zokuダチ。セッション16 入れ替わり編
ジャミルも麻婆豆腐を一口、口に入れてみるが、辛さが本格的な為、
動揺する。
「アイシャ、大丈夫……?」
クローディアがジャミルの背中を擦ってやる。
「アイヨッ!ムセテンナヨ!」
ボーイがジャミルに水をさっと差し出し、ジャミルは慌てて
それを飲みほした。
「はあ~……」
「落ち着いたかしら……?」
「……大丈夫よ、ありがとう、クローディア……」
「まだアイシャにはこれはきつ過ぎるね、無理しなくていいよ」
今日はバーバラもアイシャなジャミルにやたらと気を遣い捲りであった。
「うん、……私、お肉もっと食べたいわあ!」
「……」
どうしても、ジャミル本人の地が出てしまうのであった……。
一方、男性陣テーブルの方のアイシャは……。
「ジャミル、どうしたの?今日はあんまり食べてないみたいだけど……」
いつもと様子が違うジャミル(中身はアイシャ……)にアルベルトも
心配そうな表情。
「ダイエット中なの……」
「はあ……?」
「おう!ジャミ公おもしれえなあ、階段から落ちて頭打ったんだと?
ガハハ!普段から抜けてると思ったけどなあ、ガハ、ガハ、ガハハ!!」
「キャプテン、最初から飛ばして飲み過ぎですぎゃ、お酒は控えないと……」
「うるせーんだよ、ゲラ=ハはよう!こんな時だからこそ飲むんじゃねえか!
ガハハハ!」
「お前……」
「?」
グレイがまじまじとアイシャを見つめた。
「実はあの馬鹿じゃないんだろう……?」
「!!!」
「……なんてな、冗談だ、……気にするな……、ふっ……」
グレイはそう言うと、髪を掻き上げた。
(……な、なんなのよう、もう~……)
「お~い、しけてんじゃねえぞオラ、お前今日やけに表情が硬いじゃねえか、
飲まなきゃ駄目だぞっ!オラ、飲め飲め!」
出来上がり、更に酒癖が悪くなったホークは、本当は未成年の筈の
アイシャのコップにビールを注ぎ始める。外観は20歳のジャミルなので……。
「ホーク、あんまりジャミルにお酒飲ませないでよお、後始末が
大変なんだからさあ~……」
「……うるせんだよ、黙れダウド、今日はぁ、……無礼講なんだ、ひひ……」
「キャプテン……、いつも無礼講じゃないですか、ぎゃ……」
「もうっ!飲むわよっ!とことん飲んでやるんだからっ!!」
アイシャはやけになり、コップに注がれたビールをぐびぐび飲み始めた。
「……ぷはあ~……」
「おお、ジャミ公……、イイ飲みっぷりだなあ!やっぱりおめえはこうで
なくっちゃなあ!ガハ、ガハ、ガハハ!」
「飲むわよっ!……もっとっ!!」
アイシャは自らコップにビールを注いで更に勢いよく飲み始める。
「ういっく、ひっく……」
「おお!すげえ飲みっぷりだなあ!それでいいんだっ、
ガハハハハ!オラオラ、もっと飲めっ!!」
「……キャプテン、いい加減にして下さいぎゃ!!」
ホークのあまりの過ぎた無礼講ぶりに遂にゲラ=ハも呆れて切れる。
「ジャミル……、君、今日、階段から落ちたんだろ?駄目だよ、
そんなに飲んじゃ!もうこれで止め……」
「……アル、何か変、……頭ふわふわするの…、ふぃっく、
……あれ?あれ?おかしいなあ~……」
「ちょ、ジャミルっ!?」
「きゅう~……」
アイシャは隣に座っているアルベルトの肩にもたれ、そのまま眠ってしまう……。
(……あれ?何かおかしいな……、何でこんなに今日は
ジャミルが可愛くみえるんだろうか、あのジャミルがだよ……、
おかしいなあ……、僕、どうかしちゃったのかなあ……?)
ドギマギしながら、もう一度、眠っているジャミル……
……(中身はアイシャ……)の表情を覗ってみる。
「……ふにゅうにゅ~……、にゅ……、あっつーい……、
身体、ぽかぽか……」
(う、うわっ!……やばい、やばいよこれっ!な、何なんだろう……、
一体何が起きてるんだ……、あ、ああああ~……)
何が何だか分からず、アルベルトの頭もパニックになり始めていた……。
(……違う、あれ違う……、ジャミルじゃないよお……、どういう事……)
そして、昼間脅えていたダウドまで冷静になり、等々異変に感づき始めている。
俺がアイシャでアイシャが俺で……4
「はうあーっ!げーっぷ、もう食えねえ……」
帰るなりジャミルは又足をおっぴろげ、アイシャの部屋のベッドで
大の字になる。
「そういや、アイシャの奴相当酔ってたみたいだけど、大丈夫かな……」
様子を見に行きたいが、時間も遅い為、もしも又誰かに見つかったらと
思うと何となく気が引けてしまうのであった。
「アイシャいる?オイラだよお」
「ダウっ!?こ、こんな遅くに、コホン……、な、なーに?」
「ちょっとさあ、話したい事があるんだよお、入っていいかな?」
「駄目っ!もう遅いんだからっ!明日でいいでしょっ!」
「……そう、さっきね、パーミアンでレジ前に売ってたお土産の
チョコ買ったんだけど、おすそ分けしようと思って持ってきたんだ
よお、じゃあ、又後でね……、残念だね」
「わ、分ったわ、少しだけよ……」
駄目駄目馬鹿ジャミル、あっさりチョコで釣られる。ダウドは
これよがしと反応を感じ取り、ニヤリと笑うのであった。
「お邪魔しまーす!」
ダウドはちょこちょことアイシャの部屋……、に入ってくる。
「いい部屋だねえ、ジャミルの部屋と違ってね……」
ダウドの言葉に少し、ジャミルの顔に血管が浮いた。
「……ダウド、チョコまだなの?早く頂戴よ……」
イライラし始め段々と、又ジャミルの地が出て来てしまっている……。
「うん、そんなに慌てないでよお、それにしても、今日は随分と
アイシャ意地汚いねえ、あんなにがつがつご馳走食べてたのに……」
「うるさいってのよっ!もう遅いんだからっ!乙女の部屋に
いつまでも野郎が居座るんじゃないってのよっ!……チョコ
置いたらさっさと戻ってよ!」
「ねえ、ジャミル……」
「何だっ!?あ……」
「……やっぱりねえ……」
ジャミル、等々ダウドに乗せられ返事を返してしまう。が、
すぐに開き直り、腕組みをし、ベッドの上にドスンと座り
あぐらを掻いた。
「何がやっぱりねえだっ!追っかけ音次郎じゃねえんだよ!お前、
いつから気づいてた?」
「うん、昼間は流石にびっくりしたさ、あんな気持ち悪いジャミル……、
見た事なかったよお……、うきうきルンルンで掃除するなんてさあ、
おえ……」
「……ル、ルンルンで掃除だと?ア、アイシャの野郎~……、
人の身体でええ~……」
自分でも想像してみてジャミルは気分が悪くなる……。
「……で、完全に分ったのは何時からだ?」
「はあ、んじゃあやっぱり、今ジャミルの部屋で倒れてるのは
アイシャなんだね、成程……、今日、中華料理で食事してた時だよお、
だってあんなの見たらさあ、誰だって不自然だと思うでしょ……?」
「……むう~」
「オイラは長年ジャミルの親友やってるからさ、何とか分ったけど、
ホークは酔っぱらってるし、バーバラとシフは階段落ちの後遺症としか
思ってないみたいだし、はあ、呑気だねえ、グレイはどうでもいい様な
作品名:zokuダチ。セッション16 入れ替わり編 作家名:流れ者