zoku勇者 ドラクエⅨ編3 新たな出会いと旅立ち
「グウ~、モン……」
「モンちゃんてば、先に夕食のおかずをつまみ食いしてね、
そのまま寝ちゃったのよ」
「こいつ……、何だよこのボテ腹……」
ジャミルはテーブルの上で腹を出してぐーすか寝ている
モンの腹を触ってみる。……お腹はふよふよしてまるで
クッションの触り心地の様だった。
「ジャミル、ありがとう……、心配して来てくれたんだね、
私、昼間はあんなに取り乱しちゃったりして、ルイーダさんにも
申し訳ない事しちゃったよね……」
「ん、いいのさ、誰だっていきなりあんな話持ち込まれたら
困るのが当たり前だっての……」
「……」
ジャミルはそう言いながらリッカの隣の席に座った。代わりに
リッカが席を立つと温かいお茶を淹れてくれた後、再び自分の
席に着く。そしてまた考え込む。
「お茶ありがとな……、頂くよ……」
「うん、……私、ルイーダさんの話を聞いてたら、何が何だか
分からなくなっちゃって、だって、まるで私の知っている父さん
じゃない様に思えてくるんだもの……」
ジャミルは無言でリッカが淹れてくれたお茶を啜る。リッカも
そのまま一旦言葉を止めるがすぐにまた口を開いた。
「ね、ジャミル……、父さんが伝説の宿王だったなんて……、
何かの間違いだよね……?」
「ああ……」
「うん、そうだよね……」
今はそう返事を返しておくしかジャミルには出来ず。お茶を
飲み終えたジャミルは再び席を立つと外へ出て行こうとする。
「また何処かへ行くの……?」
「ちょっとな、気分転換さ」
「そう……、もう夕ご飯は出来てるからね、でも夜だから
なるべく早く帰ってね!」
「行ってくる、モンを頼むわ」
「うん、行ってらっしゃい……」
「うーぐー、……モン、プうう~……」
ジャミルはまだ眠っているモンをリッカに預け、再び外へ。
もう一度ルイーダの所へ行って彼女と話をして来ようと
思ったのだった。
「……?」
「……」
「……うわああーーーっ!?」
「あああーーっ!?」
と、外に出たジャミルは思わず大声を出してしまう。いきなり
宿の前に半透明の商人のおっさんが突っ立っており、目と目が
合ってしまったからである……。
「あ、あんた……、脅かすなよっ!たくっ!」
「びっくりしたのはこっちですようっ!あなた私の事が
見えるんですね!?私とっくに死んでるんですよう!
そう言えばあなたキサゴナ遺跡でお会いした時も確か
私の姿が見えてましたよねえ……?」
「そういや……、確か……」
おっさんに言われジャミルは思い出す。あの時、遺跡に
当然現れ、石像の仕掛けを教えてくれた幽霊の男……、
あの時と同じ人物に間違いは無かった。
「ジャミル、どうしたの?其処に誰かいるの……?」
「あ、やべっ、こっちだ!」
ジャミルが大声を出してしまった為、心配したリッカが
家から出て来そうになってしまう。急いでおっさんの
幽霊を連れ、話をしても大丈夫そうな人気のない場所へと
移動する。
「さあ、ここならいいぜ、話してくれや……」
「全く不思議なお方だ、自己紹介がまだでしたね、私はリベルト、
リッカの父親です……」
「リベルト……、そうか、あんたがリッカの……、
親父さんだったのか……」
遺跡で出会った幽霊。リッカの実家をじっともの悲しそうに
見つめていた。……正体は死んだリッカの父親の幽霊だった……。
「……流行病でぽっくり往ってから早や2年が過ぎた様です、
処で、あなたは……?」
「俺はジャミルだよ……」
「そうですか、ジャミルさん……、んっ、んんーーっ!?
そのお名前は確か、守護天使ジャミル様と同じ名前では
ないですかっ!!もしやあなたは……守護天使様なのでは!?」
???:そこ、ちょっと待ったあああーーっ!!
「……何だい?……うわっ!?」
突然……、謎の発行体がジャミルに向かって突っ込んで来た……。
飛んできた発行体はそのまま近くに有った岩に突進し、岩に
そのままぶつかる……。
「……いったぁ~い……、ちょっとぉ!そこ、ボケッとしてないで
上手くかわしなさいよぉ!……ま、それはいいとして……」
勝手に岩にぶつかった発行体は人の形に姿を変えると突然開き直り
ぶつぶつ文句を言い出す。背中に羽が生えた妖精の様である。
其処まではいいが……、顔は真っ黒、頭に花飾り、金髪、いわゆる
山姥ギャル、ガングロの様な凄まじい派手な容姿であった……。
「……何だよっ、おめーはよっ!」
「聞き捨てならないのは其処のおっさんなんですケド!アンタ今、
この人に向って天使とか言ったよネ!?」
「は、はあ……、何なんでしょう……」
「アタシもそう思ったけど、いまいち確信がもてないのよネ、
第一この人、翼もないし、頭の光る輪っかもないじゃん!変くね?
マジ、チョーうけるっ!おまけにな~んか頭もからっぽでバカっぽそー!」
「おい……、黙って聞いてりゃ……」
「はあ、そう言われれば、確かに……、ですが……、
変と言うならば、あなたも変ですよ……、一体あなたは
どちら様なのでしょう……」
リベルトはジャミルの方を見た後、ガングロ妖精の方も見る……。
「フフン、それを聞いちゃいマス?そうね、聞かれちゃったら
答えないワケにいかないよネ!?」
「別に俺はどうでもいいけどよ……」
「何っ!?アンタチョーむかつくんですけド!?何そのデケー
態度!黙って聞けぇぇぇーっ!!」
「いてててて!あんだよっ、俺はずっと黙って聞いてただろが!
しかもおめー化粧くせーなっ!どっかの妖怪厚化粧オババの親戚かっ!!」
ガングロ妖精はジャミルをポカポカ殴り出す。見ているロベルトは
困ってオロオロ。毒舌小僧とガングロ妖精。何やらどうやら……、
これから先、一層大変な事になりそうである……。
「で、聞いて驚けっ!アタシは謎の乙女サンディ!何とあの
天の箱舟の運転手よっ!」
「は、はあ……」
サンディはジャミルに構わず勝手に自己PRを始めた。そう
言われても、リベルトには何の事だか分からず困っている。
「そうか……、箱舟が墜落したのオメーの下手糞な
運転の所為か?」
「だからアンタうっさいっ!ねえ、このアタシを此処まで
丁寧に名乗らせたんだから、アンタもちゃんとアンタの素性
教えて欲しいんですけド!?どう見てもただの人間なのに
天の箱舟やユーレーが見えちゃうアンタっていったい何者!?
ヘンタイっ!?」
アンタアンタ連発でオメーもうっせえなあとジャミルは思う。
やかましいのでガングロ妖精……、サンディに自分のこれまでの
足取りを全て話した。仕方なしに。
「ふ~ん、あの大地震でアンタ天使界から墜落したわけネ、それで、
気が付いたらこの村にいて、翼やワッカも全部失ってたってコト?
な~んかチョ~信じらんネ……」
「俺だって信じらんねえっての!オメーみてえな口やかましい
生きモンがこの世にいたとかよ、ガングロUMAか……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編3 新たな出会いと旅立ち 作家名:流れ者