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魔界と妃と天界と・4

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 天界にもプリニーはいるし、天界で働いているプリニー達は魔界にいる連中より緩いので油断してしまうのはわかるのだが。
「素性を明らかにせん連中をホイホイと信じるなど……」
 しかし、今は糾弾している場合でもない。叱責は大天使様に任せよう、とある意味ブン投げて、溜息を吐いた。





 それから暫しの後。
 得た情報を擦り合わせ、やるべき事を見出した者達はその準備へと入っていた。
「ふん……。結局首謀者の始末はオレ様の仕事か。親父達の思惑通り臭くて少々気に入らんが……」
「いーじゃないですか。お膳立てしてくれたようなもんなんですから。余波は抑えるから、好きにぶちのめせって事でしょ?シンプルで良いと思いますけどねー」
「天使言語にまで干渉するなんて……。ブルカノ様、どうか力を貸して下さいねっ!!手を抜いちゃダメですよっ!!」
「馬鹿にしとるのか貴様は!?わざわざ言われんでもわーっとるわ!!天使長を舐めるでない!!」
 敵をぶちのめすのは魔王と腹心の役目。そして扉の歪みを抑え、修復するのは妃と天使長の役目だ。
 修復が完了すれば敵もそれ以上この世界に干渉はできない筈なので、一刻も早く終わらせねばならないのだが。
「あの腐れ高官共め……クソの役にも立たん……!!」
「逃げたというより弾き飛ばされた感じですから仕方ありませんよ。勿論後でお説教ですけどね!!」
 他に世界を渡る手段も無いので扉を通り魔界の一同と合流はできたものの、三人いた高官達は扉の異変のせいか、どこぞへと弾き飛ばされてしまったのだ。
 大して心配もせず怒りが先にきているフロンとブルカノではあるが、まあ命に別状はないだろう、との判断のもとである。
 そして当然魔王と腹心が、高官共の安否などを気にする筈もなく。
「親父程度に封印される様な奴、オレ様の敵ではない!!」
 首謀者といっても、そこに意思は存在しない。それを突き動かすのは、残った本能とこびりついた情念そのもの。
 ラハール達が対峙するのは、呪いと恨みと憎悪の集合体だ。
 それは禍々しく、他者にも影響を与える様に、質量を伴い、実体となって襲い掛かる。
「ふん、成程な。あの影はこいつから漏れ出たカスみたいなものだったか」
 ラハールの手によって大した手応えも無く塵と化したあの影達は、この本体から無尽蔵に湧き出る憎悪の塊だったのだろう。
 次元の裂け目から溢れ出していたモノも、これの残りカスだったらしい。あちらの方は形にもならなかったが、それなりの毒素は出ていた。どちらにせよ、放置していいものではない。
 禍々しい闇を纏うそれからは、産み堕とされる様に黒く昏い影が幾つも這い出てくる。
「うえー……趣味悪ぅ……」
 げんなりした様にエトナがぼやくが、きっちりと一匹残らず斧で塵にしているのだから流石である。
「悪魔的と言えば悪魔的かもしれんがな……。こんな辛気臭い傍迷惑な奴はオレ様の魔界にはいらんぞ」
 ぞろり、と不気味な音を伴い出てきた影を魔力弾で吹き飛ばしながら、ラハールもうんざりした様に呟いた。
 だってこいつら弱いけどうぜえ。声には出さずともそう思っているだろう事は誰の目にも明らかだった。
 そんな中。
「やっと出てこられたっスー!!」
「あんた達!?」
 影に呑まれたプリニー達がどういう原理か修復途中の扉の隙間から戻ってきた。
「ああっエトナ様!!俺らやったっス!!こいつら別次元の別魔界の連中っス!!」
「重要な情報っス!!賃金上げてほしいっス!!ボーナスくれーっス!!」
「あ、それもう知ってるから」
「ガーンっス!!」
「そんなーっス!!」
「それに正確には、親父や大天使に倒された恨みの寄り集まったものが送られてきただけだ。本体の方は親父共が抑え込んでおる」
「なんとーっス!!」
「訂正までされたっス!!ボーナスがーっス!!」
「うっさい!!今までサボってた分キリキリ働きな!!」
「ひどいっスー!!」
「エトナ様の鬼ーっスー!!」
「うるせー!!」
 そしてプリニー達はお空に輝く星となった。








 ──その一方。

 哄笑か、狂笑か、はたまた嘲笑と呼ぶべきか、壊れた笑い声が響く。
 渦巻く感情に押し出される様に、その場に声が響き渡る。
「全て滅ぶがいい!!」
 別魔界の怨念を身に纏い、己のものと同化させ。
 魔力を膨れ上げさせたその姿は、異形へと変貌しかかっているというのに、気にする事もなく。
 ただ、吠える。

「いい趣味だな」
「……あ?」
 唐突に聞こえた声に、振り向いた先。
 教会で働く悪魔の姿があった。
「……あのクソ野郎のオトモダチじゃねえか」
 にいぃ、と醜悪に嗤い、馬鹿にした様に言うが、その笑みに別段反応もせずに。
「違うな。……俺はただの、教会にいるガキ共の護衛だ」
 さらりとそう言いながらも既に臨戦態勢に入っているのは、教会からマデラスを捜しに来ていた一人。
 兄悪魔だった。

「あいつは生まれ変わっても!!死を撒き散らして恨まれ呪われ憎まれるべきなんだよ!!この俺に恥をかかせやがって!!だからあいつは、苦しんで苦しんで苦しみ抜いて、望まれて死ぬべきなんだ!!」
 血走った目で、禍々しい腐りきった嗤いを響かせるその様は、寧ろ哀れにも滑稽にも見えた。
 だが、悪魔に同情などという感情は、基本的には無い。
 なので、
「……だっせ」
 鼻で笑う。とことん馬鹿にした顔と声で、怒りを煽る。
「ああ!?」
「そうだな、低脳馬鹿にもわかりやすく言うのなら……U・ZA・I☆」
「ぶち殺したらぁぁ!!」
 生来の気質か、悪魔としての性質か。
 とてもわかりやすい挑発にまんまと乗ったその馬鹿に、兄悪魔は呆れつつ。
 ここ最近の彼にしては珍しい、悪魔らしい凶悪で好戦的な笑みを浮かべた。



「おおおおおっ!!」
 雄叫びを上げながら、兄悪魔が突進する。
 響く声と、身体に纏わせた膨大な魔力に気圧される様に一瞬たじろぐが、しかしこちらも全てを破壊し尽くそうとした悪魔だ。
 他がどうなろうと構わない。それは、報復さえできれば、復讐さえ果たせれば。どうなろうと、気にもしない。
 ──この身でさえも。
 そんな厄介な覚悟を持ち、兄悪魔の攻撃を真正面から受け止めようとするその悪魔に、兄悪魔が口の端を吊り上げた。
 やはり悪魔は好戦的だ。戦いは、命の遣り取りは、血沸き肉踊る。
 普段の退屈とも言える程の平和で穏やかな日常も悪くはないが、本能が求めている。
 あの天使長がどう思うかは知らないが、これは仕方無い。
 それでも根底にはマデラスの為の戦いだという思いも確かにあって。
 影響されたか?などと思いつつ、苦笑しつつ。
 兄悪魔は、殆ど捨て鉢になっているその悪魔が全魔力を集めている事に気付きながらも、スピードを緩める事無く突進した。

 閃光。
 爆発。
 爆風。
 膨大な魔力同士の引き起こす暴力的な熱と風とが支配するその場に、新たな人影が飛び込む。

「ばっかじゃねえのぉ!?」
 ヒョロ長い体躯。不健康そうな顔色。
 誰に向けてか、不機嫌マックスで罵りながら。
 その手に魔力を溜めているのは、弟悪魔だ。
 ──術の制御が得意だなどと評されていた。
作品名:魔界と妃と天界と・4 作家名:柳野 雫