zoku勇者 ドラクエⅨ編3 新たな出会いと旅立ち
ルイーダさんの所へ行ってみるね、そして今度こそ、
私が父さんの夢を叶えるの!」
「……あ、リッカっ!」
リッカは実家を出て駆け足で走って行った。自分の宿屋へ、
ルイーダの所へ。迷っていた、決め兼ねていた答えを漸く
出す為に。
「やれやれ、慌しい事じゃな、じゃが、あの子ももう
行ってしまうとなると淋しくなるわい……、どれ、儂も
そろそろ休むとするか、今日は久々に夜更かしをして
しもうた、ジャミルさん、あんたもはよう休みんさいよ……」
リッカの祖父は部屋に戻って行く。ジャミルは自分もリッカの
様子を見に、宿屋へもう一度足を運んで見ようと思い、外に出ると。
「あれ?おっさん、来てたんだ!」
「……おい」
発光体のサンディ、妖精体になり急に姿を現す。そして、家の前には
リベルトの姿。
「ええ、話は全部聞いておりました、まさかあの子が
私の夢を継いでくれるなんて……、いつの間にか随分
大きくなったものですね……」
「ああ、もうおっさんが心配するこたあねえよ、ちゃんと
やれるさ、あいつなら……」
「そうですね、……どうやらお別れの様です、では、これで
もう何も心残りなく、私も旅立つ事が出来ます……、ジャミルさん、
娘の事をどうかこれからも宜しくお願いします……」
「うん、じゃあな、元気でな……、って言い方も変か、んじゃ、
さよなら、おっさん!」
「……さようなら……、守護天使様……」
リベルトはジャミルに頭を下げると光りを放ちながら静かに消える。
こうしてリベルトの魂はこの世の未練から放たれ無事昇天する。
ジャミルはリベルトが消えて行った夜空をそっと見上げるのだった。
「行っちゃったね……、ふう~ん、アンタ中々やるじゃん!
只のアホかと思ってたけド!」
「だから……癪に障るなあ~、オメーの言い方もよう……」
「こりゃアンタのこと、天使だって認めないワケには
いかないっしょ、仕方ない、約束通り天の箱舟で天界まで
送って行ってあげるわよ、このカワイイサンディさんに
感謝しなさいよ!アンタ!」
「別に感謝なんかされたくねーってのっ!……おーいっ!」
サンディはくるっと回転し、再び発光体になると姿を消した。が、
すぐにまた飛び出て来た……。
「ねえ、アンタ、どうして天使なら星のオーラ回収しないの?
……其処に転がってるじゃん……」
「だって何もねえよ?……でけえ犬の糞ならあるけどよ……」
「……うわ、マジで?星のオーラ見えなくなっちゃったんだ……、
な~んか、こんな奴マジで信用しちゃって良かったのかな?
……前言撤回なんですケド……」
「……あーのーなああっ!てめっ、このやろっ!」
切れたジャミルがサンディに拳を振り上げるとサンディは
再び姿を消した……。
それから数日。峠の土砂崩れは無事全て取り除かれ、
セントシュタインへの通路は再び開通する。そして
今日はリッカの旅立ちの日である……。同じ日に、
ジャミルもウォルロ村を旅立とうと決めていたのだった。
「お爺ちゃん、離れ離れになっちゃうけど、元気でね……」
「うむ、お前も慣れない都会暮らしで大変な事もあるじゃろうが、
身体は大切にの……、ルイーダさん、どうか孫の事を宜しく
お願いします……」
「ええ、お孫さんの事、御心配でしょうけど、私もきちんと
サポートさせて頂きますので、どうかご安心下さいな……」
「……」
「おい、タワシ頭……」
「!?あんだよジャミ公っ!それにオレはタワシじゃ
ねえってんだよっ!」
ジャミルはリッカに何か言いたそうで押し黙っているニードの
態度に見てて苛苛していた。……ので、何とか突っ突いて
やりたかったのだが。だが、心配しなくてもちゃんと切っ掛けは
彼女の方からちゃんとやってくる。
「ね、ニード、ちょっといい?」
「……な、何だよ、これから村を出てく奴がオレに何の用だ?」
「うん、……村の宿屋、ニードが引き継いでくれるんでしょう?
勝手な話だけど、私、あの宿屋閉めたくなかったの、……だから
感謝してる、ありがとう……」
「え、えーと、そのだな……」
リッカにお礼を言われ、柄にもなくニードが照れている。
後ろを振り返るとジャミルが口に手を当て、シッシシッシ
状態でニヤニヤ笑っていた。……モンもジャミルの真似をし……。
「てめーら、後で覚えてろ……、っと、まあ、働かねえと
親父がうるさいしよ、別にお前の為じゃな……、うわっ!?」
ニードの頭を抑え付け、私が村長です、さん登場。リッカに
感謝とお礼の言葉を述べた。
「リッカ、君には本当に感謝しても感謝し切れない、
こんなボンクラに仕事の場を与えてくれて……、
セントシュタインに行ってもどうか元気でな……」
「はい、村長さんも……、今まで有難うございました、
お元気で……」
「はあ~、しかし、ニードさんが村の宿屋を引き継ぐとは……、
オレ、宿屋が壊れないか心配になってきたッスよ……」
「おめーもうるせんだっての!ふん、見てろよっ、オレがやるからには
セントシュタインよりもごっつすげービッグな宿屋にしてやるからよ!」
「うん、期待してるよ!でも私だって負けないんだからね!」
「おー、いつでも受けて立つぜいっ!」
子分の頭を小突きながら、ニードもリッカにライバルとして
宣戦布告。これからの関係、2人ともお互い良いライバル
同士で共に競り合い、商売を盛り上げていく事だろう。
「そう言えば、ジャミルも今日、故郷に帰るのだったな、
君も身体に気を付けてな、良い仕事が見つかる事を
願っているよ……」
「へへ、まあ、村の皆には色々と世話になったよ、有難う……」
まさか天使界へ帰るんだよとは言えず、戸惑いながらも
村長の差し出した手を握り返すジャミルである。
「モンちゃんも元気でね、食べ過ぎちゃ駄目だよ……」
「モンモン!」
「それからね、ジャミル……、あなたには凄く感謝してる、
だって父さんが隠していたトロフィーを何処かから見つけて
来ちゃうんだもの、本当に凄いね……、まさか本当に
守護天使様だったりしてね、……ふふ!ねえ、もしも
セントシュタインに寄る事があったら絶対に宿屋に
泊りに来てね!」
「あ、あのな……、それは……、あ……」
「じゃあ、私、そろそろ本当に行くね!みんな行って来まーす!
今までありがとうー!」
リッカは父の形見のトロフィーを手に村の皆に見送られながら
ウォルロを旅立っていった。ジャミルはいつか彼女になら……と、
去っていくリッカの後ろ姿をじっと見つめていた。
「……行っちまったなあ……」
「モン……」
ジャミル達も皆と別れを告げウォルロ村を離れる。やがて村も遠ざかり、
大分見えなくなって来た処でサンディが妖精型に姿を変えて出て来た。
「ねえ、ずっと聞きたかったんだけどさ……」
「何だよ……」
サンディはジャミル……、ではなく、連れているモンの方を
じっと見ている。
「アンタ何っ、その座布団っ!まさかこれからもそれ連れて歩くワケ!?
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編3 新たな出会いと旅立ち 作家名:流れ者