ヒロアカ世界でありそうな事~人気調査3~
「四世が見せてくれた記憶の中のお前...丁度...今の俺と同じ年頃だったよ」
「先生と?」
「あぁ...俺は今35歳で結婚して小学校に上がったばかりの娘がいるよ」
「はぁ...」
「記憶の中のお前も結婚して娘がいるみたいでさぁ......同僚と仕事の愚痴混じりでその事を話していたよ」
「......」
「それから...自分の娘と同じか少し上の子供を殺していたよ...鼻歌混じりにな!!」
「!?」
「そして......女の子を同僚と笑いながら犯して動画に撮影していたな!玩具みたいになぁ!!」
「あああぁぁぁあああ......!!」
「何で!?あんな事が出来る!?なぁ!?何でだ!?答えろぉ!!」
「分かりません!!今の俺には!分かりませぇん!!」
激しい怒りを露わにしながら迫る担任の怒声に荒井は泣きながら叫んでいた!!高校生の荒井翔太でも担任が教えてくれた行為がどんなに酷い事なのかが理屈では分かった。速見先生も今の荒井に比較的近い人間であったが、自分と同年代で同じ妻子持ちの男性が平気で娘と同じ年頃の子供達に対する強姦や殺害を娯楽で行った現場を見せられてた事で本気で怒ったのであった。速見先生は正気に戻ったのか...気分を落ち着けると気を取り直して口を開いた。
「四世君の個性じゃ断片的な事しか判らなかったが...他の人ならお前が所属していた組織の全体像が判るかも知れない」
「......」
「まともな“人間”として長生きがしたかったら......協力するんだな」
「!?長生き?」
「あぁ......お前は物語の中で殺されていたよ...子供達を助けに来た軍隊みたいな人達にな」
「......」
「分かったか?ヴィランは基本的に長生きが出来ないんだ...ましてや...あんな使い捨ての下っ端はな」
「......はい」
速見先生の荒井を視る瞳は“庇護すべき生徒”に対する物ではなく...唾棄すべき“自身と同年代の変態犯罪者”に対する軽蔑と憤怒が籠められており、元々が小心者である荒井は彼の視線を受けて小さくなっていたのだった。この日から荒井翔太という少年...否...男は様々な人々から人間ではなく...“人の皮を被った悪魔”として扱われる様になったという。
「お父さん?どうしたの?」
余談だが...速見先生は家に帰って娘と会った時に泣きながら彼女を抱き締めたという。それから、彼の中に何かが変わった様であり、精力的に仕事をこなす様になり、ボランティアとして孤児達の保護活動にも積極的に取り組む様になったという。
「つまり...翔太は将来的に大規模な組織犯罪に関わる可能性のある人間だという事ですか!?」
「そんな!?うちの子は成績優秀で雄英にこそ入れなかったけど...東大も夢じゃないと言われているんですよ!!」
「そんな彼だから...あの様な組織の人間になったのだと思います」
「どういう意味でしょうか?」
「私が見せられた記憶から息子さんが所属している組織は違法な実験を内密で行っている団体みたいですから...多分、最初は研究員として就職したのと思います」
「では...その団体が何処かを突き止める為...警察に...という事ですか?」
「そうです......あの団体がこの世界にも存在していたら大事ですからね」
「......」
校長は荒井の両親と話しながら荒井翔太の事を汚物を見る様な視線を送っており、同席している学年主任や担任も荒井だけでなく彼の両親にも犯罪者を見る様な視線を送っている。それを感じ取っている荒井は居心地の悪そうに身体を小さく丸めている。
「その...そんなに?酷かったんですか?翔太の未来って奴は?」
「はい......多分、30代を過ぎた頃の話だと思いますが...妻子のいる立場でありながら...あのような悪事の片棒を担いでいたみたいです」
「相当......給料が良かったんでしょうね?それにある程度は自由にさせて貰っていた様ですし...」
「速見君!口が過ぎるぞ!!」
「すみませんでした...」
「「......」」
荒井の両親は息子を犯罪者の様に扱う......聞いた話ではある生徒の“個性”で息子が行うだろう犯罪行為を見せられた教師達の対応に不満を感じつつも怖い者見たさで尋ねる。
「あの...何をしたんですか?翔太は?」
「そうですよ!息子をこんな風に扱われて納得出来ません!!私達にも見せて下さい!!」
「止めた方がいいですよ」
「えっ!?」
「あんなのを見たら......お子さんを“人間”として見られなくなりますよ」
「「なっ!?」」
速見先生の言葉に絶句している荒井の両親に校長が言葉を続けた。
「ご両親のお気持ちは解ります......今はまだやっていない事でお子さんが犯罪者扱いされているのですから」
「「......」」
「ですが......件の生徒の“個性”で荒井翔太君が未来でするかも知れない事を見せられた私達からしてみたら...本当に酷い映像だったんです」
「「......」」
「私にも妻子持ちの息子がいます......教師としても人間としても恥ずべき言動かも知れませんが...」
「「......」」
「あれをやったのが私の息子だったら......私はこの手で息子を殺して命を絶っています!!」
「「!?」」
「こっ...校長!?それは言ってはダメです!!」
「そうですよ!!気持ちは分かりますが!!」
騒ぐ教師達と絶句している両親を尻目に荒井翔太は目と耳を閉じながら俯きながら呟いていた。
「もう......止めてくれよ......!!」
後日......荒井翔太は両親と共に最寄りの警察署へと向かったのだった。其処には調から“記憶”を伝達されただろう警察関係者とヒーロー達がおり、彼らの荒井に向ける視線も非常に冷たかった。そして、調が視た“記憶”の中で荒井と一緒に行動していた同僚男性(共犯者)『高木友男』を並行して捜索する事とした。“記憶”から件の組織は優秀な人間を人為的に生み出す研究をしており、孤児や人工授精で生まれた子供を先天的及び後天的に改造を施しているのは判明していた。そして、組織の末端である研究施設が東北の山奥で発見されたのだった。
「かなり規模の大きい組織ですね......これは長期戦になりますよ?」
「あぁ...海外の警察とも協力関係を構築しないとな」
「えぇ、あの記憶の中にいた共犯者の事を探し当てたら何かが分かるかも知れません」
そして、多くの人々から犯罪者...いや、“人の皮を被った悪魔”扱いされて精神を疲弊した荒井翔太は明智学園から転校する事となった。警察の許可を取った上で一生を犯罪者予備軍として生活する事となる。荒井のした事はあまりに悪質だったので奴が未来で起こす犯罪行為を知っている人達からしたら組織の後ろ盾が無くても何かの調子で同じ事をし兼ねないという懸念があるのである。
「すみませんでした」
「では...お世話になりました」
「はい...此方こそ息子さんを真人間にする為に必要な教育が出来なくてすいませんでした」
作品名:ヒロアカ世界でありそうな事~人気調査3~ 作家名:ブロンズ・ハーミット