zoku勇者 ドラクエⅨ編2 解雇された天使~束の間の休日
来る必要もなかったって事か、やれやれ……、
もう問題も解決したも同然だな……」
「そうなのかなあ~……」
「ん?何か珍しく難しい顔してんなあ、ジャミル……」
「お腹が空いたんだモン……、それかうんちが出そうで
困ってるモン」
「だから違うって言ってるだろ……、どうせ俺は真面目な
顔は似合わねえよ……」
「にょ、にょお~……」
モーモンの顔を引っ張って横にうにょうにょ伸ばしながら
ジャミルが項垂れる……。顔を引っ張られたモーモンは顔が
横に伸びて変な顔になった。
「ウォルロ村の者よー、一つ取り急ぎ確認したい事があるのだが、
地震の後そちらにルイーダと言う女性が訪れたと言う話は聞いて
いないだろうか?城下町で酒場に勤めているご婦人で、ウォルロ村へ
行くと言って村を出たきり、消息不明なのだ……」
「……ルイーダねえ、知らねえなあ、第一そんな女が
ウチみてえな田舎の村に何の用があるってんだ?」
「そうか、知らないか……、実は彼女はキサゴナ遺跡に
向かったと言う話もあるのだ……、だが、その遺跡へも
いつの間にか通路が塞がってしまって確める方法が
ないのだよ……」
「……キナクサ遺跡……?」
「ジャミ公、お前も耳鼻科行った方がいいぞ……、
キサゴナ遺跡ってのは、この道が開通するまで
使われてた古い遺跡さ、崩れやすくて危ねーし、
モンスターも頻繁に出る様になっちまったしで
今は誰も近づかねーよ、まして女にはそんな遺跡
抜けらんねえだろ、筋肉ムキムキのゴリラ女なら
ともかく……」
「とにかく村人達には間も無くこの道は開通すると
伝えてくれ、それと、出来ればルイーダさんの事も
聞いておいて貰えると有難い……」
「オーケイ、分った!このニード様がばっちり伝えて
おくぜい!さ、戻るか、ジャミ公!」
「ああ……、急がなくちゃな!」
「それにしても、土砂崩れはオレらでどうにかするのは
無理だったけどな、へへ、村の連中喜ぶぞお~!」
「モン~!」
ジャミルとニード、そして新たに加わったお騒がせ
悪戯モンスターモーモン。2人と1匹は一路、吉報を
伝えるべくウォルロ村へと帰省する。
ウォルロ村……
「あ、ニードさん、ジャミル、おかえりなさ……、!?」
「おう、おかえり!ビッグニュースだぞ!」
門の前で守り番をしつつ、2人の帰りを待っていた子分は仰天。
原因は勿論……。
「モン~!」
「……ニードさん、ただいまでしょ!しかも何なんですか!
何でモンスター連れてるんスか!」
「こまけえ事はいいんだよ!それよりさ、聞けよ、オレらの話をさ!」
「途中でダチになったんだよ、ま、こいつはモンスターだけど、素で
人間を襲う様な事はしねえからさ、安心してくれよ」
「はあ……」
「モン、おろしくですモン、モーモン、お話出来るんです、モン」
「おろしく……、宜しくだろ……」
ジャミルにそう言われても、ふよふよ宙に浮かんでいる変な
モーモンを見て、子分はまだ何が何だか分からんですよと
言った感じである。取りあえず、悪い奴ではなさそうだと
言う事は子分は理解した。
「まあいいか、んで、土砂崩れの方はどうだったんですか?
勿体ぶらないで早く教えて下さいよ!」
「待てよ、とりあえず親父に報告してからだ、行くぞ、ジャミ公!」
「へいへい、んじゃ、またな!」
「あっ……」
2人と1匹は村の中へと突っ込んで行った。そんな騒がしい皆様を
見つつ、子分が呆れる。
「話聞けって言ったり、報告は後って言ったり、んっとに、
落ち着かねえなあ、あの人も、ま、ニードさんの言う事だから、
期待しないで待ちますか……」
……村の中を走る2人。ふと、いつの間にかリッカの経営している
宿屋近くまで来ていた。
「珍しいな、今日は灯りが付いてる……、久々のお客さんかな……」
大地震の後、ぱったりと客足が途絶え、リッカは仕事はお休み
していた筈であるが、今日は珍しく宿に灯りが付いているのである。
「本当だ、よしよし、まずはっ!ふふっ!」
ニードは悪戯っぽい含み笑みを浮かべ、リッカの宿屋へと
走って行った。
「おい……、たく、しょうがねえなあ~……」
「しょ~がねーニードモンなあ……」
「おい、あまり余計な言葉真似しなくていいんだよ……」
「モン?」
モーモンに頭を抱えながら、ジャミルもニードの後を追い、
宿屋の中へ……。
「いらっしゃいま……、あっ、ジャミル、それに……、ねえ、
まだニードとつるんでるの?仲が良くなったのはいい事だけど、
ジャミル、疲れない……?」
客が来て漸く店を開けたのかと思いきや、……中はいつも通りの
閑古鳥だったのだが……。
「言ってろ!その内お前もオレに感謝する事になるんだからよ
!へへん!」
「……何がよ、それよりジャミル、さっきからずっと不思議そうな
顔してるね、私がお店開けてるの珍しいって顔してるでしょ……」
「!えっ、い、いや、その……」
「いいのよ、ふふ!例えお客さんが来なくても、これは心構えなの、
何時、お客さんが来てくれてもいい様にね……」
「はあ、お前、マジで偉いなあ~……、頭が上がんねえわ……」
「それよりも……、あれ?その子……」
「モンー!」
リッカはジャミルの側でちょろちょろしているモーモンに気付く。
ジャミルはモーモンと出会った経緯をリッカに説明すると、
すぐにリッカは納得した。
「そうだったの、じゃあ自己紹介、私はリッカ、此処の宿屋を
経営してます、宜しくね、モンちゃん!……お客さんはそんなに
来ないけどね、あはは……」
「モンーっ!のろしくモン!」
「……宜しくだっつーの……」
リッカは微動だにせず、すぐにモーモンと仲良くなる。彼女の
優しい性格にジャミルは心から感謝するのだった。
「でも、中にはびっくりしちゃう人もいると思うから、私が
この子の事、後でちゃんと村の皆にも説明しておくね、心配
しなくていいよ!」
「助かるよ、何から何まで……」
「よしよし、んじゃあ、次はオレの親父んとこだな、じゃあ、
またな、リッカ!」
「おじや!おじやモン!」
「あっ、……おいっ!ったく、じゃあ、又夜にな……」
「うん、行ってらっしゃい……」
リッカに見送られながら、ジャミル達は再び村の中を走り回る。
そして漸くニードの実家、村長の家へと辿り着く。しかし、この後、
とんでもない事になるのをこのアホ2人は知らず。
「……成程な、セントシュタインの兵士達がもう間もなく、
土砂を取り除いてくれる訳か……」
「ああ、この事を知ったら村の連中も安心するぜ!いやあー、
我ながらいい事をしたよなあ、なあ、ジャミル?ははははっ!」
「ん、んー?……ああ……」
「そうか……」
ニードは得意げに村長に峠の道へでの出来事を説明していた。
これで親父も自分をきっと見直してくれるだろう、そう期待に
溢れ、ワクワクしていたのだが……。
「そうか、だが……」
「……?」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編2 解雇された天使~束の間の休日 作家名:流れ者