zokuダチ。セッション16 入れ替わり編
「ふええ~、信じらんない、もう~……」
ジャミルの姿のアイシャは只管ぐしぐしベソをかく。
「あのさ、頼むから俺のツラでメソメソすんのやめてくんね?我ながら
カマみてえで気色わりいんだけど……」
「何よっ!ジャミルこそっ、私の格好で大股開く様な
立ちスタイル止めてよっ!」
「だ、だからっ!早く中へっ!!」
アイシャはしかめっ面をし、しぶしぶ部屋の中へと入るが。
「……」
「はあ~、てか、お前、部屋逃げ出してきたのか?」
「うん、さっきダウドがこっちに来たでしょ?その隙にジャミルの
部屋から逃げて様子窺いながら隠れてたの……」
「そうか、お前が俺の部屋に……、つう事は……」
「そうよ、私の部屋よ……」
アイシャはジャミルの部屋にしょっちゅう訪れてはいるが、ジャミルは
アイシャの部屋の中までは直に入った事はなく、今回が初めてであった。
(いい匂いすんなあ、やっぱ女の子の部屋だなあ、巨大ダンベルとかあったら
俺、どうしようかと思ったわ……、ははは……)
「でも、これからどうするのよう、私、嫌だわ、いつまでもこんな……」
「ま、仕方ねえさ、何とか元に戻れるまで普段通りに過ごすしかねえな」
「無理よっ!そんなのっ……!!」
……涙目のうるうるジャミル……、(アイシャ)が訴える……。
「頼む、本当に気持ちわりィから止めてくれ……」
はあ~っ!全くう!ジャミルってば何処行っちゃったのさあ!
ちょっと、目を離したらこれだからね!……縄で縛っとくかね!
「大変っ!ダウドとバーバラが戻って来たわ!」
「……ふ、普通にしてろ、んで大丈夫なフリしてやりすごせ!それしか
ねえんだから……」
「分ったわ、何とかやりすごすわ……」
アイシャは覚悟した様にぎゅっと目を瞑った。
「……あっ!ジャミルっ!いなくなったと思ったらっ、階段から
落ちたんだからふらふら出歩いちゃ駄目だよお……!!」
事情を知らないダウドはジャミルの姿のアイシャに説教を始めた。
「だ、だって、仕方ないじゃないのよう、ふええ……」
(お、おいっ!コラッ!!)
又、ジャミルの姿でメソメソし始めたアイシャをジャミルが突っついた。
(そ、そうだった、私は今、ジャミルなんだったわ、えーっと、
こういう時は……)
「……全く、あたしらだって一応アンタの事心配してんだからね!
反省しなっ!」
「ごめんなさい、ダウド、バーバラ、俺、ちゃんと反省します、本当に
ごめんなさい……」
「はあ……?」
「ちょっと、アンタ……」
「うわわわわっ……!!おま、普通にしてろってあれ程っ!!」
ジャミルが慌ててアイシャを引っ張る。
「何よ、普通じゃないのよ!」
「だから!俺の格好でなよなよすんなあーーっ!!」
「……バーバラ、あのさ、やっぱ二人とも病院に連れてった方が……」
「んだとおっ!バカダウ……いてっ!」
アイシャがジャミルの足を踏んだ。
「はあ、何で私が自分の足を踏まなきゃいけないの……、
ジャミル、さっき言ったでしょ、普通にしてろって、普通に、
普通にしてましょう……」
疲れてしまったのか、やるせなさそうにアイシャが口を開く。
「分ったよ、とにかくっ、俺……、じゃなかった、オホン……、
私は大丈夫よっ!だから2人とも自分のお部屋に戻って、ね?」
ジンマシンを放出しながらジャミルがダウドとバーバラに無理矢理
愛想を振りまく。
「……」
その様子を見てダウドとバーバラは顔を見合わせた……。
「分ったよ、こっちも忙しいからね、まあ、アンタが大丈夫なら
あたし達はこれでおいとまするよ」
「じゃあ、オイラも部屋に戻るよ、ジャミルも早く部屋に戻りなよお……」
2人はアイシャの部屋から漸く去って行った。これで一旦一安心だが
問題は解決した訳ではない。
「ふう~、やっと行った、んで、これからどうするかなんだが、
今日の処はオメーが俺の部屋に泊まるしかねえだろうな……」
「やっぱり、こうなるのね、いいわよもう……、……臭くないかしら……」
「時々お前もえげつない事言うなあっ!?」
「冗談よ、本当はこんな事教えたくないんだけど、此処、タンス……、
私の下着が入ってる……、夏は蒸れるからちゃんと毎日お風呂入って
下着取り替えてね、お願いよ……、でも、元に戻るまでの間だからね……、
ぐすっ……」
アイシャは泣きそうな顔をしながら、仕方なく、自分の部屋の説明を
ジャミルにするのだった。
「おう、俺の部屋にもタンスん中に下着とかパンツ入ってるだろ、
それ着てくれや」
「分ったわ、……じゃあ……」
「じゃあな……」
トボトボとアイシャが肩を落としながら自分の部屋を後にする。
「大丈夫、少しの間だもん、きっと元に戻れるわ、……きっと……」
そして、アイシャはジャミルの部屋にお邪魔する。
「……お邪魔します……、はあ、やっぱり汚いわ、今日は一段とゴミだらけ
じゃないの……、もう~っ、何考えてんのっ!!ジャミルったらっ!!」
やっぱり普段から何も考えてない男、それがジャミルである。
「お掃除しないとっ、どうせ掃除機なんかないんだし、贅沢言わないわ、
ホウキとチリトリっ!ないわ、何処にもないじゃないっ!!」
「ジャミル、戻って来てたんだ?」
けたたましい声を聞き付け、ダウドが部屋に顔を出した。
「あ、ダウド、悪いんだけど、ホウキとチリトリ持ってないかしら?」
「かしら……、って、何その変な喋りは……、それにそんなモン
何に使うの……?」
「お掃除するのに決まってるでしょっ!ダウドこそ何言ってんのっ!
あっ……」
「!?」
アイシャはとてとてと窓ガラスに近寄って行く。
「もうっ、此処にもこんなに埃っ!これ、拭いた方がいいわね、ダウド、
悪いけどこのゴミ箱の中のゴミをゴミ袋に入れて貰えるかしら?私は
バケツにお水くんでくるから」
姿はジャミルのままだが、口調は完全にアイシャに戻っており、それは
現場を見ていたダウドを大いにガクガクブルブル震え上がらせるのであった。
「♪うふふっ、この際だから徹底的に綺麗にするわよっ!見てなさいっ、
ゴキちゃんっ!」
ジャミルの姿のアイシャは足取り軽く、スキップをしながら部屋を出て行く。
何だか分からないが、どうやら汚い処を掃除出来るのが嬉しいらしかった。
「……怖いよおおおおーーっ!!」
そして、アイシャの部屋でのジャミルは、ベッドの上で
パンツ丸見えの大胆な格好で股を開いてゴロゴロしていた。
「暇だ、女の部屋ってどうしてこう、味も素っ気もなくてつまんねんだ、
何か面白いモンはないのか……」
ジャミルは枕の横に置いてある変な顔の馬のぬいぐるみをほおり投げて
壁にぶつける。
「こんにちはー!アイシャさんいますか?いろはです!」
「こむぎもいるよ!おみまいにきたんだよ!」
「う……、うえ!?」
ジャミルは慌てて広げていた股を閉じる。先程の慌しい現場を見ていた
2人はショッピングに行くのを中断し、心配してお見舞いにわざわざ
来てくれたのだが。……こんな状況のジャミルにとっては大迷惑の何者でも
作品名:zokuダチ。セッション16 入れ替わり編 作家名:流れ者