zokuダチ。セッション23(完) いつもの日常編
しわざかっ!?どう言う事なんでえ!説明しやがれっ!!また変なモン
連れて来やがって!!」
……ジャミル、相変わらず丸井には年上扱いされず、丸井に江戸っ子口調で
非難中傷される……。
「丸井、よさないか、失礼だろっ!どうもすみません……」
「だってえ、谷口さあ~ん……」
「はあ、とにかく無事で良かったよ、知り合いの家から脱走して来て
此処までなんか知らんけど、付いてきちまったらしいんだ……、早く
連れて帰らねーとなんだよ……」
「……たく、夜中に人騒がせな……、ふぁ……、んなモン、ちゃんと
管理しておいて下さいよ、こっちは丸井さんが廊下で騒いでたから、
何事かと、たく……」
どうにも迷惑……、と、言った煙たそうな表情でイガラシも欠伸し、
自室に戻って行った。
「ん……、平和の為やし、もうちょっと飲み込まれてたらええんと
ちゃうか……?あ、やば……」
「何だとお、……近藤……、ほ~お……、オラああああっ!近藤っ、
てめえケツ出しやがれっ!!」
「んあああもうーっ!勘弁っ、勘弁やがなあ……!」
「丸井、ほら、もう部屋に戻ろう、お騒がせしました……」
野球馬鹿達は全員部屋に引っ込んで行った……。
「異様に何か冷静だったね、谷口君とイガラシ君、なんか、もう、
慣れっこって感じでさ、あ、あれ?マリアーヌがまたいないよおっ!?」
「なにっ!?おーい、オメー、ちゃんと捕まえてなきゃ駄目だろうが!
ボケッとしてんなよ、バカダウドっ……!!」
「オイラの所為にすんなよお!とにかく、探さないとっ!」
「シャシャシャシャ!」
「あ、いたっ!」
マリアーヌは2階への階段の前で一旦立ち止まり、ジャミル達の姿を
確認すると、2階へ上がって行ってしまう。
「……おい待てっ!そっちは行くなっつーのっ!」
「はあ~……、オイラもう嫌だよお~、勘弁してえええ~……」
大慌てで2人が2階に向かうと、早速トラブルにぶち当たったのであった。
「すごいねえ~、歩くお花さんかい?何処から来たんだい?
俺の言ってる事分る?」
「ウシャシャのシャ!」
「……あちゃ~……、遅かった……」
ジャミルがこめかみを抑えた。夜中にも関わらず何故かラグナが
廊下を徘徊していたらしくマリアーヌにインタビューしようと
していたからである。
「おい、おっさん!何やってんだよ、早く寝ろや!!」
「ジャミっくんと、ダウーちゃんじゃん、君達こそ何してる訳?
俺はね、この歩くお花さんの記事を書こうと思ってさ、お花さんに
取材してるんだよ!」
「シャシャシャ!」
「……また人を変な呼び方で……、あのな、マリアーヌは歩行出来ても
言葉は喋れねえよ、アホだなあアンタ!」
と、うっかり言ってしまった事で、ジャミルは後悔する事に……。
「おー?へえー、このお花マリアーヌちゃんて言うの?やっぱり、
ジャミっくんのだったの?んじゃあ、直接、ジャミっくんに取材っ!
このお花は何の種類?そもそも何処で手に入れたの?教えてよ!」
「……ああああ~っ!勘弁してくれやああ~!!」
ジャミルも、つい、大声を出してしまうのであった。それがやばかったらしく……。
「……あたしの神聖な眠りを妨げるのは……、誰だい……?」
「おっ?」
「ひ……、ひっ!?」
1階の廊下の方から怒りに満ちた声が聞こえて来た。……誰かがぬしぬしと
階段を上がって此方に向かってくる音がする……。
「!オ、オイラ……、殺気を感じましたので、……これにて失礼……」
「おいっ!ダウドっ、何で逃げるんだよっ、待てこの野郎っ!!」
……静かに、ゆっくりと。足音はどんどん近づいてくる。それは勿論。
「……糞ガキ共早く寝ろおおおーーーーーーーーッ!!」
「きゃあーーいやあああああーーーーっ!!」
拳の刑罰、……×50
「……全く、ふざけやがって、冗談じゃないっ!今回は
軽くしておいたやったけど、次は容赦しないよっ!」
「どこがだあああーーっ!!」
シフは騒いでいたバカを高速連打ゲンコツで成敗。部屋に又
戻って行った。後には殴られて倒れて伸びているジャミルと
巻き添えを食らったラグナの姿があった……。さて、その後、
マリアーヌがどうなったかと言うと、あの後、別に誰にも
迷惑を掛けず、夜が明けるまで何処かに隠れていたらしい。
朝、目にクマが出来たジャミルは漸くマリアーヌを捕獲し、
領主の屋敷まで連れて行こうと外に出た際に、丁度、
マリアーヌを迎えに来た庭師とケイにばったり出くわした……。
「おお、ジャミルさん、申し訳ありません、……昨夜、庭園に
こんな書置きがありましたので、急いでこちらまで来てみたのですが……」
「書置き……?あん……?」
見ると、紙に平仮名で下手糞な字が書いてあり……。
あそびにいってきます、まんしょんへついていきます、うしゃうしゃしゃ
まりあーぬ
「……コレ、マリアーヌが書いたってのかい?まさか、冗談だろ……?」
「でも、書いてあって場所が分ったからあたし達も迎えにこれたんだよ!
もー、あんまり心配させないでよ、マリアーヌっ!」
ケイがマリアーヌに飛びつくと、嬉しいのか、マリアーヌが又
触手を左右に揺らした。
「マジで……、コレ、字ぃ書いたってのかよ、嘘だろ……?」
「では、急ぎ足ですみませんが、儂らはこれで一旦失礼させて頂きますです、
後日、又改めてお詫びに参りますので、マリアーヌ、挨拶しなさい……」
「シャシャシャっ!」
「……」
一人、喰われそうになった奴がいたんだよ……、と、ジャミルは口を
開きたかったが、庭師の爺さんの優しい顔を見ていると、どうにも
調子が狂い、何も言えなくなってしまった……。
「ねえねえ、マリアーヌ、マンションは面白かった?でもさ、夜中は皆に
迷惑が掛かるから駄目なんだよ、今度から遊びに行くなら昼間にしなね!」
「シャシャ!」
……マリアーヌを連れ、庭師とケイが朝日の中へと消えて行く。
その様子を眺めながら、又とんでもねえのがレギュラー入りしやがったと、
今後も唯では済まない状況になるのをジャミルは今から覚悟した……。
オーバーキル
ある日、ジャミルは珍しく黒子に用が有り、自分から市役所に出向いた。
その用事とは……
「はあ、自販機ですか……?」
「そう、うるせんだよ、奴らがさ、マンションに足りねえモン……、
それは飲料水の自販機だとさ、ま、他のアパート前とかでも、
よく立ってるだろ?」
「そうですね、自販機でも置いておけば、他にマンションに入りたい
お客さんの目星にもなりますかね、まあ、考えておきます……」
「頼むよ、じゃあ……」
ジャミルはそれだけ黒子に伝えると、市役所を出て行こうとする。
「ジャミルさん、あなたの方も、常に本腰入れて又新しいお客さんを
捕まえておいてくれないと、困りますよ……」
「わ、分かってるよ……」
又、痛いところを付かれジャミルは頭を抱えた。
そして、数日後、マンション前には飲料水の自動販売機が立った。
作品名:zokuダチ。セッション23(完) いつもの日常編 作家名:流れ者