zoku勇者 ドラクエⅨ編4 姫君と黒騎士・1
「……2人とも、折角一旦話が収まったんだから……、ね?」
「はい、すんません……」
ジャミルとダウドはアルベルトがスリッパを取り出したのを見、
小さくなるのであった……。そして、4人とモンは湖の畔でリッカが
作ってくれたお弁当を頂きながら黒騎士を待つ……。これから緊迫した
状況になるかも知れないと言う時に、何とも呑気な光景だった。
「これ、おいしそ!チョーダイっ!」
「あ、ああー!てか、サンディ、君、物食べるんだあ……」
また姿を現したサンディ。……ダウドが食べていた唐揚げを横から掻っ攫う。
「別に食べなくたっていーんだけどさあ、何かアンタ達だけ
美味しそーなモン食べてんのみてんの気に喰わないのヨ!」
「モン、美味しそうなモン……、モンを食べる気モン!シャアーーっ!!」
「何ヨッ!あんたみたいな不味そうな、ザ・ブ豚!死んでも
食わねーわヨ!」
またサンディとモンのバトル始まりそうになる。その場はまた
やかましくなる。4人は頭を抱えた……。黒騎士はまだ姿を見せず……。
……4人+αは只管湖畔で黒騎士を待つ。が、黒騎士は現れず。
日は暮れ、もう夕方になってしまっている。何名か我慢の限界に
達している方もちらほらと……。
「それにしても中々来ねえなあ~……、何時間待たせんだよ、暇だなあ……」
「もう少し待ってみようよ、皆……」
「アル、そうは言うけどさあ、もう夕方じゃん、今日は絶対来ないよお~、
このままだと夜になっちゃうじゃないかあ~、ねえ、戻ろうよお!」
「分らないわよ、相手はいつ来るとか、そんなマナーなんかないのよ、
でも、モンちゃんもすっかり寝ちゃってるわ……、ぽ、ぽよぽよ……」
「ぷ~が、ぷ~が、モン……」
アイシャは腹を出して寝ているモンの丸いお腹に触れる。皆は
数時間前にお弁当を食べたばかりなのに、時間的にはもう夕食
時間になるのである。
「……今だけはアタシもヘタレの意見に便乗するヨ!てか、女子との
約束ブッチするとかマジ信じらんねーんですケド!もうアタシ達、
帰ってよくネ!?国王サマにはさ、黒騎士なんかいなかったって
伝えればさあ……」
「……コホン、サンディ……」
「サンディ……、駄目よ……」
アルベルトとアイシャ、揃ってサンディをジト目で見た。
「チョ!何でんな顔して2人でアタシの事みんのっ!冗談だってばあ~!
ハイハイ、んじゃもう少し待ちましょカネ~、うん、振り返ってみたら
奴がいた……、みたいな~?」
「……」
「おい、サンディーーっ!!」
「後ろーーっ!!」
「は……?」
「……」
サンディは騒ぎ出した4人の言葉におそるおそる後ろを振り返る……。
冗談では無く、後ろには、黒い馬に乗り、黒い鎧を身に着けた騎士が……。
顔をすっぽり覆う兜を着けている為、素顔は分らない。だが、予告通り
本当に等々黒騎士が現れたのである。
「ま、ま、ま、……マジっすかぁーーっ!!」
……サンディは急いで発光体に戻り姿を隠す。4人は遂に現れた
黒騎士に対し、武器を手に取ると急いで身構えた……。
「やっと来やがったな……」
「……あーっ!オイラ竹槍だからサマになりませえーーんっ!!」
「ダウド、そんな事言ってる場合じゃないよっ!」
「モンちゃん、しっかり私や皆の後ろに隠れててね!危なくなったら
すぐに逃げるのよ!」
「モン~……」
「誰だ貴様らは……、貴様らになど用はない、……姫を出せッ!我が麗しの
姫君をーーっ!!」
「うおっ!?」
「きゃあーーっ!!」
黒騎士は言うが早いか、馬に乗ったまま槍を振り回しながら4人に
向かって突進してくる。湖に派遣されたのは、目的の姫君ではない事に
相当怒り狂っている。
「や、槍ならオイラだって……」
「ギロ……」
「ひいいーーっ!?」
黒騎士の兜に隠された瞳が赤く怪しく光り、ダウドを睨んだ。
困ったダウドはしっこが漏れそうになり、慌ててジャミルの
後ろに逃走。お約束でさっさと隠れる……。
「アホっ!何余計な事言って挑発してんだっ!バカっ!!」
「だ、だってええ~、オイラ、意外と負けず嫌いなんですよお~……、
もしかしたら、この竹槍、意外と隠された性能があるかも……、なんて……」
だから、んな竹槍で張り合おうなんざ、向こうも余計ブチ切れるんが
当たり前である。
「分りましたよおお!もう何も言いませんよお!」
「……最初からそうしろってのっ!」
「私がやってみるわ!……本当は悪い人じゃないって、信じたいけれど……」
「小娘!何をごちゃごちゃとっ!」
アイシャはフィオーネ姫の流した涙を思い出しながら、戸惑いつつも
呪文を詠唱し、ヒャドの魔法を黒騎士の鎧目掛けぶつける。
黒騎士の黒い鎧が凍りつき、固まり掛ける。その隙を逃さず、
アルベルトが間に入り、鎧へと剣でダメージを与える。……黒騎士は
乗っていた馬から転落し、地面に倒れた……。
「ううう、く、くそ……、只の雑魚だと思っていたが、……これは
何たる屈辱……」
「アル、有難うーっ!」
「いや、……やっぱり戦いの要になる戦士って大変だなあ、
ふう……、これからも頑張らなくちゃ……」
アルベルトは汗を拭い、兵士の剣を鞘に納める。鎧ごと傷つけられ
負傷した黒騎士はよろよろと立ち上がろうとすると、4人に対して
憎々しげに言葉を洩らした。
「何故……、何故姫君は貴様らの様な者を私に遣わしたのだ……、
メリア姫……、そなたとあの時交わした約束は偽りだったと言うのか……」
「……メリア姫だと?」
「ねえ、ジャミル、こいつキモくね?メリアって誰よ?それに姫様は
メリアなんて名前じゃなかったよネ?確か……、フィオーネって……」
サンディは状況が安全になったと分った途端、再び姿を現す。
「……それは誠かっ!?」
「キャー!?なになにいい!?コイツもしかしてアタシが見えてんのぉーー!?
マジビックリしたんですケドおおおーーーっ!!」
黒騎士はサンディに詰め寄る。真実を探している黒騎士を見て、
アイシャは漸く理解する。やはりこの黒騎士は悪い人物ではない。
どうやらメリアと言う姫と、フィオーネ姫を間違えている様だが、
フィオーネ姫は確かに黒騎士を好いていたのだと。アイシャは
どうにかしてもう少し、この黒騎士と話し合ってみたいと思ったのだが……。
「なあ、教えてくれ……、あの時城にいた姫君はメリア姫では無く……、
別の姫君だったと言う訳か……?」
「そうだよ、あんたが婚約だかの約束したらしい姫はメリアじゃない、
フィオーネ姫だよ……」
「……何という事だ……、あの姫君はメリア姫ではなかったのか……、
言われてみれば彼女はルディアノ王家に代々伝わる首飾りをしていなかった……」
黒騎士は再び膝まづき、肩を落とす……。この黒騎士は
セントシュタインではなく、ルディアノなどという
聞きなれない国の名を呟いた。やはり何か勘違いをしている様である。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編4 姫君と黒騎士・1 作家名:流れ者