zoku勇者 ドラクエⅨ編2 解雇された天使~束の間の休日
「何だよ!」
「……ただ、この完璧な計画にも少し問題があってな、
大地震の後、魔物が頻繁に出る様になっちまっただろ、
……危なくてしょうがないんだよ、と、まあ、そう言う訳で、
お前にも一緒に峠の道まで一緒に行って貰いたいんだよ、
……旅芸人てのは、その、結構武芸とかも得意なんだろ?」
……どっからそんな情報持って来た……、と、思うジャミ公。
まあ、天使の力を大半失っているとはいえ、彼は普通の人間よりは
よっぽど戦えるが。
「要するに私はヘタレですって素直に言えこの野郎!
そうすりゃ付いてってやるよ!」
「……何だとうう~!?誰がヘタレだっ!このお笑い糞芸人めっ!」
まあ、リッカの為になるのならいいかと思いつつ。ジャミルは
仕方なしに再びニードに向けて口を開いた。
「分ったよ、俺も怪我完治後の肩慣らしになるし、身体が
なまっちまってるからな、いいぜ」
「ホントかっ!?よっしゃよっしゃ、流石だぜっ、そうこなくっちゃな!
よし、オレは今からお前の後ついてくからな!あ、この事は村の誰にも
言うなよ、オレ達2人だけの企業秘密だからな!頼んだぜ、
相棒!カメヤマ君!」
「……誰がカメヤマか!しかもその名前相当古いっての、……たく!」
ニードはニヤニヤ笑いながら図々しくジャミルの肩に手を回してくる。
……本当に昨日と偉い態度の変りようである。しかし、峠の道に行くのは
内緒でも、出掛ける前に一度リッカの家に戻って報告する必要がある。
……こんなに仲良しになってしまったらしき……。
「どうしたのよ……、ニードとジャミルが一緒に行動してるなんて……、
何だかまた何かの前触れみたいで怖いわ……」
「そう言う事言うなよお!いやあ~、こいつ、話して見たら意外と
いい奴でさあ~、そんなわけで、オレ、もっとこいつの事知りたくて、
更に分り合う為に一緒にいるのさ!」
「……いてててっ!」
ニードはジャミルと肩を組んで肩に手を回したまま、実にわざとらしい
笑顔を作るとジャミルの肩をバシバシ強く叩いた。
「ふう~ん、何企んでるのか知らないけど、仲良くなったのならいいか、
でもジャミルは怪我の病み上がりなんだからあまり無茶させちゃ駄目だよ!
ジャミルも無理しないんだよ!」
「へへ、分ってら~い、さ、行こうぜ、相棒!改めて村回りだ、
色々案内してやるよ!」
肩を組んだまま、ニードはジャミルをそのまま再び外へと連れ出す。
……そんな2人を、不安そうな……、でも、仲良くなれて良かった様な……、
不思議そうな顔でリッカが見つめていた……。
「さて、んじゃあ、バトルの準備だ、まずは村の道具屋で
武器を買うぞ!」
「武器なんか売ってんのかよ……」
取りあえず一応護衛用の武器は売っていたが、現時点では銅の剣しか
買えず、ニードの分も含め、2本購入。ま、何もないよりはマシかと
自分を励ましてみる……。
「よし!準備も万端、後はっと……」
「……万端ねえ~……」
後は村の門の処にいる守り番をどうにかすれば村から
出られる筈である……。
「……駄目駄目!駄目だっ!村の外には危険な魔物がうようよ
してるんだよ!絶対に通さないからな!さあ早く戻れ!」
正門の処にいたのは、昨日ジャミルを追い返したおっさんの
守り番とは違う、ニードの子分であった。どうやら多少のバイト料で
門番をしているらしい。
「……なーにスカした事言ってんだよ!オレ達は此処を出るんだよ、
さ、どきやがれ!」
「あ、ああっ!?ニードさんっ!?」
子分はいきなり現れたニードにオロオロ……。困って慌てだす……。
「何で……、ジャミ公とニードさんが一緒に行動してるんですか……?」
「うるさい奴だな!偶々峠の道に行く用事が被っただけだよ!なっ!?」
「……一応、そう言う事にしといてや……、いってっ!」
ニードは再びジャミルの肩に腕を回し、子分に向かってピースピース。
……しかし、足もしっかりと踏みつけながら……。
(この……、糞タワシ頭め……)
「はあ、……でも、今外に出るのは本当に危ないですよ……」
「んなこたあ百も承知だよ!いいから早く其処どかないと、
しっぺの刑だぞ!」
「……分りましたよう~、はあ、アンタも大変だな……、ジャミル、
ニードさんの事、くれぐれも頼んだぞ……、アホで困るだろうけど……」
「了解さあ……」
「おいっ!其処っ、何こそこそ話してんだっ!?」
アホなのはジャミルも同じではあるが。少なくともニードよりも
遥かに腕は確かな為、バトル面ではまず心配は無い。
……何はともあれ、漸く村の外へと飛び出した珍コンビであった。
村の外へと繰り出した2人。モンスターが増えていると
言う事で、やはり簡単には峠の道までは簡単に進ませては
くれない。まずはシリーズ毎度お馴染のスライムから
邪魔をされる。幸い、ニードはそれ程足手纏いにならず
何とか戦えるのが唯一の救い。まあ、まだこの周辺は
敵が弱い方だからかも知れないが。
「ふう……、やっぱやれば出来るんだな、オレだってよ、
ふふ、ふっ……、ざまあみろ糞親父……、……あいてっ!!」
岩陰に隠れていたリリパットがいたらしく弓を放つ。弓は
ニードの髪の毛の先端のタワシ部分を突き抜けデコに
ぷすっと命中する。
「何やってんだよ、バカだなあ!ほれっ、デコ出せ!」
「……す、すまねえ……」
ジャミルはニードのデコから刺さった弓を引き抜こうと
してやるが……。
「あいてっ!?……の、野郎っ!!」
「♪ニャ!」
後ろからズッキーニャの奇襲である。ズッキーニャの槍は
ジャミルのお尻を突き刺す。ズッキーニャはジャミルの
お尻に槍を突き刺したまま逃走。怒り狂ったジャミルは
ニードのデコに刺さった弓を抜いてやるのを忘れ、我も
忘れてズッキーニャを追掛けて行った。
「いでー!いでええようーー!!誰かこのデコの弓
何とかしてくれー!」
「♪ニャ~!」
「てめっ、待てーっ!この野郎ーーっ!!」
「……いでえ、いでえよううう!!」
ニードはデコに、そしてジャミルはお尻に槍が……。本格的に
始まったバトルは初回からてんやわんやである。それでもどうにか、
一旦終わった。
「はあ、ズッキーニャの方は何とかブン殴ってやったけど……」
「リリパットはまだまだオレ達LV低いか……、やれやれ……、
な、何見てんだよ……」
ジャミルはニードの顔を覗き込む。早くも疲れてしまっているのか
気になったのである。
「今日はよそうぜ、日も暮れて来たしあんまり遅くなるとリッカも
心配するし、お前の親父もギャーギャーうるせーだろ、ま、明日また
朝早くから動きゃいいんだから、焦る事ねえだろ……、ほれっ!」
「あ、ああ、わりィ……」
ジャミルはホイミをニードのデコに掛けてやる。少しデコの腫れが
収まった様子。
「分った……、今日は村に戻るか……、てか、お前、本当に
いい奴だな……、いや、少しだけだぞ!そう思ってやるのは!
アリの鼻糞程度だ!……わ、分ったか!?」
「……分るかっ!第一アリに鼻糞なんかあるかっ!糞タワシ!」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編2 解雇された天使~束の間の休日 作家名:流れ者