ヒロアカ世界でありそうな事~人気調査~
「うん、私も教えて貰った事があるよ...確か、何処かの知らない人達のラブコメに登場する脇役だったかな?名前も無いモブって感じの...」
「それがお前の全てって訳じゃないだろ?」
「......ありがとう」
錠助のさり気ないフォローに照れ臭そうに微笑む萌。
「でもよ...厄介に思われているのは何なんだ?調が“個性”で得た情報で他人を見下したりしているのか?」
「表向きはそういう風な態度は取らないよ...でも」
「でも?」
「調クンも正義感が強い処があってさ...“個性”で知った情報で許せないと思った相手を潰した事が何回かあるのよ」
「潰した?」
「うん、未来で犯す悪事を知られた事で皆から犯罪者扱いされたり、過去に犯した悪事を暴露された事で学園から去った人がいるよ」
「過去で犯した悪事は解かるが......未来で犯す悪事ってのはどういう事だ?」
「調クンの“個性”は未来予知でも過去視でもないからランダムなんだよ」
「あぁ、時間軸がバラバラって事か!」
「私が登場するって話も社会人になった時の出来事らしいし...」
萌は調によって潰された人間にとっては言いがかりに近い物も在った事も説明した。
「悪事ってどんなのがあったんだ?」
「私が知ってる限りでは虐めで相手を自殺に追い込んだって人と友達のいない女の子をガラの悪い先輩に上納するって奴だね」
「そりゃあ...同情出来ないな」
「うん」
そんな話をしながら二人は教室へと戻って行ったという。
【始まり】
「ねぇ、おばさん」
「うん?何だい?四世さんトコの調くんだよね?」
調が小学校一年生の時の事だった。“個性”が目覚めたばかりの頃の調は他人の顔を見ると浮かんで来る不思議な文字の正体が解らずに悶々としていた。そんなある日に近所に住んでいる中年男性『原沢勝博』の顔を見たら気になる情報が浮かんでいた。それは赤字でこう書かれていた。
《強姦魔》
《ホモ野郎》
《幼い弟の前で集団で美少年を輪姦したクズ野郎》
《反省しても遅い》
《お前みたいな変態の子供には生まれたくないな》
《親になる資格無し》
《本当に罪悪感を覚えているなら速く自首しろ》
《名前も無いクズモブ野郎なんてどうなろうが知った事じゃない》
と幼い調少年でも理解出来る程の強い悪意が籠められていたのである。言葉の意味は解らなかったが、警察云々という言葉で原沢が悪人だという事は理解出来た。原沢は調と同年代の息子がいる真面目な雰囲気の男性でそこそこの企業に勤務しているサラリーマンである。だが、調は両親の教育から虐め等を自分からしない程度には正義感の強い子供で地頭が良かった。なので、近隣の大人で強そうな人間を味方にして警察に通報して貰う事を思い付いた。それで調は近所に住んでいる主婦の中でボスママ的な存在である中年女性へと話しかけた。ちなみに他にも主婦がおり、調の母親もいる。
「あのね...聞きたい事があるの」
「調?林原さんに何を聞きたいの?」
「なぁに?おばさんに何を聞きたいの?」
「あのね...勝利クンのおじさんの顔を見たら変な言葉が見えたの」
「勝利くんのおじさん?原沢さんの事?」
「変な言葉?何だい?それは...」
「『強姦魔』」
「「「「へっ!?」」」」
「『ホモ野郎』」
「ちょっ!調!?」
「『幼い弟の前で集団で美少年を輪姦したクズ野郎』とか他にもある」
「......マジかい?」
顔が引き攣っている林原の言葉に頷く調...周囲で主婦達がザワザワとしている。
「四世さん...これは調くんの“個性”で得た情報みたいだね?」
「そうですね...調、何時から見える様になったの?」
「一週間前...顔を見ると見える様になったの」
「確か...“個性”を診断する為の健診はまだだったわね」
「ちなみにおばさん達にも見えるかい?」
「うん、お母さんには何も見えないけど、おばさんには見えるよ」
「どんな感じだい?」
「『あげまん』『下手な男よりも男らしい』『理想の上司』『少し怖い』『一番好きな主人公』って書いてある」
「主人公?誉め言葉があるのは嬉しいが、どういう意味だい?」
「でも、原沢さんよりはマシじゃないですか?」
「あのぅ...」
「うん?何だい?白鳥さん」
「思ったんですが...四世さんとこの息子さんの“個性”ってその人の他人から向けられた感情を言葉にして視る能力じゃないでしょうか?」
「確かに...自分の事をホモ野郎だの言わないね」
「主人公ってのや理想の上司というのも林原さんの事をそう呼んで慕っている人がいるって事じゃない?」
「じゃあさ...原沢さんの旦那さんってそういう事をしたって事?」
「うわ...子供を、ましてや男の子に集団でそういう事をしたの!?」
「そんな事をした人が近所で普通に暮らしていたの?最低じゃない!!」
周囲にいる主婦達は口々に騒いでいる。それもそうだろう...彼女らは原沢が集団暴行した美少年と同年代の子供のいる母親なのだから
「ねぇ、警察に相談した方がいいんじゃない?何時頃の話なのか判らないけど、そういう事をした人って絶対に同じ事をするわよ!!」
「そうよね...ましてや、原沢さん達の様子じゃバレなかったみたいだしね」
「でもさ...幾ら“個性”社会でも子供の見た情報だけで警察が信用するかしら?」
「そう云えばさ...何処かの大学で未来予知の“個性”持ちの青年が同級生達が女の子に集団暴行するってのを大学や警察相手に主張したけど、人権の問題で聞き入られず、結局、事件が起きちゃったって話が無かった?」
「あぁ!あった!あった!!アレはムカついたわね!!」
周囲の主婦達が言い合っている時に調の母親が息子の肩に手を置いて尋ねる。
「調、他には何か無...えっ!?」
「!?どうしたんだい!?四世さん?」
林原さんに声を掛けられた彼女が振り向くと...恐る恐ると声を発した。
「えっと...私にも見えるんです」
「何が?」
「林原さん達の顔に文字が...多分、息子と同じ物が」
「そうなの?」
調の母親が息子から手を離すと...見えていた文字列が消えたのだ。
「えっ?消えた?」
「次はどうしたの?」
調の母親は息子から手を離したり、触れたりしながら答えた。
「あの...どうやら、息子に触れていると同じ物が見えるみたいなんです」
「そうなのかい?調くん、おばさんも触れていいかい?」
「うん」
「確かに見えてるね。白鳥さんの顔に何か、誰かの感想みたいなのが見えてるよ」
「えっ!?そうなんですか?」
「あぁ、『可愛い』『桑原とお幸せに』って書いてるよ」
「えっ?桑原くん!?」
「誰?旦那さんとは違うよね?」
「高校時代の同級生です......今、思うと私の事が好きだったかも知れない人ですかね?」
「あの...」
「何だい?天野さん?」
「私、前に特別な眼を持つ“個性”持ちで自分の視覚情報を他者と共有出来る人がいるって聞いた事があります。調くんもそうなんじゃ?」
「じゃあ...警察の人達に伝える事が出来るね」
作品名:ヒロアカ世界でありそうな事~人気調査~ 作家名:ブロンズ・ハーミット