zoku勇者 ドラクエⅨ編3 新たな出会いと旅立ち
誰も納得してくれないんじゃないかと……」
「そうね、最初は誰でも不安になるものよ、でも、私は
人の才能を見抜く眼力を信じてる、心配いらないわ……」
「は、はい……」
「さて、それじゃ、はいはい、皆さんご注目ー!私達の
希望の星を連れて来たわよー!」
ルイーダはパンパン手を叩き先に宿屋に集まっている
仲間達にリッカを紹介する。従業員の仲間達は一斉に
リッカの方に視線を向ける。
(……ふ~ん、何か面白そうだね、ねーねー、少しみていこーよ、
アンタと知り合いなんだしさ)
「ああ、分かってるけどさ……」
「紹介するわ、彼女がウォルロから来たリッカさんよ!」
「あの、初めまして、リッカと申します、今日から
此処で皆さんと……」
「ちょっとルイーダ!アンタ何考えてんのよ!この宿屋
潰す気なの!?こんな小さな子が経営なんて無理に
決まってるじゃない!只でさえもう潰れそうなのよ!
下らないバクチはいい加減にして!」
突然、茶髪で後ろ髪に青いリボンを着けた女性がしゃしゃり
出て来た。……彼女はリッカを上辺だけで判断しており、
あまり快く思っていないらしかった。
「まあ、落ち着きなさいよ、レナ、私が危険を侵してまで
わざわざウォルロに赴いて普通の女の子をわざわざスカウト
して連れてくると思う?こう見えてもリッカさんは凄い才能の
持ち主なのよ、きっとこの宿屋の救世主となるわ!」
「あんた前もそんな事言って……、私に金庫番の才能が
有るとか言ったわね!自信満々に救世主が来るからって
言ってたから期待してたのに、それがこんな小娘じゃ……、
期待外れもいい処だわよ!」
レナと言う女性、どうやらこの宿屋で金庫番をしている
らしいが。先輩枠なのは分るが、新参者のリッカが
気に入らないらしく悪態をつく。黙って後ろで見ていた
ジャミルはチッと舌打ちをした。
(うわ、何か最悪じゃネ?ちょー性格悪いんですケド!?)
「……シャアーーっ!!」
「オメーが言うなっ、……コラ、モンも威嚇しちゃ駄目だっての!」
自分を棚に上げる毒舌サンディ、モンまで怒って口を開けようと
するが、ジャミルが慌てて制す。しかし、リッカの友人として
こりゃ一言俺も何か言ってやんねーと気が収まんねえなあと、
ジャミルが考えていた矢先……。リッカは毅然とした態度で
レナの前に出る。
「待って下さい!私、一生懸命頑張ります!宿屋の事は亡くなった
父から教わっています!」
「……ふ~ん、あなたのお父さんも宿屋人だったの?
父親の夢を娘が引き継ごうってわけね、その心意気だけは
立派だけど、……宿屋を経営するって事がどれくらい大変な
事か分かってるの?下手をすればあなたのお父さんの名誉だって
潰す事になりかねないわ、まあ、あなたのお父さんがどれくらいの
立場の人だったか知らないけどね……」
「……」
「よくぞ聞いてくれたわね、さ、リッカ、今こそあれを出す時よ!」
「……?あっ、はいっ!!あれですねっ!!」
レナに押され、少し俯きがちだったリッカ。ルイーダに言われ、
ある事を思い出し心に勇気を振り絞った。
(お父さん……、力を貸して、どうか!)
リッカは宿王のトロフィーを取り出した!!
「!!ま、まさか……、その黄金に輝くトロフィーはっ!?」
「ええ、そうよ、これこそが正にセントシュタイン王から送られた
記念の宿王の証、……これこそが宿王の実力と彼女がその血を
引き継ぐまごうことなき証よっ!!」
「で、伝説の……、や、宿王の娘っ!!……ははあーーっ!!」
レナも、その場にいた従業員も……、宿王のトロフィーを
目の前にした途端、態度を一変させ、全員が膝まづき、
リッカの前にひれ伏すのであった……。
「あ、あの……、皆さん……、そんな、やめてください、
恥ずかしいです……」
「モモモモオーンっ!!」
「……おい、オメーまで真似してやらなくていいっての、
そんな短足で正座なんか出来ねえんだからよ……、
ひっくり返っちまうよ」
「モン、足長いんだモン!……モシャアアーっ!」
「はあ、それにしても、宿王の効力ってマジですげえんだなあ……」
「……あっ、ジャミルっ!それにモンちゃんも!!
もう来てくれたんだ!!」
「よう……、久しぶり……」
リッカは後ろの方で事態を見守っていたジャミルの姿に
漸く気づき、急いで駆け寄ると再会を喜びあったのであった。
「でも、早速来てくれたのに……、私達も今此処に
着いたばかりで……、何のお持て成しの準備もして
ないの……、ごめんなさい……」
「ん?いいのさ、今日は別に泊まりに来た訳じゃねえんだ、
ちょっくら様子を見に来てみたんだよ」
「そうね、心配だけれど、宿屋の事は自分には何も
出来なくて歯がゆい、……そんな心境じゃないかしら?」
「まあな……」
ルイーダに言われ、ジャミルは顔を赤くしてぽりぽり
頭を掻いた。
「でも、そんなあなたでも、自分にもリッカの為に出来る事が
あると言ったら……、どうする?」
「?」
「ルイーダさん、一体何の話ですか……?」
「私が見た処、ジャミルはすれ違う多くの人を引き寄せる
力があるわ、あなたが呼び込みに立ってくれたら、きっと
この宿屋も商売繁盛間違いなしだと思うの」
「俺がかい……?」
「ちょ、そんな、ルイーダさん……、宿屋と何の関係もない
ジャミルにそんな事頼めないよ……」
「この人の為に何かしてあげたい、そう思わせるのも
才能の一つよ、もしもジャミルが暇な時にだけ、
自分がやりたいと思った時にだけ動いて貰えれば……、
それでいいんじゃないかしら?」
「うん、ま、俺でよけりゃ……、力になるよ、改めてさ……」
「ありがとう、ジャミル……、私もジャミルには人を引き付ける
何かがあると思ってたんだ……、じゃあ……、お願いしちゃって
いいかな……?これからも宜しくね、ジャミル!」
ジャミルとリッカはお互いに笑いあうと、握手を交わす。
宿屋の従業員達も漸くリッカの才能を認めてくれ、彼女の
明日はこれから始まるのである。
さて、万を満たしてリッカの宿屋も準備が終わり、無事開店。と、
同時に宿屋には冒険者を登録し、仲間として連れて行ける、
ルイーダの酒場も同時開店。
「いらっしゃいませ、ジャミル!セントシュタインにお寄りの際には
リッカの宿屋に是非泊って行ってね!どうか今後ともご贔屓に!」
「へえ、流石……、もう仕事っぷりが板についてんなあ、
リッカの奴!」
「かまぼこ、かまぼこモン!」
「いや、そうじゃなくてよ……、ま、まあいいや……」
「モン?」
「ふふ、ねえ、あなたもこれから冒険に出たりするのかしら?
そんな時は是非、この酒場も利用して頂戴、色んなお仲間を
お供に連れて行けるわよ、一人では大変でしょう?ね」
「ああ、助かるよ、で、今はどんな奴が来てくれてるんだい?」
「ええ、名簿をどうぞ、取りあえずこんな処ね……」
ジャミルはルイーダが貸してくれた名簿票に目を通してみる……が。
「えーと、戦士クソマキ、……僧侶マタンキ……、おい、
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編3 新たな出会いと旅立ち 作家名:流れ者