zokuダチ。セッション21 冒険編5
ルーゼはアイシャに噛み付かれた手を摩りながら怒りに満ちた
剣幕で領主の方を見た。
「ふむ、もう構わないだろう、彼女はもう間もなく用済みに
なるかも知れぬのだから、ルーゼ、君の好きな様にしてやりなさい……」
「そう言う事よ、ふふ、旦那様の許可が出たわ、これからお前を
お仕置きしてやる、覚悟しなさいな……、半殺しにしても
構わないと言う事なのよ……」
ルーゼがアイシャにつかつかと詰め寄り、アイシャは壁際に
追い詰められ絶体絶命に陥った……。
「ぎゅっぴいいいーーっ!!」
「……な、何なのっ!?これは……」
「チビちゃんっ!!」
チビがブレスを吐きながら部屋の壁をブチ壊し突っ込んで来る。
その後にはジャミル達の姿もあった。漸くジャミル達が
アイシャを救出に来たのだった……。
「ジャミル!……アル、いろはちゃん、こむぎちゃんっ!!」
「く、くそっ、小癪な!まあいいわ、仕置きは終りね、
仕方ないわ、旦那様……」
ルーゼは一旦アイシャから離れると髪を掻き上げながら
領主の側へと近寄って行く。
「アイシャっ!ごめんな、遅くなっちまって……、でも、
間に合って良かった……」
「ううん、大丈夫だよ……、恐かったけど、私、きっと皆が
助けに来てくれるの信じてたよ……」
「アイシャ、本当によく頑張ったね、もう何も心配しなくていいんだよ、
庭師のお爺さんも無事助けたよ、しんちゃん達も一緒に、安全な場所へと
ダウドに託して連れて行って貰ったんだ……」
「アイシャ!助けに来たよっ!全部終わって無事に帰ったら
みんなでワンダフルおいわいパーティしようっ!」
「こむぎは本当にノーテンキだねえ、でも、本当に無事で良かった、
アイシャさん……」
「アル、いろはちゃん、こむぎちゃん……、有難う……、最後まで
心配掛けてばっかりで本当にごめんなさい……」
アイシャは2人に支えられ抱擁されながら、涙を拭き、皆の顔を
一人一人見つめるのだった……。
「あらあら、皆さま、お仲が宜しくて、もう何もかもが
終わった様な騒ぎね……」
「……ルーゼっ!てめえっ!!」
「びいいいっ!!」
いつでもブレスを吹ける体制でチビが護衛する様に皆の前に立つ。
「来たわね、ドラゴンちゃん、威勢のいい事、いいわ、あなたは
事が済んだら旦那様のペットにいいかしらね、後はもう要らないわね、
……坊やを除いて……」
「ぎゅぴ!?」
「……ぼ、坊や……?」
坊やと言うと、この場にはジャミルとアルベルトしかいない。
2人は顔を見合わせきょとんとした……。
「……漸く会えた、私の妻よ……」
急に領主がのっそりと動きだし、真っ直ぐに怪しい視線を向けた。
その相手は……。
「え、……えええええ?……お、俺っ!?」
「……ジャミルっ!?」
「そうだよ、ジャミル君……、君こそが私が長い間
探し求めていた妃なのだ、やはり君ともう一度
向き合えた事でそれが確信出来た……」
「……此処まで来てえええーっ!何でこういう変な展開に
なるんだああーーっ!!」
「……感じる、あの時、あの娘、アイシャから感じていた心を……、
やはり今は君から微かに感じる……、実に不思議だ……」
……果たして、領主はホモだったのか、本当に変態なのか、
真実は如何に、次回に続く……。
冒険編24 大乱闘
「……冗談だよな、な、冗談だよ……、な?」
「私は本気だよ、君は本当に良く似ている、……私の……」
ジャミルが脅え、後ずさりする中、領主はじりじりとジャミルに
近づきじりじり追い詰める。
「ジャミルさんっ、大丈夫っ!?」
「何処かのヘタレ君みたいになってるよっ、ジャミルっ!
しっかりしろ!」
※ 何処かのヘタレ君:え?
「行こう、皆で力を併せよう!」
「アル、分かってるわ!一緒に行きましょ!」
「そうはいかないのよ、あんた達は邪魔なの……」
ジャミルを助けに行こうとした仲間達の前に、又もルーゼが立ちはだかり
邪魔をするのである。
「……ぎゅぴいいいっ!!」
(一番厄介なのは、やはり、このチビドラゴンみたいね……)
ルーゼは懐から素早く麻酔銃を出すとチビに向けて引き金を引いた。
「ぴ……?ぴいいい……、きゅぴ……」
「……チ、チビっ!!」
「チビちゃんっ……!!」
「何を慌てているんだか、こんな役に立つのを殺すわけないでしょ、
厄介だからおねんねして貰っただけよ、……ユウ!」
「はい……」
アルベルト達が止める間もなく、ユウが素早く動き、倒れたチビを回収した。
「あなた、そのドラゴンを捕獲していなさい、すぐに終わるわ……」
「はい、ルーゼ様……」
ルーゼは麻酔銃をしまうと今度は愛用のマグナムを取り出し、
アルベルト達を睨んだ。
「……ユウちゃん、お願い……、チビちゃんを返して!!」
「私は旦那様、ルーゼ様以外の命令は聞きません……」
「……ユウちゃんっ!!」
アイシャの必死の訴えも無視し、チビを抱えたままユウは何処かへ
姿を消してしまったのだった……。
「クソッ!……ルーゼの野郎っ、チビにまでっ!う、うわあああっ!?」
「愛しているよ……、ジャミル君……、さあ、私と共に2人だけの
愛の世界へ旅立とう……」
……ぷっ、つん……
「……いい加減にしやがれっ!この変態糞爺っ!!」
遂に切れたプッツンジャミル、等々、拳で領主をブン殴り、領主は
窓ガラス付近までふっ飛ぶ。
「……旦那様!?」
「わんわんーっ!」
こむぎ、子犬に戻るとルーゼ目掛け飛びつく。ルーゼは慌てて持っていた
マグナムを床に落とした。
「……く、よくもっ!!どっから入って来た!この糞犬っ!
……ああっ!?」
「私もっ!このまま黙っていられないよっ!えーいっ!」
急いでマグナムを拾おうとしたルーゼに向け、いろはも再び
おしりパンチ。其処へアルベルトも竹刀でルーゼの肩へと
攻撃を叩き込んだ。
「きゃあ!みんな凄いわっ!」
「……おーい、アイシャ……、俺は……?」
燥ぐアイシャに向け、ジャミルは自分の顔を指差した……。
「君はもっとしっかりしなくちゃ駄目じゃないかっ!」
「だってよお~……、気色悪かったんだから仕方ねえじゃん、ちぇ……」
アルベルトに呆れられ、バツが悪そうに不貞腐れジャミルが
ボリボリ頭を掻いた。
「……おのれ、糞ガキ共めが……、よくもこの私に……、許さない……、
思い知るが良い、そして後悔させてやる……」
「ガルガルおばさんを止めるわん!アルベルト!」
「ああ!いろはちゃんとこむぎちゃんは僕の側に!アイシャを頼む!」
「了解ですっ!」
「任せてわん!」
「お相手いたすーーっ!」
アルベルトは竹刀を構え、こむぎはルーゼを威嚇、いろはと共に
アイシャを守りながら彼女を後ろに下がらせる。
「フフ、もういい加減に勇者様ごっこは終わりにするんだねっ!!」
「……きゃああああーーっ!!」
作品名:zokuダチ。セッション21 冒険編5 作家名:流れ者