zokuダチ。セッション19 冒険編3
ジャミルはユウの手からフォークを離させ、お姫様抱っこすると
自分のベッドにそっと寝かせ、自身は足を投げ出し床にゴロ寝する。
「……謎の庭園か、もしも、もしも……、本当に其処に……、
俺達の探している花があるのなら…」
早く皆には会いたいが、段々と、もう少し此処に張り込んで、
庭園の秘密を探ってみるかという気持ちも表れて来たのであった。
そして、再び仲間サイド
「無茶だよお!アイシャっ!」
「危険すぎる、僕も賛成出来ない……」
「ダウド、アル、お願い、分かって……、ジャミルと会うには
この方法が一番手っ取り早いのよ……」
「わたしも……、アイシャに危ないことはしてほしくないよ、
でも、そう決めたのなら……、わたしもそうすると思う、大好きな
ヒトを助けるんだもん……」
「こむぎちゃん、君まで……」
「でも……、やっぱり危ないですよ……」
いろはも不安が拭えず……。アイシャが考えた作戦とは。ジャミルの姿で
女装してジャミルが捕まった場所まで一人で行き、荒くれのゲスに
自ら捕まる事で、ジャミルの居場所まで連れて行かれる……、という
作戦である。アルベルトとダウドは猛反対するが。こむぎは賛成派らしい。
「ダウドから聞いたの、ジャミルはおんなのヒトのかっこうするのが
好きなんでしょ、……変わってるんだねえ、……いろはとわたしじゃ、
顔を覚えられてるから……、ね?おんなのヒトに化けたジャミルって、
とってもわんだふるー!だと、思うよっ!それにね、おけしょうした
ジャミル、わたしも見てみたいのっ!ね、いろはっ!」
「……え、ええ、……私も……、ちょっと見てみたい……、
かな、あはは……」
……既にダウドの所為で個人情報が彼方此方にばらされている
ジャミ公であった。
「そうなの、ジャミルは女装すれば凄く綺麗だから、絶対に
誰だか分らないし、大丈夫だと思うの……」
「……アイシャさん……、……」
いろはは心配そうに再びアイシャの方を見るが。……しかし、
彼女も段々とジャミルの女装姿を想像し、興味が出て来た様子……。
「そうだっ!チビをボディーガードに連れて行けば安全だよっ!
このチームのおとこのコ達って、ちょっとひんじゃくだもん!
……悟もおべんきょーばっかして、もっときんにくつけないと!
ダメだよっ!」
……その頃の悟君。
「……っくしっ!何だろ、風邪かな……、も、もしかして……、
犬飼さんが……、ぼ、僕の事を?……何だよ、大福、その顔は……」
(やれやれ、オレは元々こう言う顔だって言ってるだろ……)
「……こむぎ……、も、もう~……」
「こむぎちゃん、何で僕の方を……、しかも、貧弱って……」
「オイラの方も見てるよお……」
「また、オラの方も見てるんだけど、オラ、まだか弱い5歳児だゾ……」
「……ボ(ポ♡)」
「……はあ、ジャミルの姿で女装して……、ね、う~ん、中身は
アイシャだから、考えると何だか不思議な感じだよお~、……バ、
バレないといいけど……」
「みんな、心配してくれて有難う、これは本当に私達の問題だし、
試練を乗り越えなくちゃいけない時なの、私、絶対にジャミルに
会って見せるわ!」
「アル、大丈夫だよお!チビがアイシャをしっかり守る!絶対ジャミルも
連れて帰る!」
「チビ……」
今一返事をし兼ねているアルベルトをチビも何とか説得する。
「そうだね、僕らのメンバーの中じゃ、チビが一番強いものね、
分った、アイシャをお願いするよ、チビ……」
「ぴいっ!任せてっ!!」
そして、次の日、アイシャは洋服屋で女装用に着るドレス、
ウイッグを身に着け、チビを隠して持ち歩けるカバンを購入し、
仲間が見守る中、再び、あの路地裏へと一人向かう。
(……うう~、本当は凄く出て来て欲しくないんだけど、荒くれさん、
どうか出て来て……)
一方、ジャミルの方も、領主との初対面が迫りつつあった……。
冒険編13 初対面と新しい客
ナンダ・カンダ家 屋敷
「此処で待っていなさい、すぐに旦那様と面会よ……」
ルーゼは、此処の屋敷の主の部屋らしき場所の廊下に、ジャミルを
含む娘達を並ばせ、自分は部屋に入って行った。
「け、クソ領主と遂にご対面かよ!どんなツラしてんだか
汚えツラをしっかり拝んでやらあ!」
「キャー、おねえさまっ、聞こえちゃいますう~!でも、やっぱり
はっきりと物を申すおねえさまって素敵っ!それにしても、私達以外にも、
他にもお妃さま候補がいらっしゃったんですねえ……」
「ああ、スゲエのがいるな、マジで選んだんか、あれ……、
ふざけてるとしか思えねえけど……」
ジャミル、ユウの他に、3人候補がいるらしく、その内の一人は、
ブスでデブだった……。
「おっほーっ!腹減ったーっ!飯食わせろーっ!ほっほほっほ!」
「ブウ子、少し静かにしろっての、うるせーんだよ、オメーはよ……」
「わ、わ、わたしい~……、き、きいんちょううう~
しちゃいますううう~……」
……ますううう~……、の娘は典型的なメガネっ娘らしかったが……。
「ああっ、此処にもおねえさまがいた、素敵……」
ユウはブウ子と呼ばれた娘に悪態をついた娘に近寄って行った。
「あん?何だい、アンタ……」
「は、初めましてっ!私、ユウと申しますっ、其処のおねえさまの
アイシャさんと一緒にお妃さま候補に選ばれましたっ、宜しく
お願いしますっ!」
「アイシャ?ああ……」
不良っぽい娘がちらとジャミルの方を見、ジャミルも軽く頭を下げた。
「はっ、……随分なお嬢様だねえ、……あたしらとは格が違うか、成程……」
「いや、見た目で判断すんなよ……」
ジャミルは不良娘の前に立ち、腕を組み、足をおっぴろげた
立ちスタイルをした。
「どうりで……、まあ、此処に連れて来られるのは、話によると
変な娘ばっかり言う噂だからな、無理もねえわ……」
「……にゃ~んだとおおお……?んじゃあ、おめえだって
その部類に入ってんじゃねえか……」
ジャミルは踵を返し、不良娘を睨んだ。
「キャー!おねえさま、やめてっ!でもっ、二人のおねえさまが
対決を……、何て素敵なのかしらっ、ああ~……」
「おい、ユウ……」
「ああ~、おねえさまあ~……」
「だ、駄目だこりゃ……」
「おっほ!おっほ!おっほ!」
「きんちょうしてえええ~、お、おしっこもれちゃいますう~……」
……確かに、ジャミルを始めとする変な小娘達の集まりであった。
「お待たせ、面会の時間よ、……さ、中に入って頂戴、
旦那様がお待ちよ……」
(……キタ、ついにキタ……!)
廊下に出て来たルーゼの言葉に一同緊張が走る……。
「何か食わせろ!おほっ、ほっ、ほっ!」
……約一名、緊張が走っていないのもいた……。
「さあ、最初はあなたからどうぞ、アイシャ……」
「言われなくても分かってるでございますわあー!……べえー!」
作品名:zokuダチ。セッション19 冒険編3 作家名:流れ者