zokuダチ。セッション17 冒険編1
「わたしも、にんげんになって色んな事覚えたよ、いろはと一緒に
色んなことにチャレンジ出来て、すっごく楽しいんだ!よしっ、
で~きたっ!ひまのおしり、ホラ、こんなにきれいになったよっ!」
「にへええ~……」
「ねえ、ジャミルお兄さん、オラのおしりも綺麗?」
「……アホッ!汚ねえケツ人に向けんなっ!」
〔げんこつ〕
「……ボオオ~、はな、でた」
「はいはい、チーンしてね」
ボーちゃんの鼻をティッシュで拭いてやるのがアイシャの仕事と
なりつつもあった。今度はこむぎが交代し、ひまわりをおぶって
休憩は終わりとなる。
「……ひま、おもい~……」
「たやいやいっ!」
「……え、も、もう取り替えちゃったの……?」
「たりめーだろ、たかがおむつ交換に、んな時間かかっかよ……」
「……え~、うう~……」
もう少し休めると思ったのか、絶望に打ちひしがれたダウドの顔……。
「行こう、どんどん歩かなきゃ、先は遠いよ……」
アルベルトがダウドの肩を叩いて励ました。
「……えーっ!ううううー!!」
何だかんだ言って、やっぱり一番我儘で困るのは、ダウドかもしんねと、
ジャミルは思った。ゴールはまだまだ先が見えず前途多難である。
「……ねえ、アル……、オイラ達、歩き出してどれくらい時間立つ?
も、もう、3時間ぐらい立ったよねえ~?……相当歩いたよねえ……?」
「今、丁度歩き出して1時間ぐらいだよ……」
「ま、まだそんななのかあ~、とほ~……」
段々と、奥地に入って行くにつれて、道も登り坂が多くなり、
ダウドの不満も爆発していくのである。
冒険編5 ヘタレ、爆発する
一行はモンブラン山、山頂のドラゴン谷を目指し、只管山道を
歩き続けるのであったが……。
「ね、ねえ、もうそろそろお昼じゃないかなあ……」
「だからなんだよ……」
ダウドの方を振り返りながらジャミルが喋る。
「貰ったおにぎり食べようよ……」
「あのな、ま~た休む事かよ、そればっかだなっ、
オメーはよっ!」
「……だ、だって、しんちゃん達もいるんだよ、
……可哀想じゃないか……」
「あい~?」
しんのすけとボーちゃんはともかく、ひまわりはこむぎに
おぶわれているので平気である。
「別に、オラ平気だよ、今のところは……」
「ぼく、も……」
「ダウド、チビ達だって我慢してんだぞ、いい加減にしろよ……」
「……オイラはまだみんな小さいし、心配だからって思って……、
何だよお、ジャミルのアホ……」
「ぴい、ダウド、頑張って……」
「はあ……」
チビに頬を舐めて貰って励まされ、仕方なしにダウドも再び山道を
歩き始めた。
「はあ、暑いわ、本当に……」
「アイシャ、平気かい?ダウドに清水出して貰う?」
「うん、アル、大丈夫よ、有難う……」
「あんまり無理しちゃ駄目だよ……」
「ええ……」
(……何だか、ジャミルの姿のアイシャにも普通に慣れて
来ちゃったなあ……)
そんな二人の様子を見ていて、気になったのかジャミルが口を開いた。
「じゃあ、もう少し登ったら休憩しようや、ダウドもそれでいいか?」
「う、うん……」
(なんだよお、さっきオイラが休憩しようって言った時はあんなに……)
そして、少し平らな道に出る。休めそうな場所であり、そこで
休憩を取る事にした。
「ダウド、水出してくれ」
「あっ、うん……」
アイシャが紙コップに8人分とチビ、シロ用の清水を注ぐ。いろはと
こむぎが2人で出発前に作っておいたストック分のミルクを哺乳瓶で
ひまわりに飲ませた。
「朝に熱いお湯で作っておいたから丁度いい温度になってるね、
ばっちり!」
ちなみに、野外用のケトルは寺から借り、こむぎのサックに入れている。
「アンっ!」
「シロもおいしい?よかったーっ!」
こむぎに冷たい水を飲ませて貰っているシロ、嬉しそうである。
「ね、ねえ、おにぎりは?……まだですか?」
揉み手をしながらダウドがおずおずとジャミルに聞いてみる。
「あん?突貫野球小僧の丸井か?」
「違うよおっ!住職さんに貰った焼きおにぎりだよおっ!!」
「分ってるよ、ムキになんなよ……、けど、これは駄目だ、
今は食べない……」
「え~っ!何でさあっ!」
ダウドが立ち上がって口を尖らせて文句を言う。
「ダウド、これは夕ご飯の分なんだよ、だから今は食べるのはよそう」
「アルまで……、そんな事言ってたら食べられなくなっちゃうよ、
只でさえ暑いんだから……」
「だから爺さんも気を遣ってくれて、焼きムスビに
してくれたんだろうが、まあ、早めに夕飯にすっからよ、
今は俺が持ってきたビスケット食おうや」
ジャミルはリュックからビスケットを出すと、皆にも食べる様に勧めた。
(……昼ご飯はビスケット、そして夕飯は、焼きおにぎり、
こんなの耐えられない……、明日はどうなるのかなあ……、
そして、普段我儘ばっかなのに、どうしてこういう時は
いい子ぶんのさ……)
ジャミルから一枚渡された薄いビスケットと、しんのすけを交互に
見つめながらダウドが肩を落とした。
「さ、又歩き出そうぜ、今の時期は天候も変わりやすいしな……」
ダウドを除くメンバーが立ち上がったが、ダウドはそのまま
置石に座ったまま動こうとせず。
「お~い、ダウドよう……」
「先に行ってて、オイラはもうちょっと休んでから行くから……」
「……分ったよ、けどあんまり遅れないで来いよ?」
「うん……」
ダウドは、寺では我儘連発だったしんのすけが意外と文句も言わず、
道中皆に付いてきている事に何となくコンプレックスと劣等感を
抱いてしまっていた。それもわずか小さな5歳児に……。
「やっぱり、来るんじゃなかったよお、大体ジャミル達が
悪いんじゃないか、いっつも騒動に巻き込んでさ、身体なんか
入れ替わらなければ……」
そしていつも通り始まる、いじけと後悔の念……。
「……ジャミル、そろそろ様子を見に行った方が……」
結局、あれから先に上に行った他のメンバーは途中でそのまま動かず、
ダウドが登ってくるのを待っていた。
「いや、いいよ……」
「ジャミル……」
アルベルトが心配するがジャミルは首を横に振る。
「チビ、頼みがあるんだけどさ……」
「ぴ?なあに?」
「お前の友達のドラゴン、此処まで呼べるか?」
「呼べるけど、どうするの?」
チビが首を傾げ、不思議そうな顔をする。
「もしもの場合、ダウドをマンション近くまで送って
欲しいんだ、……迷惑掛けちまうけど……、頼めるか?」
「ぴきゅ、……それは大丈夫だけど……」
しんのすけははっとし、こむぎの後ろに隠れる。
「や、やだゾ!オラ、絶対帰んないもん!」
「ハイハイ、おめえの根性は認めてやるよ、最後まで宜しくな……」
「ブ・ラジャー!」
しんのすけ、びしっとジャミルに敬礼する。
作品名:zokuダチ。セッション17 冒険編1 作家名:流れ者