zoku勇者 ドラクエⅨ編1 性悪天使降臨
「あのままでは襲われてしまうぞ!人間達を守るのが我ら天使の役目!
共に行くぞ、守護天使ジャミルよ!」
「へーへー……」
何か嫌だ、あざとす、普通に呼んでくれた方がいいなあと思いつつ。
ジャミルとイザヤールはモンスターが2人に近づく前にさっと撃退。
無事に2人を守ったのである。こうして孫と祖父は無事にウォルロ村の
門付近まで辿り着いた。
「ほら、おじいちゃん、見てよ、ちゃんとウォルロ村まで辿り着けたよ!」
「おお、どうなることかと思ったが……、わしら、こうして無事に
村まで戻って来れたんじゃのう……」
「もう、おじいちゃんたら、オーバーなんだから……、これも
守護天使様のお蔭だね、私達をいつもちゃんと見守って下さるんだわ、
ああ、守護天使ジャミル様、道中見守って下さりありがとう……、
こうして無事に村へ戻って来れたのも天使様のお蔭です……」
オレンジバンダナの少女、リッカはジャミルの姿が見えていないの
にも係らず、何となく気配を感じているのか、彼のいる方向を向いて
腕を組みお祈りを始め感謝の言葉を述べる。リッカと老人が村の中へ
消えた後、不思議な結晶がジャミルの手の中に落ちて来る。
「……それは星のオーラだ、人間達の我らへの感謝の心が結晶に
変った物だ、その星のオーラを天使界にある世界樹に捧げるのも
また我らが役目、ウォルロ村の守護天使ジャミル、一旦天使界に戻るぞ、
オムイ様に報告せねば……」
だからその言い方やめろと思いつつ、ジャミルは背中の翼を広げ、
再び大空へと舞う。空中はやっぱ耳なりがする、風圧で耳痛えと
感じつつ……。
……星のオーラ。人間達から天使へ、感謝の印と心。天使達はこの
オーラを集め天使界の世界樹へと捧げる。世界樹が育った時、世界樹は
大きな果実を実らせる。その時、天使達は悲願の神の国へと導かれる。
……だが、このオーラが天使界を破滅に導く事を今はまだ2人は知らない。
さて、自分が守護天使として担当する地上地域のウォルロ村へと
降り立った性悪天使のジャミ公。此処での目的は一人で行動し、
人間達から感謝され、星のオーラを集める事。師匠のイザヤールも
側におらず、もう付き添いはいない。
「とりあえず何すりゃいいんだか……、こうして宙に浮かんでると
何か俺、死人みてえ……」
途方に暮れ、空中から村を見渡すジャミル。見事に何も無い平和な
田舎村である。ぼーっとしていると、子供が何やらブツブツ言って
いるのが聞こえた。当然、誰の目にもジャミ公の姿は見えていない。
「何だよ、ニードの奴、村長の息子だからって威張っちゃってさ!
ああ、ジャミル様、もしいるのならニードに少おーしだけでいいです、
罰を与えてやってください!」
(ニードって、確かニートみてえな、犬の手綱みてえな、糞生意気な
リーゼント野郎か?よし、俺が成敗してくれるわ!これで感謝されりゃ
星のオーラが貰えるかもしんねえ……)
貰えないと思うが……、ジャミルはニードを探しに村中を飛び回る。
そして、村の橋の側に屯しているニードと子分を発見する。
(お、いたいた……)
ニードと子分達は何やら話をしている。ジャミルはもっとよく話を聞こうと
ニード達の近くまで飛んで寄って行った。
「しかし、不思議なんだよなあ~」
「それって、例の天使像に書かれてる名前のことっスか、ニードさん」
「ああ、ちょっと前までは、イザ……、何とかって名前だった様な
気がするんだが、急にジャミルになってやがる」
「そうっスかねえ、前からジャミルって名前だったスよ」
「前からっていつからだよ!お前、ちゃんと覚えてんのか!?」
「あれ?あれ?や、やっぱ不思議ですね、思い出せないス……」
「だろう!?村の奴らが変なんだよ!最近の事なのに、皆が前から
そうだと思ってんだ!」
「もしかしたら、天使様のお力とか……」
「バーカ!天使なんかいるワケねえんだよ!天使がいるとか
そんなモン信じてるのは石頭のリッカだけだよ!リッカの奴、
何かあるとすーぐ守護天使様のお蔭とか、ばっかじゃねーの!」
(……)
すぐ近くで話を聞いていたジャミ公は段々腹が立ってきて、
こいつのケツに浣腸を噛ましたくなってきた。
「フン、守護天使って奴が本当にいるってんならよ、このニード様の
前に連れて来てみろってんだ!」
(あーあ、ニードさん、リッカリッカって……、てんで分りやすい
んスから……、天使様にヤキモチ焼いてるんスよね、完全にべたぼれ
っつーか、でも、肝心のリッカは全く気付いてないしで、こりゃ、
まだまだ先行き遠そうっスねえ~……)
「おい、いるなら出て来いよ!返事しやがれ!守護天使のジャミル!
天使っつってもどうせ暇なんだろう!?村の皆の役に立ってみろってんだよ!」
(……コホン、そんなに言うならリクエストに答えてやろう、姿は
見せらんねえけどな、……食らえこのリーゼント野郎!!)
……ブッ!!
「……くっせえ……、俺の前に……突然臭って来た……、毒……ガスだ……」
「あああ!ニードさんっ!どうしたんスかっ!!」
「けーっけっけっ!ざまみろーっ!仕置きはきちんとしたぜーっ!」
ジャミ公の毒ガスを食らったニード。その場に倒れる。もう天使では無く、
完全な小悪魔になっているのだが……。
「さて、星のオーラ……、あ、あれ?貰えねえ、何でだよ……」
人間達を助けた時、感謝されると貰える星のオーラ。だが貰えず、
ジャミ公は不貞腐れる。……当り前である。
「調子はどうだ?ジャミルよ……、頑張っている様だな、この村に
私が訪れるのは、もう要らぬお節介であったかな?」
「……いっ!?いいいいい、イザヤールっ!?」
慌てるジャミル。付き添いはしない筈の彼がまたいきなり目の前に
現れたからである。
(やべえ……、さっきの……、見てねえよな……?)
「何を慌てている?私はこれから地上を回る際、お前に伝え忘れた事があり、
丁度と思い、この村に立ち寄ったのだ……」
「あはは、何だ、そうか……、ほっ……」
「……?まあ良い、生きている人間達を救うのも天使の役目だが、
もう一つ、役目がある、死してのち地上を彷徨う魂を救う事も
天使たる使命、聞こえるであろう、この村のいずこから救いを
求める魂達の声が……、行け!ウォルロ村の守護天使ジャミルよ、
この村と人々を救うのだ!」
「ま、又その呼び方でいう……、へーへー、要するに、幽霊さんにも
救済をね、はいはい……」
幽霊……、ならば、夜……、と、言う事で、ジャミルは昼間出来る事をし、
夜になるのを只管待つのであった。
「誰か困ってる奴いるか~?……俺が困ってんだよ……、ん?」
取りあえず天使の感で何か感じたのか村の教会の方へと飛んで行ってみた。
中ではお婆さんが困って泣いており、シスターに慰められていた。
「……困ったわ、死んだおじいさんに貰った大切な形見の指輪を
無くしてしまうなんて……」
「大丈夫です、祈りましょう、天使様は必ず困っている者達に
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編1 性悪天使降臨 作家名:流れ者