zoku勇者 ドラクエⅨ編2 解雇された天使~束の間の休日
村長は2人に近寄って行く。……しかし、その顔に笑みはあらず。
〔げんこつ×2〕
「いっ、でええええーーっ!!」
「……いてええーーっ!!……こっ、このっ!」
飛んできたのはゲンコツであった。……ジャミルまで巻き込まれ、
Wで殴られる羽目に……。
「く、糞親父イイイイーーっ!偉業を成し遂げたオレらに
何すんだーーっ!」
「……何が偉業か!2人だけで峠に行くなど危ないに
決まっておろうが!この悪ガキ共めが!!」
「で、でも……、オレらが峠に行かなきゃ分かんなかった事だぞ!」
「別に知らなかろうが、道が繋がればおのずと分った事だ、
……命を危険に晒してまで手に入れる程の情報では無い……、
だからお前達はバカだと言っておるのだ!」
「……バ、バカ……?ち、畜生……」
「俺もかよ……、はあ~……」
項垂れるバカ2人。特にニードはこれで英雄になれると思い、
有頂天でいた。だが、村長を甘く見過ぎていたのである。
「……ギョモンーっ!おじや怖いモンーっ!シャーー……」
「……こ、こらっ!」
ジャミルは興奮して大口を開けようとしたモーモンを慌てて制した……。
「君も……、そんなふざけたぬいぐるみで遊んでないで、
いい加減に仕事を探す努力をしたらどうだ?……いつまでも
うちのボンクラと遊んでないで……」
「……」
「ジャミルう~、……モン……」
「いいのさ……、別に、気にしてねえから……」
「でも、お顔に何かスジが浮かんでるモン……」
「……」
顔の青筋。……明らかにジャミ公がブチ切れている証である。
「畜生……、も、もう一つ話があんだよ、セントシュタインの
兵士から伝言を預かったんだよ、ルイーダってねーちゃんが
この村へ向かったそうなんだけど、行方不明らしいんだ、
探してくれって頼まれてんだ……」
「……その話……、本当なの……?」
「リッカ……?」
「リッカっ!」
……聞き覚えのある声に後ろを振り向くと……、
いつ来たのか、リッカが立っていた……。
「偶々、用があって此処を通り掛ったら、大声が外まで聞こえて……、
気になったから、つい……、それよりも……、ルイーダさんが
行方不明って、本当なの……?」
……村長はウォルロ村の 『バッカモーン!!』 ……かも、
知れない。
「ああ、確かにセントシュタインの兵士がそう言ってたのさ、な、
ジャミル」
「うん……、らしいぜ……」
ジャミルがちらっとリッカの顔を覗うと彼女は何だか不安そうな
表情をしている。
「そう言えば、リッカ君はセントシュタインの出身だったね、
知り合いの方かね?」
「そうだったのか……」
「うん、ジャミルも、黙っていてごめんね……、父さんの
セントシュタイン時代の知り合いに、確かそんな名前の人が
いた筈なんです、もしかしたら、父さんが死んだ事を知らないで、
会いに来たのかも……」
「成程……、しかし、探してやるにも手掛かりが無くては……」
「親父、そういや、ルイーダって姉ちゃんはキサゴナ遺跡経由で
こっちに向かってたんじゃないかって兵のおっさんが言ってたぜ……」
「……それが本当なら我々の手ではあまりにも危険過ぎる……、
リッカ、心配だろうがあまり思いつめんようにな、今日の処は
ジャミルを連れて帰りなさい」
「はい……、分りました……」
「……オホン、儂はこれからこのバカ息子をたっぷりと説教し、
罰を与えなくては……」
「うええええっ!?……親父ィ~、……そりゃねえぜえ、
とほほのほ~……」
ジャミルはどうにか解放されそうであるが、ニードはまだまだの
様である……。
「はあ、じゃあ俺らもう帰るけど、これ、まだらクモ糸、妹さんに
渡してやれよ、約束だから」
「おう、サンキュ~……、もうどうでもいいや、好きにしてくれ……」
ニードは力なくジャミルからブツを受け取る。もう今日の元気は無く、
彼は魂が抜け掛かっていた。そんなニードを心配しつつも、ジャミル達は
村長の家を後にする……。モーモンを連れ、ジャミルはリッカの家へと。
……村長から食らったゲンコツのコブの手当てを受けていた……。
「……いってえっ!」
「我慢するのよ、男の子でしょ?はい、終わりっ!それにしても、
外に出たって聞いた時はびっくりしちゃったよ、でも、ジャミルって
強いんだね……、私が思っていたよりも、ずっと……、モンスターは
大丈夫だったみたいだけど、……代わりに村長さんの所で……、
く、くすっ!」
「……笑うなよ!」
リッカが吹いたのを見て、ジャミルがブン剥れる。
「ご、ごめん……、はあ……」
「ん?」
「何でもない、それより夕ご飯にしようか、モンちゃんの分も
あるからね、もう少し休んだらまた食事運ぶのお手伝いに来てね!」
「ああ……」
モーモンはいつの間にか、リッカがそう呼ぶ為、モンと名前が
定着しそうになっていた。リッカは救急箱を下げてジャミルの
部屋から出て行く。何となく、彼女の様子がおかしいのがジャミルは
気になっていた。ルイーダの話を聞いた時から、明らかに変だった。
心配なのだろうが……。
「モン、人間のご飯食べるのはじめて、楽しみモン~!」
「おい、お前は気楽でいいなあ、……この四角座布団顔!」
「モンっ……!」
そして、居間にて夕ご飯。今日のメニューは特製パンケーキと
ミルクスープ。
「頂きます、モンっーー!!シャアーーーーっ!!」
「うわあ……」
モンは大口を開け、パンケーキをぱくりと一飲み。その凄さに
ジャミルもリッカも釣られて一緒に大口を開けた……。
「おおお、美味いのう、美味いのう、わしゃ、これでいつ、
天国へ召されても大丈夫じゃあ~……」
「お爺ちゃん、変な事言わないのっ、ほらほら、またぽろぽろ
溢してるよ!」
「ありがたや、ありがたや……、処で、今日の夕飯はまだかのう?」
「……今食べてるでしょ、お爺ちゃん!」
「おおお~……、お?ありがたやありがたや、これも
守護天使様のお陰じゃ~……」
「……」
ジャミルは爺さんが段々ボケてきてるのでないかと
少し心配になった。
「あのね、ジャミル……」
ふと、リッカが食事の手を止め、ジャミルの方を覗う。
何か話したい事が有る様である。
「村長の家にいた時からなんか変だったなあ、いいぜ、
俺でいいなら何でも言ってみ?」
「うん、もし良かったらでいいんだけど、……キサゴナ
遺跡へ、頼めないかなあ……、私やっぱり行方不明に
なっているルイーダさんの事が心配で……、だ、駄目……、
ジャミルを危険な目に遭わせてしまうもの、ごめんね、
変な話して、今の話は忘れてね……」
「いや、俺なら……、あ……」
しかし、リッカは立ち上がり先に自分の分の食事の
後片付けを始める。彼女は碌に食事を食べておらず、
パンケーキが皿にまだ残っていた。
「はい、モンちゃん、私の分だけど、良かったらどうぞ、
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編2 解雇された天使~束の間の休日 作家名:流れ者