zoku勇者 ドラクエⅨ編4 姫君と黒騎士・1
「私は深い眠りについていた……、そしてあの大地震の後、何かから
解き放たれた様に見知らぬ地で目を覚ましたのだ、しかし、その時の私は
自分が一体何者なのか分らぬ程記憶を失っていた、そんな折、あの異国の
姫君を見掛け、自分とメリア姫の事を思い出したのだ……」
「!?は、はうあーっ!深い眠りについていたって、もしかしてこの人おーーっ!」
「ダウドっ、静かにっ!」
……何となくだが、黒騎士の正体を察し、パニックになり掛けたダウドを
アルベルトが制する。そう、彼はもう既にこの世の人物ではない事が窺えた。
「……私の名は、……黒騎士レオコーン……」
遂に自分の素性を少しだけ明かした黒騎士。だが、黒騎士は再び黒馬に跨ると
何かを思いついた様にその場から逃走しようとしたのである。
「ま、待てっ!黒騎士っ!……レオコーン!」
「キャラメルコーン!待つモン!」
「モン、無理矢理すぎるから……」
「モォ~ン……、とんがりコーン食べたいモン……」
「モンちゃんたら、お腹まだこんなにパンパンじゃないのよう~……、
めっ!お腹破裂しちゃうわよ!」
「プ~モン……」
またお腹が減って来たらしいモンを取り押さえ、アルベルトが苦笑しながら
アイシャに手渡す……。やっぱり段々飼い主に似てくるんだなあと……。
「……アル、何だ?何で俺の方見てんだよ……」
「何でもないよ……」
「……メリア姫は我が祖国、ルディアノ王国の姫君……、私とメリア姫は
永遠の愛を誓い合い、祖国での婚礼も控えていた仲であった……」
「ちょ、じゃあ、この黒騎士ってさ、元カノとフィオーネ姫を
間違えちゃったワケ?……どんだけ似てんのよ、メリア姫と
フィオーネ姫って……」
「モン、キャラメルコーンととんがりコーンの間ぐらいモン……」
「モンちゃん、……ポケットに小さいキャンディーの残りがあったわ、
はい、どうぞ……」
「♪モンー!」
アイシャは取りあえず飴玉をモンに舐めさせる。……モンは少し大人しくなった。
「……いずれにせよ、私は自らの過ちを正す為、もう一度あの城へ
行かねばなるまい……」
「わわ!それは止めた方がいいよお!只でさえエライ騒ぎになってるのに!」
「そうだよ、そんな事になったら又あの顔デカタヌキ国王が騒ぎ出すよ、
ね、ジャミル、こいつ止めた方がよくネ?ややこしくなるだけだって!」
「う~ん……?困ったなあ……」
ダウドとサンディの忠告にジャミルは首を傾げる。……どうやらこの黒騎士は、
悪意の為に城を訪れたのではないと言う事が段々分かって来たが……。
確かに今止めなければ、城に現れた黒騎士を見て国王は又狂った様に怒りだし、
娘を守る為に今度こそ黒騎士に手を下すだろう。
「……ややこしくなる?……それもそうであるか……、ではお前達から
城の者に伝えてくれ、もう二度とあの城には近づかない事を約束しよう、
……本当のメリア姫は私のこの手で探し出そう……、まずは祖国ルディアノを
探さねば、ルディアノでは本当のメリア姫が私の帰りを待っていてくれる筈だ……」
「黒騎士さん、……レオコーンさん!……待っ……」
しかし、レオコーンはアイシャの言葉を聞かず、再び馬を走らせ
今度こそ何処かへと逃走してしまう。アイシャは、最後に悲しそうな
声で呟いた黒騎士レオコーンが心配で堪らなくなっていた。
「レオコーンさん……」
「アイシャ、ほっときなよ!それよりアイツもう城には近づかネって
言ってくれたんだからこれでいいんだよ、さあ、問題は解決!さ~、
アタシ達も城に戻ろ戻ろ!」
「……そう言う問題じゃ……、ないのよ……」
困っている人を見ると頬って置けないアイシャ。黒騎士の件でどうしたら
いいか分からず心を痛めはじめてしまっていた。またお節介病が出たなあ~
……と、ジャミルも困ってしまう。恋愛などの面に関しては異様に……、
彼女は特にそうである。取りあえずは一旦セントシュタイン城に
戻るしかなかった。
「アイシャ、このまま此処にいても仕方ねえよ、とにかく一旦城に
戻って国王に報告しようや、それから幾らでもどうにも出来る、
……何ならあの国王に内緒で俺らだけで黒騎士の行方を探したって
いいんだしさ!」
「……ジャミル……、うんっ!そうだね!」
ジャミルはアイシャにウインクする。ジャミルの言葉を聞いて、
アイシャも漸く元気を取り戻した。
……そして、お騒がせ御一行様、再びセントシュタインへと
急いで一路戻る。が、城内では再び父娘の親子バトルが再開
したらしく、また異様な雰囲気に……。既に王妃は玉座に
突っ伏し泣き崩れていた。
「……お父様、お母様……、やはり私は黒騎士の元へ行きます……」
「うう、……フィオーネ……」
「バカ者!泣く奴があるか!……フィオーネは断じてあの様な
男になど渡さぬと言っておろう!」
「国王さん……、今戻ったんだけど……」
「おお!!ジャミル達か!して、黒騎士の方はどうした!?……成敗して
くれたのであろう!?」
「……それがさ……」
怒鳴り散らしていた国王は戻って来た4人の姿に気づくと
目を輝かせた。……黒騎士討伐の報告を待ち望んでいたらしいが……。
ジャミルは仕方なしに湖での詳細を全て国王に話す。勿論、
黒騎士は悪い騎士ではないと言う事も伝えたが。
「……何?奴は自分の記憶を無くし、自分の婚約者とフィオーネを
見間違えていた……、だけだった……じゃと?」
「国王様、どうか分かってあげて下さい、決して黒騎士さんは最初から
悪意があってこの城を訪れた訳では……」
「……うるさいうるさい!黙れ黙れえええっ!!」
だが、国王はまるでアイシャの言葉を聴かず、噴気すると鼻から
湯気を出し、再び怒り始める。やはり分っては貰えない様だった。
大体こうなると覚悟はしていたが、どうしたらいいのか4人は困って
顔を見合わせた。
「……プ~、どうして怒ってばっかりいるモン……」
「モンちゃん、……大丈夫よ……」
アイシャはそう言いながら力なくモンを側に抱き寄せた。
……ジャミルも。この栗饅頭、大切な娘を溺愛してるのは分るが、
だからって碌に話も聴かねえで頭ごなしに怒鳴りつけるこたあ
ねえだろうと段々イライラしてきた。出来るなら玉座の後ろに
回って頭を一発ブン殴り、……あてっ!?と言わせてやりたかった程。
「国王様、どうか落ち着いて下さい、僕らの話をもう少し……」
「落ち着けるかああっ!……奴はルディアノと言う国を探しに行く為、
もう二度とこの城には近づかんじゃと……?そんなもの口から出まかせに
決まっておろうが!お主達は奴の言葉をそっくりそのまま信じて戻って
きたと言うのか!ええいっ!一体お主達は何をしにいったんじゃあああっ!!」
今度はアルベルトが応対するが、国王は顔を大きくし、更にジャミル達に
向かって怒りを爆発させた。……しかし、それをずっと見ていたフィオーネ、
我慢出来ず凛として再び傲慢な父に立ち向かう。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編4 姫君と黒騎士・1 作家名:流れ者