zoku勇者 ドラクエⅨ編5 姫君と黒騎士・2
時代にはその国は既に滅んでいる事が確信出来た。そして、レオコーンは、
やはりもう現代には存在している人間では無い事が……。
「また沼地だらけだな、……こんな時さあ……」
ジャミルがダウドの方を見る。ダウドはジャミルが大体何を
言いたいか分かっている様ですぐにぶすぶす口を尖らせた。
「悪いけど、まだオイラ、トラマナ覚えるLVじゃないですから!」
「……開き直るなっ!……だったら早く覚えられるLVまで真面目に
経験値稼げよ!ヘタレてばっかいないでよう!」
「何だよお!」
「こらっ!……又こんな時にっ!いい加減にしないと、叩くよ、
2人共!?」
アルベルトがいつもどおりスリッパを出したのでジャミダウは
仕方なしに黙った。最近はスリッパ乱舞も威力がパワーアップ
して来ている為、恐ろしいのである。
「……ふん、腹黒め、昨夜の寝言録音しておいてやれば
良かったな……、姉さん、頼むから首絞めないで!ギブギブ!
……プ」
「何かな、ジャミル、……もっと大きな声で言った方がいいよ?」
「……悲しい感じだけど、でも、古いお城って何だかロマンチックなの……」
「!!」
男性陣が揉めている間に、このお方が一人でフラフラと
また徘徊しそうになる。……ジャミ公は慌てて後を追い、
彼女をとっ捕まえるのだった。アイシャを捕獲し、アルベルトと
ダウド共に、いよいよルディアノ城、城内へと潜入する。
……だが、内部は瓦礫だらけで通路は崩壊し、とても普通には
進めそうになかった。唯一通れそうだった薄暗い地下通路を見つけ、
中に入り只管進んで行く。
「ふう、漸く城内だけど……、本当にだれもいないねえ~……、
オイラ何か……、さ、寒気が……」
「ああ、いるのはモンスターばっかだな……」
「……いやあ~んっ!!」
ダウド、再びすっ飛びあがる。出迎えてくれたのはやはり
人では無い、モンスター集団。廃墟らしく、ガイコツを先頭に、
タホドラキー、ベビーマジシャン、メーダと、粒揃い。
「お前ら、この後の事も考えて道中はなるべく打撃中心、
MP節約でいこうや、回復はなるべく薬草で済ませようぜ!」
「了解!」
「頑張るわ!」
「……ひえええ~……、毎度の事だけど……、勘弁してよおお~……」
4人は倒しても倒しても妨害してくるモンスター集団と戦いながら
更に城を探索。少しづつLVも上げて行く。此処で出現するモンスターで、
特に厄介なのは、MP一回分だが、ヒャドを使って来るベビーマジシャン、
メーダだった。特にメーダの怪光線麻痺攻撃はアイシャとダウドは
狙われやすく、何回も危機に陥った程。そして、シールドで防御
しまくるシールド小僧。正面だと盾防御が厄介な為、ジャミ公は
背後に回り、シールド小僧を思い切り後ろからブン殴るのだった。
そんなこんなで、数時間、地下を進みながら……。
「此処、色んな本があるね、ちょっと見てっていいかな?」
「うわあ……、始まったし……」
地下に彼方此方有る書庫の本棚。それらを見る度本好きの
アルベルトは目を輝かせていた。ジャミルは沈痛な表情で
アルベルトを見る……。
「ね、いいだろ?此処の処、少しだけ……、何だか気になるんだ……」
「……わーったよっ!たくっ!しょうがねえな!」
「ありがとうー!」
本嫌いのジャミルは慌てて書庫から離れる。頼むから余計なモン
設置しておくなとジャミルは心底迷惑蒙るのだった。
「ね、ジャミル、この本見て!」
「うわ!?持ってくんなっつーのっ!……ん?」
アイシャがジャミルに差し出した一冊の本。ジャミルは最初
警戒していたが……。何となく、本から何か感じたのか、急に
アイシャから本を素直に受け取り、中に目を通す。
「……えーと、ルディアノ式、結婚の手引き、……ルディアノで
結ばれた二人が踊るダンスこそ、式のメインイベント、恥をかかぬ様、
気を付けましょう……」
「何だか素敵でしょ?ね?とってもロマンチックなの!」
「そうかなあ~、俺には何がロマンチックなんだか
良く分かんねえけど……」
「……はあ~、呆れた、野蛮なジャミルにはときめきも何も
ないんだからっ!」
「うるせー!いい加減じっとしてろ!ジャジャ馬っ!」
「……何よっ!ジャワバーモントカレー原始人っ!」
アイシャは呆れながら本を本棚に戻す。しかし、野蛮で原始人な
ジャミルにも手引きの中の、ルディアノで結ばれた二人と言う
個所が、微かにレオコーンとメリア姫を連想させていた。こんな事は
こっ恥ずかしくてアイシャにはとても言えなかったが。そして、
やっと地下通路を抜け2階へ。道中の寝室らしき部屋でも手紙と
手記を見つける。レオコーンがメリア姫に当てたらしき手紙と、
姫自身の手記。……それらはまるで2人の行く末を暗示して
いるかの様だった……。
姫のお気持ち、大変嬉しく思います。しかし私は魔女討伐の任務を
果たさねばならぬ身ゆえ……、どうかそれまでお待ち下さい。
……私の心はいつも姫と共に。 騎士レオコーン
レオコーン、私は行きます、遠い異国の地へ……。……あなたの事を
忘れたのではありません。ルディアノの血が絶えぬ限り、……私は……
いつかあなたと……。
そして、モンスターとバトルを繰り返しながら、城内探索する事、
更に数時間後……。
「よし、みんな、大丈夫だな?……棺桶入ってる奴いねえよな?」
アルベルトとアイシャが大丈夫!……と、ジャミルに返事を返す。
しかし、このお方は。
「大丈夫じゃないよおおーー!もういっその事棺桶入りたいーーっ!」
「うるさいっ!全員状態良好、生存とみなす!怪しいのはこの扉の奥!
行くぞお前ら!」
「……ジャミルのアホうーーーっ!!」
外観から地下通路を遠回りし2階へ。漸く辿り着いた大きな扉の
有る部屋の前。この城の玉座の間である。ジャミル達はこの奥に
黒騎士がいてくれる事を祈りながら扉を開いた。
「……お帰りなさい、レオコーン……、随分探したけれど、やはり
此処に来たのね……」
「貴様は……イシュダル……」
レオコーンは確かにいた。玉座の間でまるでバンパイアの
容姿の様な怪しい女と対峙し睨み合っていた……。
「……レオコーンっ!」
「お前達!何故此処に!?」
其処に漸く到着したジャミル達が勢い良く扉を開け部屋に
傾れ込んで来る。レオコーンは又も自分を追い掛けて
来たらしいジャミル達の姿を見、又も驚いた。
「何故此処にも何もねえっての!たく、どうしてすぐ一人でどっか
行っちまうんだよ!落ち着かねえな!このジャジャ馬娘と同系かよ!
あんたを追い掛けてやっと此処まで来たんだよ、大変だったんだぞ!」
「……ぶー!ジャミルのバカ!」
「……お前達、其処まで私の為に……、だが此処は危険だ、すぐに……」
「帰れるかってんだよっ!だからわざわざ来たんじゃねえか!
頑固だな、あんたもよ!」
「ジャミル……」
「はあ、帰っていいならとっくに帰ってますよおー!」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編5 姫君と黒騎士・2 作家名:流れ者