか?
大丈夫なのかよ……)
「ま、……何事も無くて、何よりだったよ……」
そう言いながら、ジャミルに続き、ユリアンも煎餅を
ボリボリ齧りながら喋る。
「本当やでえ……、サラダ味はないんかー?」
「……近藤っ!てめえはちったあ遠慮する事をしねえかーーっ!」
「あいたあーっ!」
……近藤も結構頑張った手前なのに、丸井の前ではやはり
こうなってしまうんである。
「あのさ、じいさん、弟子とかはとんねえの?ホラ、今回みたいな事が
又起こらねえとも限んねえし、……他に寺に誰か付き添いが
いた方が安全じゃね?」
「……そうだよな、オレもそう思うよ、偶々今回はオレ達がいて
機転利かせたからどうにか良かった様なものの……」
ジタンもジャミルの意見に賛同する。住職の他に身内らしき
人物も見当たらない。
「そうですなあ、しかし……、儂は人など扱える様な立場の
坊主ではありませんて、なので、昔から弟子などは取らず、
儂一人で此処の寺を切り盛りしとったんですが、最近は
こんなに物騒になってしまったんですのう、やれやれですわい……」
「爺さん……」
「じゃあっ、今から爺さんも身体鍛えて強くなればいいんだよ、
オレがいた元の城には幻獣部屋って言う、怪物と戦える仮想空間が
あって、其処で……」
「……無理だよ、○ラ○ンボールじゃないんだよ……」
「いてっ!」
作品名:zokuダチ。セッション15 ジャミ公の夏休み(?)編・3 作家名:流れ者