zokuダチ。セッション19 冒険編3
「あなたも入浴なのですね、あっ、私、ユウと云います、宜しく!」
「はあ、どうも……」
「もう、何でもかんでもメイドさん押し付けようするんだからっ!
嫌になっちゃいますよねっ!あはは!」
ますます何がなんだか分からなくなり、ジャミルはそう挨拶を
返すしかなかった。
「ところで……、アンタ何歳……?」
一応ジャミルが聞いてみるが、ユウはきょとんして笑顔を向け、
返事を返した。
「12歳でっす!」
「どおりで……、な……」
「お姉さんも此処の領主様の、新しいお妃さま候補に
選ばれたんですよね?でなきゃ、こんな豪華なお風呂
入らせて貰えませんものね、きゃはは!」
「……い、今……、なんと申しました?お、お妃……???」
「ええ、この街の領主様のですよ」
「そうか、……ここって、領主の屋敷か、成程……」
「候補って言っても、此処に御呼ばれされた以上、結局は皆
選ばれると思うんですけど……」
「ちょっと待て、それって、ハーレムじゃねえかよ……、
しかも、……ロ、ロリ……」
ジャミルは更に顔を青ざめ、ちらっと又、ユウの方を見た……。
「そうですね、私達の他にも以前に娶った奥様達がいる筈
なんですけど、誰もお姿を見た事ないんですよ、不思議ですよ
ねえ~、あ、私の家、領主様に借金をしてるんですけど、家が
貧しくてどうしてもお金を払えなくて……、でも、私が此処に
お嫁に来れば借金を帳消しにしてやると言われたもので……」
話は異様な展開に流れて行きそうで、更にエスカレートしていくのである。
冒険編12 温室庭園の秘密とアイシャの決意
風呂から出たジャミルは、ルーゼの手により、再び部屋に戻される。
勿論、シースルーのネグリジェをしっかり着せられ……。
「やっぱ、強行突破だなあ、あの薄化粧女、わりィけど、
ブン殴ってやる……」
「入るわよ、お湯の加減は如何だったかしら?」
再びルーゼが部屋に現れる。今度は食事をワゴンに乗せ、運んで来た。
「どうでもいいよ、風呂に入ってる実感も沸かなかった……」
「まだ機嫌が悪いのね、いい加減にあなたも観念なさいな、
ねえ、あなた……、これが何だか分かって……?」
ルーゼは太い鉄パイプをさっとジャミルの目の前に差し出した。
「な、何だよ……、それがどうした……」
「ふふ、お姉さんがいい物を見せてあげる……」
「!?」
そして、ジャミルの目の前で、鉄パイプを軽く折り曲げ、ポイした。
「どう?分かって?さっき、廊下にいて、あなたの声が聴こえたから
癪に障ったの、この私をブン殴るですって?ふふ、こんなの小手調べ
なのよ、私が本気を出したら、そうねえ……、こんなのもあるのよ……、
ご覧なさいな……」
ルーゼはスーツの懐からマグナムを取り出すと、ジャミルの顔に近づける。
「く……、てめえ……、一体何モンなんだよ……」
「あなたこそ、何かお隠しになっているのではなくて?まあ、
今はいいわ、後で徹底的に調べ上げてあげるから……、そうねえ、
元殺し屋……、今はこの屋敷の旦那様のボディガード、表向きは
優秀な秘書って処かしらね、まあ、逆らわない方が身の為よ、
さ、分ったらさっさと食事をして頂戴な!私は忙しいんだから!」
ルーゼはジャミルを鋭い目で睨みながら部屋を出て行った。
「……今度は殺し屋かよ~、うう~、この話いつからこんな
過激になったんだ、エスカレートし過ぎだっつの……、最初の
時が懐かしいなあ……」
出された食事は本当に豪華な物であったが、ジャミルは
どうしても手を付ける気にならず。しかし、食わなければ
何をされるか分からないので、困って唸っていると……。
「ア……、アイシャおねえ、さま……、えへ、えへへ……」
「……ユウ?」
鍵が掛かっている筈のドアが再び開き、ユウがひょっこり顔を出し、
後ろからルーゼが再び現れる。
「この子があなたを気に入ったらしいわ、お風呂で仲良く
なったんですってね、暫くの間、この部屋にこの子を一緒に
同居させるわ、その方があなたも大人しくなるかも知れないし、
丁度いいわ、仲良くしてあげて頂戴、それじゃ」
ルーゼはユウの分の食事も一緒に運んでくると、再び部屋に
鍵を掛けた。
「お~い……」
「アイシャおねえさま、宜しく、又閉じ込められちゃいましたね、
でも、おねえさまがいるから、ユウは平気です……」
「その、お姉さまつーの、やめれ……」
「じゃあ、アネゴはどうですか?だって、おねえさま、男前で
かっこいいんですもの~、私、惚れちゃいそうですう~、ん、
でも、もう惚れてますう~……、アネゴっ!」
……又、困った事になったとジャミルは思った。
「いや、やっぱ好きに呼んでいいよ……」
「そうですか?はあ~、お腹空きましたね、食べましょう、
食べないと元気が出ません!」
「俺はいいよ、とてもじゃねえけど食べる気に何かなんねえ……」
「じゃ、じゃあ、おねえさまが食べないのなら私も食べませんっ!」
「気を遣わなくていいって、俺に遠慮せず食えよ……」
「いやのす!ユウはおねえさまと一緒じゃなきゃいやなのす!」
「……のすって……、分ったよ、食うよ……」
「きゃー、やった!おねえさまと一緒!」
ジャミルが観念し食事をし始めたの見て、ユウも喜んで
一緒に食べ始めた。
「う~ん、美味しいですねえー!おねえさまー!」
(なんかこの子も大分ブッ壊れてきてる気がするなあ~……)
食事はなんと、高級霜降り肉ステーキだっだが、ジャミルは
餌を食わされている様で気分がムカムカし、味も何も全然
感じていなかった。
「ねー、美味しいですね、おねえさま!」
「全然……」
「きゃあー!はっきり言い切るおねえさまってやっぱり素敵!」
天真爛漫なユウに呆れつつも、さっきよりも不思議と気分が
落ち着いている事にジャミルは何だか変な気持ちにもなった。
「もぎゅ、もぎゅ、ところで、おねさま、知ってますか?」
「知らねえ、今度はおねさまか、おねさまって何だ……」
「ん~っ!話を言う前に返事をしないで下さいっ!このお屋敷の
温室庭園の事です……」
「あ?外にあるやつか?」
「ハイ、ここのお屋敷の領主さまが趣味で育てている
珍しいお花や植物が沢山あるんだとか、噂によると危険な
植物なんかも育てていると言う噂もあるんですよ」
「あんまり興味ねえなあ、まさか……、蜜飲んだりすると
心と体が入れ替わる花……、なんてのはないよな……」
「わかりません、でも此処の領主さまの事ですから、うっかり
ちゃっかり育てているかも知れませんよ、何せ街中でも
変わった趣味で有名な変な領主さま……」
「……ユウ?おい、ユウ……?」
「ぐうぐう……」
ユウはフォークを掴んだまま、食事の途中で眠ってしまっていた。
「疲れてんだな、無理もねえか、こんな小さいのによ、いきなり
こんなとこに連れて来られて……、冗談じゃねえよな……」
作品名:zokuダチ。セッション19 冒険編3 作家名:流れ者