zokuダチ。セッション23(完) いつもの日常編
「……どうしよう、こむぎとジャミル、このままじゃぽんぽこだぬきの
おまんぢゅうになっちゃうわん……」
「コラ!だ、誰が狸……、げっふ!」
「はあ、もう~、ちゃんとそのお腹元に戻さないと明日から
口聞かないからね……」
「うえげ……、ちょ、ちょっと待てよ、アイシャちゃあ~ん、うげえ……」
「これはいっぱいおウンチしないとだゾ……、大変……」
「ボウオ~」
「アンアン!」
「ははは、アイシャにまで呆れられてらあ!皆、又絶対遊びに来てよね!
待ってるから!」
笑いながら、ケイが皆の手を取り、一人ずつ、握手を交わしていった。
「うむ、今度は是非、他の皆さんも連れて来ておくれ、私ももっとこの世界の
沢山の方達と交流を深めたいからね……」
「本当に?いいのかい?そりゃ皆も喜ぶよ!」
「ああ、楽しみにしておるよ……」
そして、一行は領主達に見送られながら、屋敷を後にする。
夜中……、マンションに戻り、皆が自室で就寝している中で、
限度を弁えず、ご馳走を食べまくったジャミルは腹痛で寝られず
苦しんでいた。
「ああ、腹いてえ……、寝ても何してても、駄目だこりゃ、畜生……」
「キシャシャ……」
「ん?何か今、変な声が……」
「ジャミル、ちょっといい、オイラ……」
「ああ、ダウドだったのか、今開ける……」
ジャミルが急いで部屋の鍵を開けると、確かにダウドが立っていた。
「どうしたんだよ、こんな夜中に……」
「うん、なんかね、オイラの部屋に幽霊がいる様な気がして、
寝られなくなっちゃったんだよお……」
「はあ?アホか、お前、……いてて、こっちゃ腹が痛くてしょうが
ねえってのに、んなモンいねえからさっさと戻って寝……」
「何だよお、冷たいなあ~、大体、お腹が痛いのはジャミルが自分で
悪いんじゃないかあ……」
現われたダウドの姿を見て、ジャミルは仰天する。ダウドの背後から、
マリアーヌがぬっと姿を現したからである……。
「ダ、ダウド、お前っ、後ろ、後ろっ…!」
「……何だよお、オイラ、志村後ろ後ろじゃないよっ!……はい?」
「キシャシャシャシャ!」
「……うーわーあーあーあーーーーっ!?」
「バカっ、落ち着けっ!大声出すなよっ、……他の連中が起きるっ……!」
思わず大声を出しそうになったダウドの口を塞ぎ、ジャミルが
落ち着かせようとするが。
「けど、おい……、お前……、何で此処にいんだ……?」
「キシャシャシャシャっ!!」
「あ、おいっ、コラ待てっ!マリアーヌっ!!おいったらっ!!」
まるでジャミル達を構って楽しむかの様に、マリアーヌは高速で動き、
マンションの開放廊下を走って行ってしまった……。
「うわ、こりゃまたエライ事になった……、急いで奴を捕獲しねーと!」
「あ、あわわわわ……、あ、あんなの捕まえるの……?
……勘弁してよおおお~……」
マリアーヌ騒動で、いつの間にかジャミルの腹痛もすっかり収まって
しまったのであった。
マリアーヌを捕まえろ!
……深夜、何故かマンションに侵入したマリアーヌを
捕まえようと奮戦するジャミルとダウドのコンビ2人組……。
「いたぞ、あそこだっ!」
「え、えええ~……?」
「シャシャッ!」
マリアーヌは触手を使い、何処かの部屋の鍵をあっさりと
開けてしまった。ピッキング機能が使えたのは、チビだけでは
なかったらしい、はた迷惑な侵入者である。
「あの部屋は、確か……、緑バカ……?」
「は、早くっ、捕まえないとっ!」
……ぎゃーあーあーあーあー……
「しまったっ、遅かったか……」
ユリアンの部屋からターザンの雄叫びの様な悲鳴が聞こえた……。
「どうしようっ!ユ、ユリアンが食べられちゃったかも!」
「落ち着け、ダウド、あいつも悪い奴じゃないって、
爺さんが言ってたから大丈夫だろ、多分……」
「た、多分~……?」
「とにかく、行って確めねえと!」
2人が急いでユリアンの部屋に向かうと、マリアーヌが上機嫌で
触手ふりふり、部屋から出て来た……。
「シャシャシャシャ!」
「あっ、こいつめっ!」
ジャミルがマリアーヌを捕まえようとすると、マリアーヌは
あっさりと、ジャミルの腕を交わし、ジャンプして飛んで逃げた。
「この野郎、待てっ!」
「ジャミル、ユリアンの無事も確認しないとだよお~……」
「ちくしょう、まいったな、こりゃ……」
ジャミルが唸っている隙に、又マリアーヌが猛スピードで逃走した。
「……じゃあ、ジャミル、オイラがユリアンの無事を確かめるから、
ジャミルはマリアーヌを追い掛けてていいよ?」
「んにゃ、そうはいかねえ!お前だけ楽しようったってそうはいくか!
2人で一緒に捕まえるんだっ!おーい、緑バカー、生きてっかー?
喰われてなかったら返事しろー!」
「とほほのほお~……」
ジャミルとダウドがユリアンの部屋に急いで潜入し、
部屋の明かりを付けると、其処で見たものは……。
「み、緑バカ……?」
いつもの倍以上に、髪の毛がビンビンに逆立ち、気絶して大の字に
ひっくり返り倒れていたユリアンの姿であった……。
「おーい、生きてるか?返事しろ、おーい、返事しねえ、駄目かな……」
「……う~ん?」
ダウドがユリアンの心臓に耳を当て、鼓動を確めてみる。
「……ちゃんと生きてるよ、殺すなよお、ショック受けて、気絶したんだよ、
それにしても、別に身体に損傷も無いみたいだし、目立つとすれば
髪の毛だけかな、ケンザンみたいに尖ってる……」
「まあ、要するに悪戯されたんだな、こいつ、草みたいな髪の色だからな、
仲間と間違えたんだろ、よし、緑バカに異常なしっと、次行こう、次!」
「そんなあっさりと、はあ……」
ユリアンの無事……?を、確認した2人は、再びマリアーヌを探し、
マンション中を徘徊する事態に……。
「夜明けまでに何とか捕獲しねえと、エライ事になるぞ……」
「眠いよおお~……、うう~……、はあー、何処行っちゃったんだよお、
もう外に逃げたかもだよお?」
「……徹底的に探すんだよ、何が何でも捕まえねえと……、おっ?」
そして、次にジャミルとダウドが目撃した物は、何と、なにやら
廊下で揉めている野球馬鹿達の姿だった。マリアーヌを引っ張って
いる谷口、側でオロオロしている近藤、そしてこんな時でも
冷静沈着なイガラシ……。
「……こ、こらっ!丸井を吐きだせっ!」
「あわわ、あわわ!凄い事になったがな……」
「谷口さん、俺、バット取ってきますよ、やれやれ……」
「どうしたんだよー!」
「あっ、ジャミルさん!大変なんです!どうやら丸井がこの変な花に
飲み込まれた様で……」
「なにいいい!?遂に喰われたかっ!おむすびと間違えたんかな、
っと!んな事言ってる場合じゃねえ、おーい、コラッ!んなモン
食っても消化わりィぞ!早く吐き出せったら、おーいっ!」
「シャアアッ!」
ジャミルがマリアーヌをポンポン叩くと、マリアーヌが飲み込んだらしき、
唾液だらけの丸井を漸く吐きだした。
「あー、びっくりした……、って、やいジャミルっ!これはてめえの
作品名:zokuダチ。セッション23(完) いつもの日常編 作家名:流れ者