zoku勇者 ドラクエⅨ編3 新たな出会いと旅立ち
「何っ!翼やワッカは無くしてるのにタマシイを見る力は
残ってるって、何そのハンパな状態!もし本当に天使だって
認めて欲しいんならタマシイを昇天させてみなさいよ!
それが出来てこその天使でしょ!ホラ、丁度其処にユーレーの
おっさんもいることだし!」
「わ、私……、ですか?そりゃ私だっていつまでもこのままで
いいとは思ってませんが……」
「どうせショボイ未練を引きずってるからユーレーなんか
いつまでもやってんでしょ!ねえ、アンタ、このおっさんの
未練を解決して昇天させてやんのよ!そうすれば天使だって
認めるし、アンタを天の箱舟で天使界まで送ってあげる!」
「おい、んな勝手に……、この野郎……」
サンディはジャミルの返事を待たずどんどん勝手に
話を進めてしまう。相当イケイケで強引な性格なのは
間違いなかった。
「そういうワケで、暫くアンタと一緒に行動するから、
宜しくネ!」
「うええ~……、マジかよう~……」
どうやら、このガングロは暫くジャミルにくっ付いてくるらしい。
勘弁してくれとジャミルはウンザリする……。
「あ、そうそう、アンタの観察記録もつける事にしたから!
……行動見守らせて貰うからネ!」
「ああーーっ!?っと、やべ……」
プウウ~……
タイミング悪くジャミル一発噛ます。早速サンディに
目をつけられる事、……1回目。
「やれやれ、何だかおかしな事になってきましたな、
あなたも大変ですね……」
「たく、冗談じゃねえよ!早いとこアンタを成仏させて
やんねーと……、よう、おっさん、アンタをこの世に
縛り付けてる未練て一体なんだい?」
「私の未練ですか、そうですね……、宿屋の裏の高台に埋めた……、
アレかも知れません……」
「よしっ、宿屋の裏だなっ!」
「あ、行っちゃった、アイツ、チョーせっかち!」
ジャミルは宿屋に向かって走り出す。元々ルイーダの所へ
行くつもりではいたのだが。リベルトに言われた通り高台へ。
茂みの中の土を掘ると、トロフィーらしき物が出て来た。
土と泥を払うとトロフィーは黄金に輝き、何か文字が
刻んであるのも見えた。
「……えーと、汝を宿王と認め、このトロフィーを贈呈す……、
セントシュタイン王……、これ、国王から送られたのか、
すげえなあ……」
「おお、まさしくそれは宿王のトロフィー……、懐かしいですなあ、
この村に戻ってきた際に此処に埋めておいたのですよ……」
気が付くと、いつの間にかリベルトが来ていた。……サンディも。
「どうして埋めちまったんだい?こんな大事なもんを……」
「娘の……、全てリッカの為です、そしてセントシュタインへの
未練を断ち切る為……」
「リッカの……?」
「……」
リベルトは静かに頷く。そしてそれ以上は何も言わず。
「おっさん、リッカはルイーダからセントシュタインへ
来ないかって誘いを受けてる、でも、心は迷ってんだよ……、
あんたが宿王だって信じられないでいるのさ……」
「そうですか、……あの子が……」
「俺、このトロフィーをリッカに見せてくるよ、そうすれば、
きっと……」
「ジャミルさん……」
ジャミルはトロフィーを抱え、再びリッカの実家へと走り出す。
「おーい、リッカあー!」
「ジャミル……、あまり遅くならないでって言ったのに……、
もう……、ご飯も食べないで……、駄目だよ……」
「モン、夜遊び駄目モンモン!」
リッカは漸く帰ってきたジャミルを見て、ほっとした様な、
呆れた様な声を出した。……丁度モンの耳掃除をしていたらしい。
「わりわり、それより見ろこれ!お前の親父さんのだぞ!」
「えっ……?、これって……、父さんの……、まさか……」
ジャミルはリッカに黄金に輝くトロフィー、宿王の
トロフィーを手渡す。リッカはトロフィーに刻まれた
文字を見て、暫く放心状態であった……。
「まさか……、国王様に認められたって……、父さんは
本当に宿王だったんだ……、ルイーダさんの言っていた事は
嘘じゃなかったんだね……」
漸く父親の真実も分り、ジャミルはこれでリッカの迷いも消え、
セントシュタインへと赴く決意が出来るのではと思った。だが……。
「でも、ジャミル……、だったらどうして父さんは宿王の地位を
捨ててまでこのウォルロ村に戻って来たの……?私には父さんが
何を考えてるのかさっぱり分からないよ……」
「リッカ……」
リッカはまた俯いてしまう。一体どうしたら彼女を本当に
心から安心させ、納得させる事が出来るのか……、また壁が
立ちはだかり、ジャミルも言葉に困ってしまう。
「それについては儂から話そう……、もうお前にも話しても
いい頃じゃ……」
「おじいちゃん……」
普段はこの時間は寝ている筈のリッカの祖父が静かに居間に
姿を見せた……。
「これはリベルトにずっと口止めされて黙っていた事じゃが……、
リッカや、お前は小さい時、身体が病気がちだった事を覚えて
おるかの?」
「うん、何となく、うっすらと……」
「その体質は若くして亡くなったお前の母親譲りのものじゃ……、
本来なら成長するに従っていき、やがては死に至る……」
「でも、私……、元気になったよ、病気だなんて事それこそ
忘れるぐらいに……」
「それはこの村の滝の水、ウォルロの名水を飲んで育ったお蔭じゃろう、
ウォルロの名水は病気を遠ざけ、身体を丈夫にしてくれると言われておる」
「……」
じゃあ、天使界から墜落して、頭から滝に突っ込んだ俺は……、
こりゃますますパワフル馬鹿になって当分死にそうにないなあと、
ジャミルは何だか複雑な気分になってみた。
「!もしかして、……父さんがセントシュタインの宿屋を捨てて、
此処に移住したのって……」
「うむ、お前の為じゃったんじゃよ、リッカ……、あやつは
自分の夢よりも、大切な娘を助ける道を選んだのじゃよ……」
「そんな……、じゃあ私が父さんの夢を奪ったんだ、
……私の所為で……」
「バカだなあ、お前……」
「ジャミル……、な、何……?」
「親父さんが言ってたんだろ?例えどんな小さい宿屋だって、
お前と一緒に経営していけるのが嬉しいんだって……、宿王に
なろうが、地位とかそんな事、関係なかったのさ、あんたの
好きだった親父さんの通りだよ……」
「……ジャミル、私……」
リッカは両手をぎゅっと握り拳にするとそのまま言葉を噤んだ。
「うむ……、お前にそう思わせたくなくて、あいつはずっと
口止めしていたのじゃろうな、……リッカよ、今はまだ
混乱しておるだろうが、お前ならこの事実を受け止めてくれる
ものと信じておる……」
「父さんが時々見せていた、何処か遠くを見つめる様な
静かな目……、ずっと気になってた、そっか、父さんは
私の為に……、……ね、ジャミル……」
「な、何だい……?」
俯いていたリッカは顔を上げジャミルの方を見る。……遂に
決心を固めた様である。
「私に何処まで出来るか分からないけれど、私……、
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編3 新たな出会いと旅立ち 作家名:流れ者