zokuダチ。セッション20 冒険編4
「……隊長っ、大丈夫でありま……、ああああ!?」
「……追っ手のおじさん達!」
「ダメだよっ!……もうこれ以上……!」
ゲスを追って、下級兵士達も屋敷まで追い付いたのであった。
こむぎは身構え、いろはは再びしんのすけ達を抱きしめ強く庇った。
「隊長……、これはもしかして、お前らがやったのか?冗談だよな……?」
下級兵士たちは揃って皆目を丸くし、信じられんと言った表情で
気絶しているゲスといろは達を交互に不思議そうにじろじろ眺めた。
「……俺たちもこいつに悩まされていたんだよ……」
「ど、どういう事ですか……?」
下級兵士の1人が顔を曇らせ、いろは達に話始める。数十年前、この屋敷の
主が豹変した事実を。
主は十数年前に伴侶を失い、失望仕掛けた後、その後に屋敷に訪れ、
秘書を申し出たルーゼ、彼女が来てから主は我を失い、どんどん
おかしい行動に出る様になり、……そして、ゲスもこの屋敷の主を
護衛する為の用心棒としてこの屋敷に駐在した事、しかし……、
その後ますます事はおかしくなっていった。
「ゲスは本当に卑劣で屑なヤツだった、旦那様も何でこんな奴を
屋敷に招き入れたのか俺達は本当に理解出来なかったよ、ゲスは
表向きはこの屋敷と旦那様の護衛をしていたが、……俺達の部隊の
隊長として兵も取り仕切っていた、それは過酷な物だったさ……、
気に入らなければ部下に八つ当たり、殴る蹴るは当り前、この数十年間、
俺達も耐えていたんだよ……、苦しい年月だった……」
「そうですね……、こんな小さな子達にまで平気で手を出そうと……、
心が悲しい人……、なんですね……」
いろはは倒れたままのゲスを哀れみながら子供達をそっと抱擁する。
「なあ、お嬢さん達、こいつの後処理は俺達に任せてくれないか?」
「えっ?」
「俺達が時間を稼いで、又こいつを何処か遠くに捨ててくる、
その間にお嬢さん達も遠くに逃げな、ハア……、何でこんな
とこに迷いこんじまったのか知らねえけどな、気を付けてくれよ……」
「私達にはまだやらなければいけない事があるんです、だから此処まで
来ました!お屋敷でバラバラになった友達を助けなくちゃ!こんな小さな
子達だって頑張ってるんですから!危険は覚悟しています、最後まで
頑張ります!」
「わんわんっ!」
……しかし、ゲスはもはや凶暴な猛獣扱いであった。
「覚悟……、とは?」
いろは達も自分達がこの世界に来たこれまでの経緯を兵士達に話す。
結果的に此処の屋敷の領主を救えるかもしれない事にも繋がった事も
話すと、兵士達は身体を震わせ床にがばっと膝をつき、いろは達にひれ伏す。
「……あ、あのっ、お、おじさん達、顔を上げて下さい!私達、そんなに
大した事は出来てないんですから……」
「いいや、俺達にも出来る事があるんだ、協力する!皆、急いでゲスを
運べっ!目を覚まさない内に!出来るだけ遠くへ!!」
「頼んだぞ、お嬢さん達!」
「はいっ、任せて下さい!」
下級兵士達は図体のでかいゲスを数人で担ぐと大慌てで屋敷の外まで
走って行った。
「それにしても、ゲスとかいうおじさん、おやしきでもみんなの
嫌われ者だったんだね、、いじわるばっかりするからだよっ!いろは、
わたし達も早くジャミル達をおいかけよう!おじさん達ががんばって
くれてる間に!みんなで一緒にね!」
「ブ・ラジャー!」
「たいやっ!」
「ボオー!」
「アンっ、アンっ!」
「よおーし!まいごのジャミルたちさがしパート2、しゅっぱつうー!
わんだふるー!」
「はりきって皆で行こう!」
そして、いろは達と引き離されたジャミル達は、迷路の様な広い屋敷で
いろは達の身を案じてはいたが、慣れない場所で下手に動きまわれば
迷子になる可能性もある訳で、返って危険である。かといって、
いろは達をこのまま頬っておく訳にもいかず、焦って立ち尽くして
いると……、アルベルトが躊躇しているジャミルを励ます様に
声を掛けた。
「ジャミル、僕らは先に進まなくちゃいけない、庭師のお爺さんも
早く助けないと……、不安で心配なのは僕も同じさ、でも大丈夫、
いろはちゃん達ならきっと……、必ず此処まで来てくれる、信じよう……」
どっちみちこのまま立ち止まっていても自分達が動かなければ誰も
助けられない。もう庭師にも時間が残されていないだろう。ジャミルは
漸く頷き、アルベルトに返事を返した。
「アル、分ったよ、いろは達を信じよう、前に進まなくちゃな……」
ジャミル達は不安に駆られつつも、いろはとこむぎのガッツを信じ、
だだっ広い廊下の先を走って行った……。
「チビ、なんかニオイ感じるか…?」
「きゅぴ、あそこ……」
「……下に降りる階段があるよお!」
「地下牢への階段なのかな……」
「くんくん、くんくん、この先、お爺さんの匂いする……」
チビが階段の側を飛び回り、更に匂いを嗅ぎ始めた。
「よし、二手に別れるか!チビ、この先から爺さんの気配がするのは
間違いないんだな?」
「きゅぴっ!うん!」
「……じゃあ、俺とチビはアイシャ達を助けに行く、アル達は
地下牢の方へ回ってくれ!」
「分った!僕らも庭師さんを助けたら必ず合流するよ!」
「……ジャミル達も気を付けて……」
「ああ、頼んだぜ、アル、ダウド!行くぞ、チビっ!」
「きゅっぴ!」
ジャミルとチビが走って行くのを見届けた後、アルベルトとダウドも
地下牢への階段を降りて行った。
「ダウド、この先、まだ何があるか分からないから、君に武器を
渡しておくよ」
「ぶ、武器って、これ……」
アルベルトがダウドに渡したのは……。
「スリッパじゃないかあ……」
「僕らはこの話では一般人の設定だからね、高度な武器を持つ事は
許されない、大丈夫だよ、使いこなせばスリッパも立派な武器になるよ!」
……そりゃ、アンタは普段からそれでジャミルを突っ込みで
バシバシ叩いてる訳だし、使いこなしてるから武器にはなるだろうよと
ダウドは思った。
「でも、アルはどうするのさ?」
「大丈夫、護衛用にシフに貰ったんだ、ほら!」
アルベルトは下げていたカバンから小型の竹刀を取り出し、
ダウドに見せた。
「剣道の試合かい……、まあ、とにかく行かなくちゃね、話が
終わんないよお……」
「よし、行こうっ!」
アルベルトとダウドも庭師救出に向け、地下牢目指して走り出すのだった。
冒険編21 爺さん救助
「……つ、疲れたよお~、この階段一体いつまで……、
目がまわる~……」
「ダウド、皆頑張ってるんだよ、僕らも頑張らないと!」
「ひいい~、勘弁してええ~……」
漸く、長い階段を降り終え、かび臭い地下へと2人は降り立つ。
「はあ、漸く着いた……」
「急ごう、此処の地下牢の何処かに庭師のお爺さんが
監禁されてる筈……、ダウド、どうしたの……?」
ダウドが急にムーンウォーク状態で後ろに下がり始めた。
「何してるんだい、こんな時に……」
作品名:zokuダチ。セッション20 冒険編4 作家名:流れ者