zoku勇者 ドラクエⅨ編5 姫君と黒騎士・2
「声は村の方からだよっ、ジャミル!」
漸く、ルディアノの手掛かりも何とか掴めそうで安心していたジャミル。
突如聞こえて大きな悲鳴とアルベルトの声に我に返り顔を上げた。
「あれまあ、何かあったんですかねえ……」
「心配ねえ、ソナちゃん……」
「……お婆ちゃん達、危ないから絶対お家の中にいてね、
行きましょ、皆!」
「あうう~、オイラ達、……本当に退屈しなくていいよねえ~……」
4人は急いでソナの家から外へと飛び出す。……その様子をソナ達は
心配そうに見守るのだった……。
「あれま、あの子達は……、あんな小さそうに見えて、
戦う戦士様じゃったか……、どうかご無理をなさらんでのう……」
「……出たあーーっ!だ、誰か助けてくれーーっ!!」
4人はソナの家を飛び出し、悲鳴のした方へと急いで駆け付ける。
……其処で見た光景は……、村の入り口に出現した黒騎士……、
黒馬に跨ったレオコーンの姿であった。住民は皆大慌てで逃走し、
家の中に引き籠る騒ぎに……。悲鳴を上げていた男は現れた
レオコーンを目の前にし、腰が抜けて動けない様子だった。
「……木こりよ、何故逃げる……、私はそなたに話を聞きたかった
だけだ……、お前には何もせぬ、安心せよ」
「嘘をつけっ!……お前もあの魔物の手下なんだろうっ!」
「……魔物?この私が魔物の手下だと?何を馬鹿な事を……」
「おーい、おっさん、大丈夫か?……後は俺らに任せて早く逃げろ!」
「……お前達は……」
黒騎士は此方も現れたジャミル達の姿に目を見張る……。
「ああっ、だ、誰でもいい、助かった……、けど、腰が抜けて
動けないんだ……」
「ダウド……」
「わ、分ったよお、……ホイミ!」
「あ、ああ!ありがとな、これで動ける!」
アルベルトがダウドに目配せするとダウドがおっさんに
ホイミを掛けた。ヘタレなおっさんは夢中でその場から逃走。
ヘタレがヘタレにホイミを掛ける事になるとは何ともダウドも
複雑である。
「さて、これでちゃんとアンタと話が出来るな、……レオコーン……」
「そなたは確かジャミルと申したな、……何故この様な場所にいる……?」
「あんたの為だよ、ルディアノの手掛かりを探しにさ」
「……何と……」
ジャミルはレオコーンにフィオーネが彼をとても心配している事、
彼女からルディアノの手掛かりをこの村で掴めるかも知れないと
聞いた為、此処に訪れた事を伝えた。
「……そうか、ルディアノの事を……、わざわざこんな私の為にすまない……、
して、何か分ったのか……?」
「うん、実はさ……」
………
「黒薔薇の騎士……、確かにルディアノではそう呼ばれていたが……、
何?私の事がわらべ歌になっていたと……?馬鹿な、私がまるでおとぎ話の
住人の様ではないか、……北往く鳥、手掛かりはそれだけか、……ならば私も
北へ向かうとしよう……、北往く鳥とやらの手掛かりを追ってな!」
「レオコーンさんっ!待って!私達も一緒に!」
「……ハイヨーーッ!!」
アイシャが叫ぶが、レオコーンは馬を急かすと再び4人と村から
離れてしまう。4人は頷き合い、レオコーンを追って村を飛び出した。
そして、ソナから聞いたわらべ歌のとおり、一行も真っ直ぐ北へと
向かう。……北往く鳥よ、伝えておくれの歌詞のままに。
「……何かやばそうな感じするんですケド、可愛いサンディちゃんには
似合わない場所よネ、じゃあ、ジャミル、皆、アタシは暫く寝てるので
宜しくね!」
「いつもと同じだろうがよ……、ったく……」
「うわあ~……」
レオコーンが向かった場所、其処は廃墟と化し、枯れた森の荒れ果てた
大地。周囲には毒の沼地が広がる廃墟地帯。……やはり最初に嫌そうな声を
発したのは他でもないダウド。
「ほ、ホントにこんなとこ……、城があんの?もうどう見たって誰も……」
「それでも、僕らは行かなくちゃならないんだから……」
「あう~、アル、クソ真面目ぇぇぇ~……」
「人はいねえけど、……ほら、来たぜ?」
「……ぴゃうっ!?」
ジャミルが目配せする。現れたのは、羊のモンスター、マッドオックス。
マッドオックスは、前足で地面を蹴り、早速、威嚇の準備万端状態。
……ダウド以外の3人も戦闘態勢に入る。
「た、確か……、お宅、あはは、3でもお世話に……っ!……きゃーーっ!!」
「ダウドっ!下がってっ!……イオーーっ!!」
アイシャ、率先してマッドオックスの前に立ち、ダウドを庇いながら
イオを発動。しかし、マッドオックスはイオを食らいながらもテンションを
アゲアゲ、アイシャ目掛け突撃してくる。マッドオックスに突進された
アイシャは毒の沼地の方へ飛ばされ、頭から沼地に突っ込んだ。
「……なろっ!アイシャっ!平気かーーっ!?」
「な、何とか……、大丈夫……、沼は浅いから、でも、毒のダメージを
負っちゃったみたい……」
「ダウド、アイシャにキアリーを!此処は僕とジャミルでやる!」
「わ、分ったよお!」
ダウドは急いでアイシャの援護の方へ走る。残ったジャミルとアルベルトは
再び突っ込んできそうな勢いのマッドオックスを止めようと剣を振い奮戦する。
「ジャミル!……また別のモンスターだっ!」
「ちっ!?……あ、あいたあーーっ!?」
今度は右から毒矢頭巾が現れジャミルの頭部に向けて毒矢を放つ。
……矢はジャミルの頭に刺さり、ジャミルは矢ジャミ状態になった。
ジャミルは頭に弓矢が刺さった状態のまま、激怒しながら毒矢頭巾を
成敗し、エライ勢いで刺さった矢を頭からぶち抜くと、傷口にホイミを
掛けた。
「……なめるんじゃねえってのっ!」
……しかし、この人本当にどういう神経してるんだろうと、
アルベルトは首を傾げつつ、残ったマッドオックスを片付ける。
やがてアイシャとダウドも此方に戻って来た。
「何とかこっちも終わったよ、さあ、別のモンスターが又出てこない内に、
この森を抜けてしまおう!」
「アル、その前に……、ダウド、俺もキアリー掛けてくれや、さっき頭に
毒矢撃たれてよ、ぶつぶつ……」
「えええっ!?……そ、それでよく平気だねえ……」
「平気じゃねえよっ!早くしてくれや!」
ダウドはジャミルにもキアリーを掛けるが。ダウドが心配しているのは
毒矢を撃たれようが案外平然としている友人の事である。……昔から
ジャミルがおかしいのは元の世界にいる時から知っているが、近年、
ますます変になってきている彼の姿に何となく、不安を覚えたり……、
しなかったり……。
(やっぱり、この人当分死なないね、心配ないよね……)
北へ消えた黒騎士レオコーンを追い、滅びの森を進む4人。わらべ歌の
とおり、北に佇む古びた古城を遂に発見する。城内へ進むと、やはり
城の中も荒れ放題、彼方此方に毒の沼地が錯乱し、もはやもう生存
している人間の姿など誰も確認する事は出来ないだろう。……此処が
本当にレオコーンの求めているルディアノなのだとしたら。……この
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編5 姫君と黒騎士・2 作家名:流れ者