zokuダチ。セッション19 冒険編3
ジャミルはルーゼにアカンベーをすると、遂に領主の部屋に入って行く。
「……相変わらず、下品で変な子ね……」
「お、おねえさまあ~……」
ユウも心配そうな面持ちで部屋のドアを見つめた……。
妃候補エントリーナンバー1 アイシャ(ジャミル)
「君がアイシャ君か、成程、可愛い顔をしている……、初めまして、
世はこの、ナンダ・カンダ家の領主である、お見知りおきを、娘よ……、
此処の暮らしは気に入って貰えただろうか……?」
領主は、口髭の生えたダンディな背広の紳士で、一見見ると、
とても人柄の良さそうな感じではあったのだが……。
「全然!……それより、早く此処から出せよ!ダチも待ってんだからさあ!
迷惑なんだよ!人を急に誘拐なんかしやがって!テメエ、犯罪だぞっ!」
ジャミルはきっぱりさっぱり、領主だろうが何だろうがお構いなし、
遠慮せず言い切る。
「……成程、ルーゼに聞いた通りの大馬鹿娘だな、……これは良い、
くくく、ますます気に入った、ふふふ、おじさんは、君の様な変で
変わった子が大好きだ……」
「な、何……っ、う……」
領主はジャミルの顎をくいっと掴むと自分の方に向けさせた。
「君とはいずれ又ゆっくりとお話したい物だ、カクテルでも飲みながらね……」
「やめろっ……!く、ポマードくせええっ……!」
「一つだけ忠告しておこう、此処の街、土地の権力はすべて我が
ナンダ・カンダ家の物だ、例え警察でさえも我らには逆らえないであろう、
従って何をしようが自由なのだ……」
「そうかい……、サツもあんたと仲良しでグルって訳か、
……汚ねえな、ふざけた家門の名前の癖に……」
「無駄な抵抗は止める事だ、さあ、次の娘との面会が控えている、
ルーゼ!」
「はい、旦那様……」
ルーゼが再び部屋に入って来る。
「残念ながら、今日の彼女との面会は終わりだ、実に残念だが、
又部屋に閉じ込めておくように……」
「分りました、さあ、部屋に戻るのよ……」
ジャミルはルーゼに連れられ、部屋を後にした。
候補エントリーナンバー2 夢見るロリ娘 ユウ
「……こ、こんにちは……、あっ、あのう……、この旅は……、
じゃなくて、えーと、この度は、えーと、えーと……」
「君は貧しいながらもお家の手伝いをしているのであろう、しかし、
安心しなさい、君が此処に嫁いでくれる事をちゃんと約束出来れば、
ご家族の生活も保障するから……」
「ほ、本当ですかっ!?お、お家に……、お金を入れて
貰えるんですかっ!?」
「うむ、……心配しなくてもよい……」
「うわあーっ、りょ、領主さまっ、あ、ありがとうございます……」
「ふふ、精々、お礼はハネムーンに備えて心掛けておくように……、
では、下がってよいぞ……」
「え?ええ……?」
「さあ、来るのよ、ご挨拶はもう終り……」
「はあ……?」
ユウも不思議そうな顔をし、部屋を後にする。
(羽ムーン、……羽ムーンてなんでしょ、月に羽が生える事かしら……、
今度おねえさまに聞いてみーましょ!)
候補エントリーナンバー3 暇人ブウ子
「何か食わせろ!じゃないと、お前も食っちゃうぞ!」
「それは困るなあ……、しかし、君が私の処にお嫁に来ると
約束してくれれば、何でも食べさせてあげるし、御飯の
心配は要らないぞ……」
「よし、ブウ子、お前の嫁になってやる!ほっ、ほっ、ほっ、ほっ!」
(……完全に問題外ではあるが、この際、仕方ないであろう……、
事が済めば……)
候補エントリーナンバー4 不良娘ケイ
「じじい、何考えてんだよ、あたしみたいな親もいない、
親戚も誰も頼るモンもない、いたいけな子を捕まえてさ……、
何企んでんだよ……」
「だからこそ、私は、君の様な子を救いたいと考えたのだよ、
安心したまえ、君が私のお妃になってくれると約束してくれれば、
幸せもちゃんと保障する……」
「あたしは誰も信用なんかしない、いつだって一人で
生きてきたんだから……」
「意地を張るのも最高に可愛らしいね、相当辛い思いをして
きたのだな、早く此処の生活に馴染んで一刻も早く君の心の
氷が解ける事を切に願う……」
「な、なにをっ……!?」
領主はケイの手を取ると、掌にそっとキスをした。
「ふ、ふざけんな……、変態爺……!」
(……微かに顔を赤くしているな、どうやら満更でもない様だ……)
ラスト……、エントリナンバー5 きゃーきゃー眼鏡っ娘
マフミちゃん……
「わ、わたしいいい~……、きゃああああーーっ!!何だか
きんちょうしてえええーっ!!きゃーっ!きゃーっ!!きゃーっ!
きゃーっ!きゃきゃーのきゃー!」
「可愛い子だね、気に入ったよ、宜しく……」
「あ、りがとううう……うう、ございますですふう~っ!!
きゃあああ~っ!!」
(……とにかく変で少しでもおかしい娘なら良いのだ……、ふふふ……)
一体どういう経緯で彼女を連れて来たのか全くの謎だった……。
「ハア、漸く終わったわ、たく、冗談じゃないわよ、いっつも、
これになると私が苦労してなくてはいけないのだから……」
「お、おいっ!ルーゼっ!」
「……ゲス、何よ、そんなに慌てて……、旦那様のお部屋の前よ、
静かにしなさい……」
「み、見ろ、これ……、今日、もう一人カモを捕まえてきたっ……!!」
「……?」
ルーゼがゲスの側を見ると、ロングヘアーの美しい娘がいた……。
「どうだい?上玉だろ、へへ……」
「……っ!」
「ゲス、分かってるの?真面な子は駄目なのよ、少しでも変じゃないと……、
旦那様がお気に召さないでしょ……」
「大丈夫だ、……充分変だ、オラッ!!」
ゲスが娘のおしりに思いっ切り触った……。
「……きゃあーっ!や、やめてって言ってるのようっ!えっち!」
「娘っこにしちゃ、随分とハスキーボイスだ、それにケツも
男みたいにまっ平らでかてえ、な?充分変だろう……?おい、
何ブルブル震えてんだあ~?へっへ……」
「そうね、……変で当り前よ、……だって……」
「お、おい……?」
「……」
ルーゼは脅えている娘の前にツカツカと近寄って行き、
鋭い目で娘を睨むと……、
「……や、やめて……、ああっ!?」
「な、何っ!?お、男だと……?しかも良く見たら……、
何処かで見た顔だ……、あっ!てめえはっ……!!」
「そうよ、おかしいのに当り前でしょ、彼は男よ……、全く……」
……ルーゼはアイシャから引っ手繰ったウイッグを無造作に
ほおり投げ、床に叩き付けるのであった。
(……どうしよう~、もうばれちゃったよ……、ジャミル……、皆……)
アイシャはチビの入っているカバンをぎゅっと抱きしめながら
恐怖に震える……。
冒険編14 再会
「で、ルーゼ、こいつはどうすんだ?このままフン縛って
海にでも流して来るかね?」
(……ぎゅ、ぎゅびいい~……)
作品名:zokuダチ。セッション19 冒険編3 作家名:流れ者