ヒロアカ世界でありそうな事~人気調査~
林原がそう結論を出すと...周囲の人々は頷いた。それから、主婦達は調を連れて警察へと行き、彼らへと事情を話したのだった。原沢がどうなったのかは調は知らない。ただ...原沢一家は調達が住んでいる街から引っ越して行った。
3:【制裁】
「では...今日の授業はこれまでです」
「「「「さようなら!先生!!」」」」
「......」
調が小学校6年生の頃だった。彼は様々な経験から自分の“個性”がどういう能力なのか?をある程度は理解していた。ヒーローになったり、実生活で微妙に役に立たない能力だが、それでも調にとっては無くてはならない“本能”に近い“個性”であった。その為、調に他人を判断する上で非常に“個性”に依存した子供になっていた。その為、
「......(偽善者め...)」
調が六年生の時に在籍していた2組の担任である女教師『飯沼裕美子』の事が嫌いだった。飯沼は人当たりが良く教育熱心なタイプの教師で周囲からの評判が良かったが、調の眼には“読者”達の嫌悪感に満ちたコメントが文字となって浮かんでいた。
『虐め加害者』
『クラスメイトを自殺に追い遣った人間のクズ』
『どうせ...自分がした事を忘れて生きてんだろ?』
『地獄に落ちろ』
『虐めてる相手を孤立させる為に相手の友達のペットを毒殺した狂人』
『最低人間』
『社会のゴミ』
飯沼が過去に犯した罪を弾劾する言葉であり、それらに影響された調は彼女の事を非常に嫌っていると同時に恐怖も覚えていた。それはそうだろう...気に食わないという理由で一人の人間を孤立させた挙句に自殺へと追い遣った人間である。近くにいる限りは機嫌を損ねたら自分もそうなるかも知れないのだから当然である。おまけにこの頃の調は基本的に自分自身の眼よりも“読者”達の事を信用していたのである。両親にも相談はしたが...飯沼は学園内で自分から率先して損な役目を担当する様な人間なので人望があったのと彼らは調の“個性”に依存した性格を若干厄介に思っていた事で逆に説教をされてしまった。
『それだけで他人を判断するな』
『先生にそういう過去があるのかも知れないけど、今の飯沼先生もちゃんと見てあげなさい』
両親の言う通りに“読者”達による情報は絶対ではない。例えば...高校時代の事をスポーツ漫画の主人公という役割を担っていた人間が調のいる世界で題材となったスポーツをしないで高校時代を過ごしたという事もある。つまり、飯沼が高校時代に虐めをした挙句に誰かを自殺に追い遣ったという過去は幾多の可能性の話なのである。
「(だけど...そういう事をする可能性のある人間なのは確かじゃないか!!)」
反抗期に入り始めた調は素直にそれを受け入れる事が出来なかった。そして、調は基本的に問題が少ない生徒だったので飯沼に必要以上に世話にならなかったのも拍車を掛けている。その為、結果的に調にとって飯沼はそれだけの人間なのである。そうして...調が悶々としている間に飯沼を自分の世界から排除出来るチャンスが到来したのである。
「飼育小屋のウサギが死んでる!?」
学園内にある飼育小屋の中で飼っていた兎が毒餌で皆殺しにされていたのである。それを聞いた調は即座に飯沼の顔が頭に過った。飯沼は過去に虐め被害者の友人が飼っている犬を毒殺した人間である。だから、その時に味わった快感を再び味わう為にやったのだろう...と調は考えた。例え...犯人が飯沼でなくても...奴にダメージを与える事が出来れば構わないともこの時の調は考えていたのである。調は飯沼を告発する為に立場の強くて信頼出来る大人を頼ろうと思った。
「PTA会長をしている三門くんのおじさんに頼もう」
調のクラスメイトの父親であり、当時のPTA会長を務めていた三門貴志(40)は平行世界でかなり人気のある少年漫画の主人公だった男性である。ジャンルは不良アクション漫画だったが、ギャグ寄りの健全な作風で明るく元気な性格の好漢である。現在も彼の性格は変わらず、調はそんな三門のおじさんが大好きだったのである。ストックしている飯沼の映像を伝達すれば味方になってくれるだろう...と思った調は三門君のいる教室へと向かって行った。
『私は犯人じゃありません!!』
『そうですよ!飯沼先生はそのような...』
『高校時代に行ったのでしょう!?それとも違うと言う気ですか!?』
『......はい、高校時代の事は本当です』
『私も知っています...ですが、飯沼先生はそれから反省して生徒達に親身となった教育を...』
『だから!そんな過去のある人間が教壇に立つ事自体が問題だと言っているのです!!』
『仰っている事は御尤もですが...本人は反省していますし、法的にも罪を償っています』
『私は自分と同じ過ちを子供達に犯して貰いたくないんです!!』
『あなたにそんな過去があるというだけで子供達はあなたが怖いんです!!』
『そうですよ!自分もそんな目に遭うかも知れないという不安から私達に教えてくれたんです!!』
『!?』
「おはようございます...」
数日後の朝、教室へと入った飯沼はゲッソリとした様子であった。どうやら、調から奴の過去を知ったPTA役員達に相当な突き上げを喰らった様である。流石は虐め加害者...自分は平気で他人を攻撃出来ても己が攻撃されたら脆いモノである。教壇に立った飯沼が生徒達へと視線を向けると...彼らの様子がおかしい事に気付いた。そわそわしながら様子を伺っている生徒、冷たい眼で自分を見ている生徒達という感じで好意的な感じではない。そんな中で一人の少年が手を上げた。調である。
「はい!」
「四世君?どうしたの?」
「先生は何時?学校を辞めるんですか!?」
「えっ!?どうして?そんな事を聞くの?」
「だって、先生が飼育小屋の兎達を殺したんでしょ?昔、他の人のペットを殺したみたいに!」
「!?......何で?」
唖然とした表情で固まっている飯沼を他所に調は席から立ち上がると...教壇で棒立ちになっている“偽善者”へと歩いて行った。此方へ敵意を滲ませた表情で近付いて来る教え子に恐怖を感じている。そして...調は飯沼に近付いて奴の手を掴んだ瞬間だった!
「えっ!?」
飯沼の眼前が真っ暗となり、暗闇に無数の眼と口が現れた...眼は飯沼は蔑む様に見下ろしており、口は嘲笑を浮かべているのが解かる。そんな眼と口が飯沼の周囲180°に出現していた!そして、口が開いて“偽善者”に向かって声を発した。
『クズ女』『ゲス女』『人間のクズ』『人殺し』『虐め加害者』『てめぇも自殺しろ』『他人を地獄に落とした奴も地獄に堕ちろ』『ゴミ女』『こういう奴に限って何もかも忘れて普通に生きてるんだよな』『不幸になれ』『最低人間』『消えろ』『一生...石を投げられて生きろ』『ペット殺しの狂人』『人の心が無い』『非人間』『死ね!』『死ね!!』『死ね!!!』『死ね!!!!』『死ね!!!!!』『死にやがれ!!!!!』
「嫌ぁぁぁあああ!!!!!!赦してぇぇぇえええ!!!!!」
作品名:ヒロアカ世界でありそうな事~人気調査~ 作家名:ブロンズ・ハーミット