zokuダチ。セッション18 冒険編2
「……ホントにもう、みんな、知らないよお……、どうなっても……
けど、ご迷惑お掛けすると困るので、オイラやっぱり帰ろうかな……」
「……ああんっ!?オメーこの後に及んでまだんな事言ってんのか……?」
「……嘘だよお、そんな、アイシャの顔でガン飛ばして睨まないでよお、
チンピラジャミル……」
やはり今一踏ん切りの付かないヘタレである。
「小さい子に負けてるんだから、どうしようもないなあ、ダウドは……」
「アル……、でも無理もないわ、ダウド、ごめんなさい、私達の為に……」
「えっ?い、いや、アイシャまで……、冗談だから、気にしないで、
あはは、あははは!」
「……さて、ダウド君の冗談が判明した処で先進むかね」
「行くよ、ダウド」
「……はい、行きます」
ジャミルとアルベルトが歩きだし、その後にひまわりを背負った
いろは、こむぎ、アイシャ、チビ、しんのすけ、シロとボーちゃんが続く。
「また本当に此処にちゃんと戻って来れるのかなあ~……、
ううう~……」
名残惜しそうにダウドが洞窟の入り口を眺めた…。そして、約一時間
位歩いた処に大きな穴が見えてきた。あれがレッドドラゴンの言っていた
穴なのだろうか。
「あそこか、もう行き止まりだし、どうやら此処でのゴールらしいな……」
「ひ、ひいっ!?」
ダウドがおったまげる中、ジャミルが率先して穴まで走って行った。
「……この先に……」
「未知の世界へと続いているのかしら……」
「おお~……」
「……あなの、なかに……、いしが……」
「ねえよ……」
ジャミルに突っ込まれるボーちゃん。メンバーは一斉に暗い穴の中を
覗き込む。……やはり、穴の中は暗くて何も見えない……。
「自殺行為だよお、やっぱやめようよお!」
「ダウド、お前はやっぱ嫌か、分ったよ、これ以上無理に一緒に
来てくれとは言わねえ、だから、今ならまだ間に合う、帰っていいぞ……」
「オイラは皆の事を心配してるんだよ!未知の世界に行けたとしたって……、
第一帰る方法があるのかもどうか……、いじいじいじいじ……」
「……だから帰れって言ってんだろっ!俺達はもう覚悟を
決めて此処まで来たんだっ!チビ達だって来てくれるって
言ってんだ!皆の気持ちを無駄にするのなら、早く戻れっ!」
「……オイラそれも嫌なんだよお、だってさあ~……、うしうじうじ……」
「もうこうなったらっ!みんなでいっしょにダウドを穴に押し込めて
早くいっしょに飛び込んじゃおうよっ!」
「……乱暴はよくないけど……、でも、本当にいいのかな……」
「いや、いろは、戸惑わないでくれ、……こむぎの言う通りかもだ、
……皆、申し訳ねえけど、力を貸してくれ……」
「……ダウド、本当にご免なさい……!」
「直ぐに僕らも行くからっ!……我慢してっ!」
「「せーのっ!!」」
「キャーーアアああーーーー………!!……化けて出てやるううーーっ!!」
再び始まったダウドのヘタレ我儘に、一同呆然とするが……、
こむぎの意見を取り入れ、ヘタレは皆に押さえ付けられ、
トップバッターで強制的に穴に叩き込まれ悲鳴と共に暗闇に
消えていった……。
「じゃあ、俺らも行くか……、けど、本当に大丈夫か?アル、
チビも……、俺達の為に……」
「もう此処まで来ちゃったしね、……今更帰るとか来た意味ないよ」
「チビ、冒険大好きゅぴ!」
「有難う、アル、チビちゃん……」
アイシャが微笑むと、アルベルトとチビも笑顔を交わす。そして、
全員一呼吸置くと、一斉に穴の先へと飛び込むのであった……。
「……どうやら、着いたらしいな……、っと……」
一番最初にジャミルが立ち上がり、周囲を見回す。
周りは川であり、一行は孤立した小島に不時着した様だった……。
「ちょっ、進めないじゃん、これじゃ……、何なのさ、これ……、
はあ、それにしても酷い目に遭ったなあー!ンモー!」
次に起き上がったダウドが早速文句を言う。強制的意見を提案した
……こむぎの方をちらっと見ながら。こむぎは子犬に戻っており、
いろはの腕の中できょとんとしていた。
「わん?」
「海きゅぴ?」
「川よ、チビちゃん……、でも、本当にこれじゃ……」
先へと行ける道が見つからない為、アイシャも困リ果てるが……。
「……かわの、なかに、いしが……」
「あっても駄目だっつーの!」
「ボオ」
ボーちゃんは石の匂いがするとどうにも興奮するらしい。
「おお!あんな処にイカダが置いてあるゾ!」
「はあ?……本当だ……」
しんのすけの声に耳を傾けてみると、いかにもな、わざとらしい
感じで岸にイカダが置いてあった。
「そうか、これに乗って川を下って行くのかな……」
「げっ!あ、アヤシイよお!お約束過ぎるって!!」
アルベルトが言うと、ダウドが嫌々をする……。
「イカダ下りですか!テレビとかで見た事あるけど、私、本物って
初めて、凄いねっ、こむぎっ!」
「わんわん、わんだふるー!」
いろはとこむぎは初めてのイカダ下りに大興奮である。
「またっ!どうしてなんでもかんでもワンダフルになるのっ!!」
「でも、これで川を下るしか他に方法がないわ……」
「でもねっ、アイシャっ!川の先には何がある?お約束でっ!……滝だよ、
滝があるんだよおお!!」
つまり、ワンパターンで100パー、滝つぼに落ちるであろう、……と、
いう事をダウドは主張したいらしい。
「けどな、このまま此処にいてもどうにもなんねんだよ、
俺は行くから……」
そう言うと、ジャミルはイカダの方へ向かって歩き出す。
「私も乗る……、チビちゃん、おいで、抱っこしてあげる」
「きゅっぴ!」
「僕も行くよ……、此処に居ても仕方ないもの……」
「……アルまでええええ~……」
「じゃ、私も乗りますね!しんちゃん達もおいで!こむぎはしんちゃんと
シロちゃんをお願い、私はボーちゃんとひまちゃんを担当するね!
「わんっ!」
こむぎは少女モードになるといろはと共にイカダに搭乗する。
「ほほーい!う~ん、これはよいフトモモですなあ~……」
「アンっ!アンっ!」
「もう~、しんちゃんのえっち!くすぐったいよ~!」
しんのすけとシロコンビはこむぎの膝の上に乗る。……幸せすぎで、
顔がにへえ~状態。
「よいしょっと、こっちは準備万端でーす!」
「ボ……」
「やいやい!(かかってこい!)」
「分ったよお、行きます、オイラも行きますうう~、とほほ~……」
いろははひまわりを負ぶうと、ボーちゃんを膝に乗せる。
観念して折れて、ダウドもイカダに乗り、一行、イカダを漕ぐ者も
いないまま、いい加減にそのまま川を流されていった……。
「……皆さん、さようなら、これが三途の川への道のりです……、
あ、さいなら、さいなら、さいなら……」
「またっ!縁起でも無い事言わないでよっ、ダウドっ!」
「ぎゅっぴ、ぎゅっぴ!」
作品名:zokuダチ。セッション18 冒険編2 作家名:流れ者