zokuダチ。セッション21 冒険編5
「きゃわああんっ!?」
「うわああああーーっ!!」
「……アルっ!!いろはちゃん、こむぎちゃんっ!!」
ルーゼが手から光を発した瞬間、いろは、こむぎ、アルベルトも身体を強く
打ち抜かれ3人ともその場に倒れてしまった……。
「くそっ、畜生っ!待ってろ、今、行……」
アルベルト達を助けに飛び出そうとしたジャミルの前にルーゼが現れ、
倒れて気絶している領主を助け起こし、術の様な物を領主に掛け始めた……。
「旦那様、あなたはまだ目的を達していません、こんな処で倒れる
あなたでは無い筈ですわ……、だって、ほら……、目の前には漸く
あなた様の探し求めていた……」
「う、うう……」
「くそっ!余計な事すんなーーっ!婆ーーっ!」
「そうだ、妻だ……、私は新しい妻をこの腕で抱かなければならんのだ、
ふ、ふはははは!」
「な、何ですと……?うわ!」
ジャミルの目の前に領主が再び瞬間移動し、現れた……。
「ぐ、この親父……、無茶苦茶過ぎんだろっ!!」
「あなたは其処で旦那様と遊んでいればいいの、そう、永遠にね……」
ルーゼはそう言うと、再び足をアイシャ達のいる方向へと向け、
つかつかと近寄る。
「ま、待て、ルーゼっ!あっ……」
「男でも何でも私は構わぬのだ、その乱暴な口調、何となく
足りない頭……、傲慢な性格……、何処をとっても私の亡くした
妻にそっくりなのだよ、ジャミル君、私は何としても君を自分の者に
したい、妻の面影が君に見える……、こうして何十年も……」
「お、俺は……、アンタの亡くなった奥さんなんか……」
「私の寂しさを埋めてくれる相手を漸く見つけたのだ、玩具や代りでなく、
放しはしない……」
「あ、あ……、アアア、アア……」
領主の目に見つめられたジャミルは意識が朦朧とし、身体が痺れてしまい、
金縛りにあった様に動けなくなってしまうのだった……。
「……ジャミルーーっ!しっかりしてーーっ!あ……」
「……」
必死でジャミルの名前を叫ぶアイシャの目の前に、腕組みをした
ルーゼも近寄る。
「小娘、あなたはどうするのかしら?」
「何よ、アンタなんか怖くないったら……、どいてよ……!」
「もうあなた一人だけど?お仲間もこの通りだし、ドラゴンも
捕まえたし、バカ小僧も旦那様のお気に入りだしね、ふふ、
震えちゃってかわいらしい事……」
「や、やめてっ!あ……」
ルーゼはアイシャの頬を触ると、頬に自分の顔をそのまま近づける。
「あなたのこの柔らかい頬に、ずっと長い間触れて見たかった……、
旦那様のターゲットがあちらさんだと分った以上、あなたは私が
お相手をしてあげる……、お姉さんがね、ねえ、噛み付いても
いいかしら?もう我慢出来ないのよ……」
「い……いや……、やだ……、助けて……、う、うう……、
ジャ、ジャミ……」
「……アイシャをいじめちゃダメェェェーー!!」
「な、な……っ!?ああああーーっ!!」
倒れていたこむぎが起き上がり、ルーゼに向け、再度飛び掛かると
体当たり、身体を床におっ倒した。急いでルーゼから離れると
いろはの側に戻る。
「……こ、この、得体の知れない糞犬がっ!」
「……こむぎっ!!」
「アイシャはわたし達が守るわん!あきらめたくないよ!」
「そうだね、こむぎ……」
こむぎはいろはの顔を舐め、再び少女モードになるといろはの手を取る。
人間時のこむぎの手は傷だらけであった。……それでもこむぎは、
大好きないろは、アイシャ、大切な皆を守りたかった。
「こむぎ、私達には何の力も無いけど、……でも、最後まで一緒に、
だって私達は……」
「いろは……」
いろは傷だらけのこむぎの手を優しく握ると、微笑んだ後、頷き、
目の前のルーゼを見据える。そして、今度はお互いの手を硬く、
強く、ぎゅっと握った。
「「……絶対に諦めないっ!!」」
「そうだ……、守るんだ、アイシャを……、僕らが守らなきゃ……」
2人の言葉を心に受け、アルベルトも立ち上がる……。
「アルベルトさん、大丈夫ですか?」
「ああ、こんな処でいつまでも、もたもたしていられないよっ!」
「どうして……?あれだけ強い光線を放った筈なのに、何故?
いいわ、ますます面白くなってきたじゃないの……、ふふ……、
こいつらは常識を超えた非常識の変人て事ね……」
「みんな……」
「アイシャさん、絶対守るよっ!!」
「負けないよっ!」
「僕らがもう一度、相手をさせて貰う……」
アルベルトも竹刀を構え、再びルーゼの前に立つ……。
「私は十数年前、妻を失った悲しみに打ちひしがれた……、どうしても
立ち直る事が出来なかったのだよ、そんな私を救ってくれたのが
ルーゼだった、彼女は私の心の中に有る野心が気持ちを押してくれた、
不思議だった……、彼女が側にいてくれれば理性が無くなってしまい、
何でもしてしまおうと思うのだよ、ルーゼは本当に優秀な……、フフフ、
私の最高の私の相棒、秘書だよ……」
(……こいつ、マジでヤバイ、もう目がいってる……、何とか
しねえと……、俺もこいつから逃げねえとやべえかも……、でも、
どうすりゃいいんだよ……、だけど、身体が動かねえよ、くっ……、
もう駄目なのかよ……)
と、……疲れかけてしまったジャミルの脳裏に……。
「さあ、もう何も私達を邪魔する者はいない、共に行こうぞ、愛の楽園へ……」
「……旅立たねえっつーんだよっ、この糞爺!!
いい加減に目ェ覚ましやがれっ、おらああああっ!!」
領主、ジャミルに2度目のパンチを食らい、又もふっ飛ばされた……。
「うぐああああっ!な、何故……、何故なのだ……、う、うう……」
「……アイシャ……、アイシャの事考えたら……、何故か身体が
又動くようになった、ああ、俺……、又アイシャを危ない目に
遭わせて泣かせてんのか、……本当、マジでいつもいつも
ごめんなって思ったら……、急に力が入る様になって、
その……、な……」
ジャミルは顔を赤らめ、目線をアイシャの方に向けると
又誤魔化しの頭ボリボリを始めた……。
「ジャミル……、私……」
「ま、またっ!なんて単純なアホなヤツなのっ、旦那様っ、
……あああっ!」
「よそみしてるおひまはないよっ!あなたの相手はわたし達だよっ、
これ以上邪魔するって言うのならわたし達だって本気出すんだから!」
「もう酷い事は止めてっ!あなたが何を企んでるのか分からないけれど、
……自分の国に帰って下さいっ!」
「……畜生め、本当に小賢しい小娘共め、何の力も持たない
雑魚のクセに、……あの糞犬は……?……それで本当に私を止められると
思ってるの、いいわ、見てらっしゃい、……私の本気を……」
「僕達もそろそろ聞きたい、お前が何者なのかも……、そして……、
領主を洗脳した本当の目的を、いろはちゃんが聞いた通り、お前が
一体何を企んでいるのかもね……」
自分の目の前に立つアルベルトといろは達をルーゼは憎々しげに
作品名:zokuダチ。セッション21 冒険編5 作家名:流れ者